如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

消費者の節約傾向に変化、一段と「資産価値」重視に

お金が貯まる人があえてブランド品を選ぶワケ(東洋経済オンライン)

松崎 のり子 : 消費経済ジャーナリスト

 

 節約志向というと、主婦が一円でも安い日用品などを求めて行動というイメージがあるのだが、最近はこの傾向に変化が出ているらしい。

 11月26日付けの東洋経済オンラインに「お金が貯まる人があえてブランド品を選ぶワケ」というタイトルの記事が掲載された。

 

 記事では前段で「節約意識が高い消費者が、より価格が高いものを購入するようになっている」という風潮を紹介、「安さ」が節約の決め手とはならなくなってきたとしている。

 

 この根拠として、フリマアプリ「メルカリ」のプレスリリース「2019年度「フリマアプリ利用者と非利用者の消費行動」に関する意識調査」を引用、「フリマアプリ利用者の約3割が「新品の商品購入単価が上がった」ことを紹介している。

 ちなみにこの調査結果では、「フリマアプリ利用・非利用者を問わず、購入する商品は新品であることを重視する割合が減少。非利用者は昨年対比5.0%減少。利用者は昨年対比2.1%減少」という結果も明らかにしている。

 

 結論から言えば、記事にあるように消費者が、「売れるものを買う」という選択をしているからに他ならない。

 つまり、購入価格が高くても、その分フリマで高く売れれば実質的な負担はその差額で済むので、安い品を買って売れずに抱え込むよりもメリットが大きいということだ。

 

 ちなみに、記事では「腕時計ならロレックスがダントツの人気、不動の地位」、「ブランドバッグも同様だ。人気のトップスリーは、エルメス・ヴィトン・シャネル」だそうだ。

 

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 こうした資産価値というか将来の売却価格を想定して、購入する商品を選択するというのは、マンションなどの不動産や、下取りを前提にした乗用車などでは一般的になっている。

 こうした流れが、高額商品から腕時計やバッグなどのやや低価格帯にまで普及してきたということだろう。

 最近は、「ミニマリスト」とか「断捨離」といった必要最小限のモノしか家に置かない人たちが増えていることも影響しているかもしれない。

 つまり、モノを購入する基準が「所有」から「利用」へと価値観が変化しているのだ。

 

 個人的な事情を紹介すると、最近凝っている私の数少ない趣味のひとつにPCゲームがあるのだが、新品を購入することはない。デジタル商品なので中古でも内容自体は劣化しないという事情もあるが、商品にもよるが大体定価の半値で購入できるからだ。

 

 加えて、ゲームを楽しんだ後は購入先に中古品として買い取ってもらうのだが、この際に対象となるゲームの買い取り額が一定以上だと、査定額が20%アップするというキャンペーンが開催されることが結構な頻度である(キャラクター商品や各種ゲームの中古品流通では大手の駿河屋の場合)。

 

 さらに言えば、PCゲームの価格には「古くても面白いものは高いが、新しくてもつまらないものは激安」という傾向があるので、購入する際には「多少高くても買い取ってもらう際に高いゲームを選んだ方がお得」ということになる。

 この行動は、まさに高級ブランド品を購入する考え方と同じだ。購入する際の初期費用は高くても、最終的に「良い品を安く利用できる」訳だ。

 

 ちなみに乗用車では、トヨタが高級ブランド「レクサス」6車種に加え、その他13の車種で「KINTO」として、月額利用料金制のサービスを開始している。料金は最近デビューした小型SUV「RAIZE」なら月額39,820円(税込)、レクサスだと月額198,000円からと跳ね上がるが、こちらは6カ月ごとに新車に乗り換えられる。

 

 以上から将来を想定すると、購入の決め手が「利用価値」が主流になり、しかもその商品の価格帯が一段と低下していく可能性がある。

 

 身近な例を挙げれば、デジタルコンテンツを手掛けるDMMの電子書籍の一部は、2日間限定で読めることを条件に、普通の購入価格より安く読める仕組みがある。一度読んだら、まず二度と読まないような人たちには歓迎されるだろう。

 

 現状では、実店舗がECサイトに押されて厳しい環境にあるのはよく知られているが、成長しているECサイトにおいても今後、「利用価値」を考慮した販売方法への対応次第で、業界内の淘汰が進む可能性はあるだろう。