「キャッシュレス還元」に頼った韓国経済の末路 (プレジデント・オンライン)
今井 澂 国際エコノミスト
今月22日のGSOMIA(日韓秘密軍事情報保護協定)失効まで残り3週間を切った。
隣国韓国との関係に改善の兆しは見られないが、様々な切り口から韓国の行く末を予想する記事「『キャッシュレス還元』に頼った韓国経済の末路」が11月1日のプレジデント・ンラインに掲載された。
執筆したのは、山一証券や日本債券信用銀行(現あおぞら銀行)グループの投資部門などで活躍された方で、90年代には株式相場見通しなどをマスメディアでよく発言されていた記憶がある。
1935年生まれなのですでに84歳だが、書かれる記事の面白さは変わらない。このブログでは文字数の都合もあるので、記事のなかの「国家統一」と「レアアース」問題に限って検証したい。
記事では、まず「文在寅大統領という人がいかに滅茶苦茶めちゃくちゃか」について、その経歴や発言から、朝鮮半島の南北国家統一で、中国を後ろ盾にした核兵器保有国として「日本と対等に渡り合える国」を目指している事を挙げている。
また、中国寄りの国家統一にはパワーバランス上、米国が反対するのは確実であり、文大統領の「夢」は実現しないと説明している。
現実問題として、一部では、国家が統一されれば「北朝鮮の安い労働力」と「貴重なレアアース資源」によって経済大国になる、との見方もあるにはある。著名な米国人投資家ジム・ロジャース氏の朝鮮半島への熱い視線と発言は、近著などで記憶に新しいこところだ。
この点について言いたいのは2点。
まず、北朝鮮の人口(2500万人)は韓国(5100万人)の半分近い。経済が疲弊しつつある現状で、統一で5割増しになる国民、しかもその多くが現在食糧難にあるとされるのに、彼らをそう簡単に食わせていける経済力が韓国にあるのか疑問だ。
中長期的には、現在の組み立て加工型の産業構造を転換していくつもりのようだが、現時点で韓国にしかないテクノロジーというものを私は知らない。現在主力の半導体や自動車分野も、中国や他のアジア諸国の台頭で優位性は失われつつある。
これらに匹敵する新たな成長産業をそう簡単に見つけられるほど、国際競争は優しくはないだろう。
もうひとつは「大量のレアアース埋蔵」の真偽について。
これは一部の政治家や評論家がよく取り上げる話題で、最近では今年6月20日のビジネスジャーナルに掲載された「北朝鮮、地下に2千万トンのレアアース埋蔵…日本が詳細データ把握、外交交渉の切り札に」が分かりやすいだろうか。
この記事では、「北朝鮮には2000万トンのレアアース17種が眠っている。その上、こうした地下資源に関するデータは日本統治時代に日本企業が『足で稼いだ』ものが今でも活用可能な状態で保存されており」としている。
個人的には、このレアアース問題、その存在自体が怪しいと思っているのだが、それ以上に怪しいのがこの記事を書いた「浜田和幸」なる人物なのだ。
肩書は「国際政治経済会社」で、参議院議員も一期務めている。ただその発言には「どういうこと?」という疑問符が付くものが少なくないのだ。
ウィキペディアによれば同氏の「政策・主張」の項には、「アメリカ同時多発テロ事件が保険金狙いだったことを示唆する発言を繰り返している」と書かれている。
また地震についても「スマトラ島沖地震が『地震兵器』、『津波兵器』により引き起こされた可能性があるとし、アメリカの関与を示唆した」との論文を発表したり、2011年の衆議院東日本大震災復興特別委員会では「地震や津波を人工的に起こすのは技術的に可能で、国際政治、軍事上で常識化されている」と発言している。
こういう「陰謀論」めいた発言を公式の場で堂々とする度胸は買うが、その結果本人の信頼度と、主張の信憑性が下がっているということには気づいていないようだ。
北朝鮮のレアアースもこの流れに属する内容だと思う。そもそも「現在活用な状態」にあるなら、採掘して国際社会で売れば相当なおカネになるのは間違いない。それをしないのは、できない「理由」があるからだろう。
この理由について私自身は「レアアース」自体が存在しないか、あっても採算に見合わない程度の埋蔵量しかないためではないかと考えている。
そもそも、国境が陸続きの中国や韓国の北朝鮮国境付近で、多少なりともレアアースが発見されたという話を聞いたことはない。
国境から多少北朝鮮の山奥に入ったエリアで、「大量かつ多種のレアアースが埋まっている」というのは、もはや妄想に近い非現実的な話だと思うのが普通の感覚だと思うのだが。
日本では、戦後からつい最近まで、M資金(GHQが占領下の日本で接収した財産などを基に、現在も極秘に運用されていると噂される秘密資金)を舞台にした詐欺事件が、有名企業で相次いだことがあったのだが、海外の政府が保有する資産を材料にして交渉(というか詐欺)を持ちかけるという点では、レアメタルはまさに「M資金の北朝鮮版」と言っていいのではないか。
今後仮に南北の国家統一に向けた動きが出てくるとすれば、このレアアースがテーマとして浮上するのだろうが、展開としては「発見できなかった」か「採掘困難だった」という結末になると思う。
ここから先は考えたくもないが、これまでの過去の両国の態度や発言を見聞きする限り、「発見できなかったレアアースに匹敵する経済援助」などと言う名目で日本に経済支援を要求してくる可能性が高いだろう。
こちらの立場としては、拉致被害者の苦しみを考えれば「同額の」補償金を請求したいところなのだが。