中古マンション販売、新築を上回る…条件に合う物件が格段に増加、“築深”が狙い目(ビジネスジャーナル)
住宅ジャーナリスト・山下和之の目
マンション市場で、中古物件の人気が高まっているようだ。
11月30日付けのビジネスジャーナルに住宅ジャーナリスト・山下和之氏の「中古マンション販売、新築を上回る…条件に合う物件が格段に増加、“築深”が狙い目」という記事が掲載された。
2000年には10万件近い販売物件があった新築マンションが、その後急速に減り、2016年以降は3万7000件台で推移しているのに対して、中古物件は2000年以降じわじわと増えており、2017年、2018年は新築数とほぼ並んだが、2019年はこれが大きく逆転する可能性があると記事では指摘している。
記事にある「新築」と「中古」のマンションの累積件数のグラフを見ると、確かに「大きく」差が開いている。ただ、記事では「10月までの合計では両者の差は1万件以上」としているが、グラフを読み取ると、その差は「3万件」の誤りのようにも見えるのだが・・・
山下氏は、物件を探している人は新築にこだわらず、中古にも目を向けることで、購入対象となる部件数は2倍に増えるとアドバイスする一方で、中古物件の築年数にも注目。「築31年以上の物件の割合は08年には15%ほどだったのが、18年には35%以上」に達していると指摘している。
新築好きの日本人が、中古にも目を向けるようになるのは悪いことではない。山下氏の言うように対象物件が大きく増えるのは確かだ。
また、「現物」を確認できるので、内外装やベランダからの景色が実感できるほか、共用施設の利用状況や、住んでいる住民の雰囲気も把握できるかもしれない。イラストと仮想画像でしか完成図を見られない「青田売り」の新築にはない中古の大きなメリットだ。
ただ、気になるのは記事にもある「築年数」の問題。先述のように東日本不動産流通機構の調査では、すでに首都圏の仲介市場で新規登録されたマンションのうち3戸に1戸は築31年以上の物件である。
また、同機構の月例マーケットウォッチ10月度(データ)によれば、首都圏の中古マンションの成約状況では、築年数が初めて22.16年と22年の大台に達している。中古物件の「高齢化」は確実に進行している。
築30年と言えば、2度目の大規模修繕を迎える時期。物件の状況次第では「給排水管」や「エレベーター」の更新が必要になるかもしれない。一回目の大規模修繕で多額の費用を遣ってしまった場合、修理費不足のため管理組合から数百万円規模の「一時金」の支払い要請が来る可能性もある。
とは言え、山下氏が指摘するように近年の新築物件の価格上昇に合わせる形で、中古物件の価格も上がっており、特に立地のいい物件は新築並みの価格が付くこともある。これでは中古のメリットは減少する。
山下氏は、記事の最後で「“中古マンション主役元年”のメリットを最大限享受するためには、築深物件に注目する必要がありますが、その見極めは簡単ではありません」と、その具体的な“見極め方”を次回の連載に持ち越している。
ここは「斜め視線から」をウリにしている当ブログならではの個人的な見解を述べておきたい。
中古物件の購入で注意を払うべき項目に「築年数」があるのは確かだが、先に述べたように「外観」「内装」「住環境」といった“外面”からの確認は容易だし、様々なメディアでもその見分け方は紹介されている。それはそれで確認すべき“必要”事項だが、これで“十分”ではないのだ。
マンションには必ず管理組合があり、年に一度以上の総会を実施し、その議事録を残すことが義務付けられているほか、管理規約や長期修繕計画に関する内容も書類として整備されていることになっている。
マンションの管理規約や、これら「議事録」などの資料は、マンションの実態を“内面”から知るのに大いに役立つのだ。住民が今問題にしている点や、それに対する組合の対応などは購入前に知っておくべきだろう。
このようにマンション購入に当たっては、物件の「外面」「内面」の両側からの調査・確認が不可欠なはずなのだが、現状では購入者も仲介業者も、「外面」にしか関心を示していないのが実態だろう。しかもその「外面」も素人が見て分かる程度のことしか対象にしていない。
こういった流れを是正するため、ホームインスペクション(住宅診断)を説明義務化する「改正宅建業法」が、2018年4月に施行されたが、様々な課題もあって中古媒介市場で十分に機能しているとは言えない状況だ。
やはり、マンション購入にあたっては「内部情報」を確認する手間を惜しんではならない。
では、この議事録などの内部資料をどうやって入手するかだが、多少の費用はかかるが不動産会社に頼めば、管理組合からコピーを受け取ることが可能なはずだ(閲覧しか認められない可能性もある)。できれば3年分ぐらい確認しておきたい。
議事録の閲覧・開示を要請した際に、それを拒むような管理組合のマンションや、その手間を嫌がる不動産屋は見切った方がいい。購入後に後悔する可能性が高いからだ。
というのも、区分所有法第三十三条には「利害関係人の請求があつたときは、正当な理由がある場合を除いて、規約の閲覧を拒んではならない」と明記されている。
また、同法律の第四十四条第5項目には「第三十三条の規定は、議事録について準用する」と書かれている。このことは6月30日付けのブログでも書いた。
閲覧が義務付けられている資料の開示を拒絶するからには、「それなりの知られたくない内部事情」があるからに間違いないはずだ。こういった不安要素がある中古マンションを避けるべきなのは言うまでもないだろう。
以上、中古マンションを購入する際には、「内面」「外面」両方からの調査・確認を行うことを強く勧めたい。