如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

CH-Rが売れない理由は分かるが、シエンタが売れる理由は?

シエンタ絶好調でも、「C-HR」が大苦戦する理由(東洋経済オンライン)

渡辺 陽一郎 : カーライフ・ジャーナリスト

 

現在乗っているミニバンのサイズがやや大きくて、取り回しに苦労することが多いので、もう少し小型のミニバンを検討しているのだが、1500ccクラスのミニバンとなるとトヨタの「シエンタ」か、ホンダの「フリード」しかないのが現状だ。

 

 こうした悩みを抱えるなか、11月6日付けの東洋経済オンラインに「シエンタ絶好調でも、『C-HR』が大苦戦する理由」が掲載された。

 

 この夏シエンタが何故かバカ売れしたという記事は、自動車関連のニュースサイトで見た記憶があったのだが、そこには「売れた」という事実だけが書かれていてその「理由」が明記された記事はなかったように記憶している。

 

 結論から言えば、「やはりなぜシエンタが売れたのかは分からなかった」だ。

 

 記事では、売れた理由として、①2018年9月にマイナーチェンジを実施、②ヴォクシーのようなミドルサイズミニバンからの乗り換えが目立つ、③シエンタは“好調に売れる波”に乗った、の3点を挙げているが、個人的な感想を言えば、どれも説得力に欠ける。

 

 まず急激に売れ行きを伸ばしたのが、7月(前年同月比157%)、8月(同158%)、9月(同185%)で、1月から6月までの累計(同112%)を圧倒した理由に、この3つがどれも当てはまらないからだ。

 

 あえて間違いを覚悟のうえで私見を述べると、夏ごろから10月にマイナーチェンジするとの噂が流れていたので、現行型のデザインを好む層がモデルチェンジ前に買い急いだのではないかと推測している。

 実際に10月4日に発売されたのは、シエンタを含むコンパクトカー4車種に特別仕様車を設定、という内容だったのだが。

 

 一方、CH-Rが売れない理由は実に分かりやすく説明している。

 記事では「主に外観デザインの魅力によって売れる商品であるから」で、「実用性では選ばれないため、欲しい人がひと通り購入すると、売れ行きが伸び悩む」と解説しているが、これは納得がいく。

 

 私自身、CH-Rが発売されてすぐに販売店に行って展示車を見たが、確かに外観はカッコよかった。タイヤとホイールが異様に大きく、まさに小型SUVの王道を行くイメージ。

 セールスの人に主な購入層を聞いたら、「意外にも50代男性が多い」と聞いて、子育てが一巡しておカネに余裕のできた自動車好きのシニアが買っているのだと思ったが、私自身の感想としては「レンタカーで乗るにはいいけど買うことはないな」だった。

 

 というのも外観などのデザインを優先した結果、記事にもあるが後席と荷室のスペースが実用とは思えないほど狭いと感じたほか、致命的だったのは「運転席から見た背後の視野の狭さ」だ。

 まず背面の窓ガラスが大きく寝ているので上下幅が極端に短いうえ、後部座席の窓ガラスから後ろにガラス部分がないので、バックの際の見切りがとても厳しい。

 

 販売店の人にこの点を指摘したら「そのためのバックモニターです」と言われたが、安全確認の基本はまず「目視」ではないだろうか。

 

 ここまで実用面でデメリットがあると、本当にデザインが気にいった人しか買わないから、ファンの買いが一巡すれば売れ行きは落ちる。

 

 たださすがトヨタと感じたのは、11月5日にダイハツからのOEM供給で5ナンバーのSUV「ライズ」を発売したことだ。

 こちらは後部座席の後ろにも窓ガラスがあり、視野はCH-Rより改善されているし、後部座席の天井も高いので乗車時の狭さは多少なりとも感じにくくなっているはずだ。荷室の容量もCH-Rの318Lに対して、369Lと大きい。

 

 CH-Rのデザインは好きだが実用性で購入を躊躇していた層をターゲットにしているはずで、トヨタ車種のラインナップの「穴」を埋める効果は大きいと思う。