如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

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SUUMOの特集記事「中古物件売却5ヶ条」が意外にマトモだった

SUUMO新築マンション2019年10月29日号

 

 エキナカで配布される無料の新築マンション情報誌「SUUMO」の最新号に、この手の資料しては意外にもマトモな記事が掲載されたので紹介したい。

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SUUMO最新号の表紙

 10月29日に発行されたSUUMOのタイトルは「首都圏エリア開発MAP」で、これはこれで参考になるのだが、面白いのは巻頭にある第二特集の「マイホーム価格査定術」というタイトルでページ数は4ページ。
 記事では、中古マンション価格の上昇を背景に、住み替え需要への対応策を「簡易査定」「訪問査定」の2段階で行う手続きと、その事例を紹介している。

 

 本誌の狙いはあくまで新築マンションの販売促進なのだが、物件価格の上昇と販売戸数の減少で新規にローンを組んで購入する層が減ったことが影響している模様で、手持ちの物件を売って、新築マンションに乗り換えさせるための記事であることは間違いない。

 

 ただ、これまでのSUUMOの記事を数年にわたって毎号チェックしてきた者から見ると、今回の記事は「不動産業者寄りではなく、エンド(購入する個人)向けの記事」という意味で今までにない視点で書かれていて、その内容も、具体的でわかりやすい。

 例として引き合いに出される2つの査定方式が、数字を使って査定の実態を明らかにしている点にも注目だが、何よりも4ページ目の「家の売却5つの真相」が役に立つ。

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家の売却「5つの真相」

 最初の「査定額が“最も高い”仲介会社を選ぶべき」の項では、「査定額の根拠が確かでなければ、いくら高くても選ぶべきではない」という実にまっとうな正論で始まり、「最初に相場より高い査定額を提示し、後から値下げを提案してくる会社もあるからだ」とその理由を明らかにしている。

 これは間違いなく某財閥系の大手不動産販売会社を示唆した内容であることは明らかだ。

 具体的な会社名を明らかにしていないとは言え、多少なりとも不動産事情に通じていれば、どこの不動産販売会社なのかは一目瞭然。よくぞクレームを覚悟のうえで記事化できたものだと評価したい

 

 この他にも、「売却期間は半年を目安」、「法人や買取条件がシビア」など、物件を売却する個人には有用なノウハウが書かれている。

 

 一点注文を付けるとすれば、5番目の「売却前のクリーニングやリフォームは必須?」について。


 記事では、かかったコストを売却価格に反映できるとは限らない、としている。確かにリフォームについては壁紙やフロア面の素材や色合いなどは個人の好みもあるので、正しいとは思う。ただ、ハウスクリーニングは価格向上に有効だと思う
 部屋の「掃除」レベルなら個人ができないでもないが、水回りなどの「清掃」はプロにはかなわない。浴槽やキッチンなどの清掃ならダスキンのハウスクリーニングで2万円弱から依頼できるし、その結果売却額が10万円以上上がれば対費用効果は大きい。

 

 一方、今回の最新号では別の面でも注目すべき点があった。64ページ目から「今週のクローズアップ」として、3物件が各物件ごとに複数ページに渡って紹介されているのだが、このうち最初の2物件が、かなり以前から本誌に掲載されている物件なのである。

 

 具体的には、一件目の「ザ・パークハウス国分寺四季の森」と、二件目の「ザ・パークハウス花小金井ガーデン」なのだが、前者は2018年8月の竣工、後者に至っては2016年7月と2017年1月の竣工で、完成時期が近いものでも1年2カ月、遅い物件では3年以上前に完成した物件なのだ。

 

 国土交通省の住宅瑕疵担保制度ポータルサイトの「住宅瑕疵担保履行法について」にある、2.の新築住宅の「2.-1『住宅』『新築住宅』とは?」には、「新築住宅」とは、新たに建設された「住宅」であって、建設工事の完了から1年以内で、かつ、人が住んだことのないものを言います、と明記されている。

 この定義に基づけば上記2物件は「新築」ではない。「未入居物件」という言葉もあるが、これも正しくは「建築後1年以上2年未満の建物」となっており、この期間を超えると「中古物件」となる。

 

 まあこの話を突き詰めると、本誌「SUUMO」の表紙にある「新築マンション」という言葉自体使い方を間違えていることなるのだが。

 もっとも、新築物件の供給件数が今年に入って激減し、築一年以上の在庫物件が掲載されるのは、発行継続のためには仕方がないという事情があるのは理解できないでもない。

 不動産会社からの広告収入で成り立っているSUUMOではあるが、本号に限れば、中古物件の売却方法を「業者寄りでない中立的な立場」で解説した意味は大きいと思う。