如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

4Kテレビの普及に「画面が暗い」という新たな課題

あの4Kテレビが「暗い」というとんでもない衝撃(東洋経済オンライン)

松田 史朗 : 朝日新聞記者

 

 当ブログでも何度か書いている4Kテレビだが、年内にも購入を検討している者として興味深い記事「あの4Kテレビが『暗い』というとんでもない衝撃」が11月1日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 

 記事は実際に4K放送と2K放送を並べて見比べた結果「4K放送の方が明らかに暗く見えた」という実体験の紹介のほか、関係者への取材からその原因が、

  1. 最大輝度の不足
  2. 4K放送の多くが2Kカメラで撮影されている
  3. 従来の2Kテレビが明るすぎる

 という3点にあることを解説している。

 

 1の輝度の問題について、記事では4K放送の特徴であるHDR技術を生かすには一定以上の輝度が不可欠だが、バックライト部品のコストアップなどを理由にメーカーが及び腰で、国内メーカー5社では東芝以外は非公表だとしている。

 実際に4Kテレビの画像が2枚掲載されているが、シャープが暗く、パナソニックが明るいのは確かだ。規格を公表した東芝が掲載されていない理由は不明だが、おそらく撮影した4Kテレビのなかで、最も「明るい」機種と「暗い」機種を引き合いに出したものと思われる

 

 メーカーのカタログでも4KテレビのHDR機能については大きくアピールしているが、より責任が大きいのは総務省の「4K放送・8K放送情報サイト」にある4K8Kとはの「4K放送8K放送の魅力」にある輝度の説明にある「輝度について」だろう。

 このページでは、「HDR技術により、映像で表現できる明るさの範囲が大幅に拡大し、より現実に近い明るさの表現が可能となります」という文面と、合わせて「従来」と「HD技術」の比較画像が掲載されている(メーカー名の記載はなし)。

 この画像を見ればその差は歴然、しかもご丁寧にも「より現実に近い明るさの表現が可能になり、白飛びなどが改善」との説明文まで書いてある。

 

 このサイトやカタログを読んでテレビを購入した消費者が。4K放送が実は暗いという事実を知れば、失望するのは確実だろう。

 

 問題2の2Kカメラの問題は記事では4K放送が普及して4Kカメラで撮影した番組が増えれば解決するとしている。3の課題も同様だろう。

 確かに、一般社団法人放送サービス高度化推進協会(A-PAB)が今年8月に発表した「4K・8K放送市場調査結果のまとめ」によれば、受信可能なテレビの所有率は4Kで前回(3月調査)の3.1%から4.3%に、8Kでも0.7%から0.9%に増加している。

 ただ、両放送を受信可能なテレビを「欲しい」という人は前回の35.7%から31.2%に減少、「購入を予定している」人も30.1%から29.8%と微減しているのは気になる。

 

 記事を執筆した朝日新聞の記者は、8月に「取材結果を朝日新聞デジタルおよび朝日新聞紙上で特集・連載記事にし」、「うちの4Kテレビも暗い」などという反響が読者から多く寄せられた、としているが、我が家では朝日新聞を購読していないし、Webサイトでは有料記事なので読んでいない

 

 まあ実際に暗い機種が存在するのは間違いないのだろうが、読者から「多く」の反応が寄せられたという表現については、反応の「実数」が分からないので何とも言えない。

 また、記事ではA-PABには5月まで寄せられた相談のうち82件(1.6%)が「4K放送が暗い」という内容だったとしている。

 ただ、先の同協会の調査結果には4K(8K)テレビへの不満足理由も掲載されているのだが、上位5つには「画面が暗い」は入っていない(ちなみに1位はチューナーに関する内容で、2位は価格が高い)。

 

 また、記事では、今後4Kテレビが普及することでこの問題がクローズアップされる可能性に言及している。

  これについては個人的にはあまり問題にならない可能性が高いと踏んでいる

 その理由としては2つ。まず、家庭では今まで見ていた2Kテレビからの買い替えになるので、2台並べて比較する人は少ないうえ、「慣れ」もあって不満が爆発するような社会問題までには発展しない可能性が大きいこと。

 もうひとつは、急速に低価格化が進む有機ELテレビが、今後4Kテレビの主力になる可能性があり、現在の課題である「輝度」「耐久性」「小型化」などの問題が解決すれば、現在の液晶が一気にシェアを失う可能性が高いことだ。

 

 本体の重量や厚み、黒の再現性などでは有機ELが液晶を圧倒しており、現在は韓国のLG1社の独占供給となっているパネルが、印刷方式など日本メーカーの新技術の導入でパネル価格に競争原理が働くようになれば、普及に弾みがつく公算はある。

 

 また、現在家庭で視聴されている液晶、プラズマテレビは10年近く前の「地上波デジタル化」とそれに合わせた「家電エコポイント」の効果で一気にブラウン管からの移行が進んだ。

 今回はこのような大きな買い替えの誘発要因はないものの、我が家のようにテレビ自体が寿命を迎える家庭も少なくないことも、4Kテレビの普及には追い風だ。

 

 「4K放送が暗い」という側面にスポットライトを当てた意味では本記事の意味は大きいとは思うが、4Kテレビの普及に伴う部品価格の下落と技術改革でメーカーが社会問題に発展する前に、何らかの対策を講じる可能性は高いと思う。

 

 とはいえ、我が家も早ければ今月中にも購入を予定していた4Kテレビについて、その「輝度」を再確認するいいきっかけになったのは確かだ。