「満員電車は仕方ない」と受け容れる人の異常さ(プレジデント・オンライン)
中川 淳一郎 ネットニュース編集者/PRプランナー
大都市圏に勤務する会社員であれば、大多数の人が日々悩まされている「満員電車」。
この“痛勤”の異常さに気付くべきだ、という趣旨の記事「『満員電車は仕方ない』と受け容れる人の異常さ」が10月29日付けのプレジデントオンライン(POL)に掲載された。
執筆したのは、ネットニュース編集者の中川淳一郎氏。週刊誌などでもコラムを連載しているので知っている人も多いと思うが、最新のネット動向に精通していて、常に新たな話題を提供してくれるので、個人的には大変頼りにしている人物である。
今回のテーマ「満員電車」は、ネットには関係はないが、会社員には切実な問題であることは間違いない。
中川氏の記事は、最後に【まとめ】として「言いたいこと」が箇条書きになっているのも特徴のひとつだ。
今回の記事の趣旨は2点。「満員電車は異常な空間であり、その解消策を真剣に考えるべき」と「何事も『そういうもの』として受け入れるクセを止めるべき」だ。
中川氏は満員電車を「さまざまな価値観を持ち、体格・体質・体調もバラバラである赤の他人が密閉空間にすし詰めとなり、拷問のような時間を過ごす」とし、さらに「インフルエンザや風邪といった伝染性の病気にかかるリスクは格段にあがるし、心身ともに疲弊する空間だけに、ちょっとしたことで口論や暴力が発生しがちだ」と、その悲惨な状況を解説する。
さて、ここで現在の私自身の通勤状態を説明すると、一言で言えば「満員電車とは無縁」だと断言できる。
私は、勤務先の近くに住んでいる訳ではない。むしろ電車には1時間近く乗っているので、都心や23区内に住まいを構える人たちよりも通勤時間は長いと思う。
ではなぜ満員電車と無縁でいられるかだが、その答えは「早朝出社、定時前退社」である。
具体的に私の通勤パターンを説明すると、朝6時過ぎに自宅を出て、6時20分頃の電車に乗り、7時20分頃に下車、7時30分には会社の自席に座っている。
通勤の混雑で有名な路線なので6時台でも座れることはないが、すし詰めの満員ではない。少なくともタブレット端末を開いて、ニュースや雑誌の電子版を読む余裕は十分にある。
退社時刻は原則として16時。前倒しで勤務している分早めに帰宅している。この時間帯だと通勤帰りの会社員はまずいないし、座れることも珍しくない。
つまり普通の人よりも大幅に勤務時間帯を「前倒し」しているのである。
中川氏は週2回の東京メトロ千代田線の新御茶ノ水が最寄り駅の会社への通勤を、佐合開始時刻を11時もしくは11時30分として一般的なサラリーマンに比べて2時間から2時間半「遅らせる」ことで対応しているが、私の場合は逆で出社時刻を1時間半「早める」ことで満員電車を回避している。
もちろんこの勤務体制になったのは、ここ数年前からで、それまでは記事のような「地獄の満員電車」を無意識に何の疑問も持たず受け入れていた。
現在の勤務体系に変更できたのは、①役職定年となって仕事の内容が変わったことである程度自己裁量が可能になった、②30年以上続けてきた通勤に身体が悲鳴を上げた、③会社側が社員の勤務時間帯に柔軟性を配慮するようになった、という事情が大きい。
会社内でのポジションと健康状態を考慮したうえで、上司と人事部に相談、勤務形態の個別案件として認めてもらった。
という訳で、誰でもすぐに実現可能な満員電車の回避策ではないが、役職定年や定年後再雇用など会社での立場が大きく変わった際には、上司などに相談してみる価値はあると思う。もちろん若手でも仕事上の実績やメリットがあれば、相談には乗ってくれる可能性はあるはずだ。
早朝出勤のメリットだが、満員電車に乗らずに済むことのストレス軽減に加え、7時30分に出社すると、他に出社している人はまずいないのでオフィスが静かだ。9時前まではまず電話やメールが来ることは滅多にない。
前日に残しておいたり、先送りしていた作業に集中できるので効率も上がる。職場の人たちが出社する9時頃には一仕事終えていることも多い。
また、早く帰れるメリットも大きい。電車が空いていることが影響しているのか、人身事故などで運行が停止する可能性が低い。
夕方早い時間帯に閉まってしまうような個人経営の専門店にも行くことができるし、私はアルコールを飲まないので経験はないが、居酒屋などの「ハッピーアワー」や「0ちょい飲み0」も空いている時間に気軽に利用できるはずだ。
実施して数年経過した「大幅な時差通勤」だが、メリットばかりで大きなデメリットが今のところ見当たらないのが正直な感想だ。
あえて挙げるとすれば、定時前退社を始めた頃に、周囲の目が多少気になったことと、冬場に早朝の寒さが身体に堪えるぐらいだろうか。どちらも「慣れ」で解消できる。
先述したように誰もが簡単に実現できるとは思わないが、可能かどうか検討する価値はあるのではないだろうか。
日々満員電車に揺られて、疲弊して会社にたどり着いて、仕事を始めるのを「普通」とは思わないことから、まずは始めてみることをお勧めする。