如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

40代のリストラ対策には30代から準備を。お手本になる50代は少ないという現実

50歳を超えて最前線で活躍できる人、隠居モードに陥る人の違い(ダイヤモンドオンライン)

丸山貴宏:株式会社クライス・アンド・カンパニー代表取締役

 

 つい数年前まで「リストラ」と言えば、会社の業績悪化に伴う人件費削減のための50代の早期退職募集の事だったが、今は45歳まで対象年齢が下がってきた。

 こうしたなか、50代になっても第一線で活躍する人たちの特徴などを解説する記事「50歳を超えて最前線で活躍できる人、隠居モードに陥る人の違い」が11月25日付けのダイヤモンドオンラインに掲載された。

 

 著者は丸山貴宏氏。リクルートで人事担当採用責任者として活躍後独立、採用、転職のアドバイスで豊富な実績を持つ人事のプロである。1963年生まれなので現在56歳と思われる。

 

 記事前半では、最近の転職事情について、45歳で一つ目のハードル、50歳で二つ目の大きな壁が存在すると解説している。

 続いて、役職定年制度が多くの企業で採用された結果、「50代に入ると働く人の評価が下げられる感がある」とし、「隠居モードに入っているような人がけっこういたりします」と現状を紹介している。

   

            

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 一方で記事後半では、こうしたなかでも第一線で活躍する50代の人たちの特徴として、「自分のキャリアを会社に委ねてきたかどうかの違い」を理由として挙げている。

 

 ここまでの内容の感想を言えば、50代に入って隠居モードに入る人がいるのは事実だが、その理由が「キャリアを会社に委ねた」結果、というのにはやや違和感があった。

 

 というのも、この記事の対象となっている現在の50代は「会社人間」と呼ばれるような人はザラで、三共のビタミンドリンクRegainのTVCM「24時間戦えますか?」のコピーが話題になった世代である。

 採用人数も多く、人事評価の基準も、営業部門などでは実績が優先されたが、「個性よりも協調性」を重視する傾向が強かった。

 つまり、会社から与えられた仕事をいかに「早く」「正確」にこなすかが査定に大きく影響していた。今の人事制度のように、別の部署への異動希望がそう簡単に出せるような状況ではないので、下手に異動希望の意志を出すと「不満分子」として、評価が下がることすらあったのである。

 

 こうした環境下では、「与えられた仕事」に全力投球しかない。現時点で50代で第一線で活躍したり、役員になった人は、「会社に仕事を委ねた」結果、同期入社よりも大きく実績を上げたことが評価された側面が大きいはずだ。まあ、中には将来の転職を想定して、仕事をしていた先見性のある人も当然いるだろうが。

 当然ながら、会社一筋に頑張ってきても、管理職のポストは限られている。地位や報酬で報われない人の方が多いのが実情だ。彼らを「キャリアを会社に委ねた結果」と切り捨ててしまうのは、時代の流れとは言えど、割り切れないものを感じる。

 

 記事では後半で、「どんどん転職のオファーが来る人になりたいのなら、自らにスイッチを入れて、30代の人から『あんな50代になりたい』と思われるような活躍をしなければなりません」としているが、そもそも「お手本」となるような50代の絶対数が現状ではまだ少ないと思う。

 

 見習うなら、50代のリストラを目の当たりにして、自分自身のキャリアプランを設計し、その実現に向けて仕事に取り組んでいる40代前半あたりの実力者だろう。彼らの自分への評価の基準は「社内」よりも「社外」からの客観的なモノサシであり、仕事を取り巻く環境とその変化を冷静に分析しているはずだ。

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 記事の最後では、50代で転職することになった人が、「専門分野で広く深い人的ネットワークを構築し、非常に高い交渉能力」していたことが評価され、退職後にはオファーが相次ぎ、転職活動することなく再就職が決まった事例を紹介している。

 

 現在の30代のビジネスマンにアドバイスするとしたら、このような社外でも通用するようなスキルを持つ人を社内で見つけて、そのスキルを習得することだ。先に書いたように40代の対象者がいればベストだ。

 ただ、このようなスキルを持つ人の仕事に対する方向性自体は、あまり年齢とは関係がないので、50代後半の人であっても何らかの形で「繋がり」を持った方がいいと思う。

 

 転職では、「社外でも通用するスキルが重要」というテーマは、最近ではどのメディアでも広く言われていること。自分で考えて実践するのもいいが、実際に社内で実践している人から学んだ方が効率的だ。

 ただ、いかにも「スキルを頂きに来ました」オーラを出して接近しては警戒されるのは確実、普段から本人と接点のありそうな仕事に積極的に名乗りを上げるなどの名前と顔を覚えてもらうぐらいの「配慮」は必要だろう。