如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

「顧客を優先」「常識を疑う」はすでに現場では常識なのだが・・・

会社に頼らず生きていける人に共通する3特徴(東洋経済オンライン)

唐土 新市郎 : 社長専門アドバイザー

 

終身雇用、年功序列の会社制度が崩壊しつつあるなか、会社に依存せずに働くための処方箋「会社に頼らず生きていける人に共通する3特徴」が11月13日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 

 記事を書いたのは、「社長専門アドバイザー」という見慣れぬ肩書を持つ作家・講演家で、「ひとりぼっち」という会社の社長でもある。出身はコンサルの船井総合研究所で最年少の執行役員だったようだ。現在50歳と思われる。余談だが、この船井総研は中堅家電メーカーの船井電機とは無関係。

 

 記事の趣旨はタイトルにあるように3つ。

  1. つねにお客さんを真ん中に置く
  2. 常識を疑う
  3. 最悪を想定している

 の3点だ。

 

 コンサルタントとして50歳というのは、脂が乗りきっている時期だと思うのだが、読後の感想を言わせてもらえれば「内容が今ひとつ薄い」。

 簡潔に言えば、「そんなことはすでに誰もが知っている」内容なのだ。

 コンサル会社なので、深く手の内を見せることはご法度なのはわかるが、タイトルから想像して読むと、期待を裏切られたような気になるかもしれない。

 

 1の「顧客優先主義」はもはや営業の現場では当たり前の概念だ。記事では「『新商品をいかに売るか』しか頭にない。そんな人が圧倒的に多いです」とあるが、こんな企業はもはやガチガチの中小オーナー企業か、ワンマン経営者がすべてを管掌する独善会社ぐらいしかないだろう。

 

 まともな会社なら、商品企画の段階から営業が関与するので、プロダクトアウトではなくマーケットインの商品を目指すのはごく自然な形だ。つまり「営業がいかに売るか」ではなく「顧客がどうしたら買いたくなるか」に主軸が置かれている。

 

 魅力のない商品を手掛けているのに、上司や自分への評価を気にするなどと言うのは、本末転倒もいいところだ。

 

 2の「常識を疑う」については、検討する余地のある会社は比較的多いだろう。

 記事では、本来の始業時刻より40分も早く出社して上司に挨拶する習慣や、14時から15時と決まっている会議の時間帯が上司の都合で延長になる例を挙げている。

 

 これはまさに「タコつぼ」企業にありがちな無意味な慣習で、誰かが打ち破らないと改善されない。しかもこういう企業に限って「前例主義」「上意下達」が徹底していて、若手の意見など見向きもされない傾向が強い。

 

 こういう企業風土の会社では、記事にあるように「部長の話が長引こうが、説教が始まろうが、15時になったらさっさと退出」というのは、理にかなった行動である。

 最初は勇気がいるが、何度か繰り返しているうちに「あいつはそういう奴だ」という認識が広まって、誰も何も言わなくなる。

 

 ちなみに記事にある会議の時間帯が14時から15時の一時間というのも現在のビジネス感覚では「長い」。知人の会社では「会議は役員会を除いて30分」と決まっている。予約制なので次の会議が埋まっているので、延長はできない。

 よく考えれば週次報告など定例会議は、テーマが決まっているので30分もあれば重運である。特別に検討が必要な案件であれば別に会議の場を設ければいいだけの話だ。

 

 3の「最悪を想定している」は、よほどの自信家でなければ頭のなかにあるはずだ。物事が想定通りいかないのは当たり前で、成長している分野のビジネスの世界では想定外の事態が起きない案件の方が珍しい。

 逆にいえば、普段から業務上で何の変化や突発事態が起きないような仕事しかない会社は、将来性が危ぶまれると見たほうがいいだろう。

 

 こういう会社では、自分の関わる仕事の「最悪の事態」よりも、会社の存続と言う「最悪の状況」を想定した方がよさそうだ。

 

 ということで、3つの視点については、どれも目新しさはなかったが、間違ったことを書いている訳ではない。

 20代の若手社員にとっては、参考になる記事だとは思う。逆に40代以降の中堅社員がこの記事を読んで目覚めたとしたら「相当重症」だろう。