如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

一般NISAの廃止は中高年の資産運用へのイジメだ

「NISA恒久化」に暗雲!投資家は6ステップで運用方針を整理しよう(ダイヤモンドオンライン)

山崎 元:経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員
 

 NISA(少額投資非課税制度)のうち、2014年に始まったいわゆる「一般NISA」の先行き不透明感が強まっている。

 

 12月4日のダイヤモンドオンラインには、経済評論家・山崎元氏の「『NISA恒久化』に暗雲!投資家は6ステップで運用方針を整理しよう」が掲載された。

 

 記事の趣旨は、「一般NISA」が「つみたてNISA」に一本化されそうな雲行きなので、個人投資家としては今後の資産運用をどうすべきか、という内容だ。

 具体的な対策については記事に詳しく書かれているので、本稿では「一般NISA」の扱いについて述べたい。

 

 確かに一般NISAに対しては、口座数が1100万口座を超え広く普及したものの、年間上限120万円(当初は100万円)の範囲内で個別株式などの短期売買が可能なことで、一部に批判の声があったのは事実のようだ。

 

 これに対応するため、金融庁は2016年に16歳未満を対象にした「ジュニアNISA」を2016年に、非課税期間を20年間とする「つみたてNISA」を2018年に導入したが、口座数は思うように伸びていない。

 これに業を煮やした政府が、NISA制度を「つみたてNISA」に一本化しようというのが趣旨のようだ。

 

 ただ、マスコミの報道を見ると、まだ具体的な方策は決まっておらず流動的なようにも見える。

 11月27日の読売新聞オンラインは「NISA「一般・つみたて」一本化へ…税負担の公平性にも配慮」の見出しで、政府が「将来の一本化方針を、12月にまとめる与党税制改正大綱に明記する考え」としている。

 一方、11月29日付けの朝日新聞デジタルでは「NISA、2024年「積み立て型」新設 資産形成促す」との見出しで、「2024年から安定的な資産形成を促す「積み立て型」を加える」として、図表を使って一般NISAは、従来型に加えて積み立て型を加え、将来的に一本化するという解説をしている。

  いずれにせよ、現在の一般NISAは縮小の方向にあるのは間違いなさそうだ。

 

 この一般NISAの扱いについては個人的に異論がある。

 まず、積み立て型のNISAを拡充して、長期投資を推奨するのには反対しないが、それと一般NISAを縮小するのとは「全く別次元」の話ではないか。

 

 そもそも一般NISAを導入した背景には、日本の家計の金融資産が「現金・預金」集中していて、これを「投資」に振り向けようという狙いがあったはずだ。

 

 2019年8月の日本銀行統計局による「資金循環の日米欧比較」調査によれば、家計の金融資産に現金・預金の占める割合は、米国12.9%、ユーロ圏34%に対して、日本は53.3%と依然として圧倒的に高い。

 

 この比率を引き下げるのに有効な手段のひとつが、一般NISAであることは間違いないだろう。

 個別株式の短期売買への批判はともかく、個人が非課税枠を意識して株式や投資信託など証券投資に向かわせる大きな「きっかけ」にはなったはずだ。

 

 富裕層の運用に使われているとの指摘だが、一般NISAの投資上限は年間120万円で通算5年合計でも600万円に過ぎない。数カ月前に金融庁のレポートで「老後資金2000万円が必要」が話題になったが、その3分の1にも満たない金額である。600万円を非課税で貯蓄するのは富裕層だけなのだろうか。

 

 しかも私のように50代後半ともなれば、「つみたてNISA」の利用期間はほとんどない。老後資金を自力で用意すべきとしながら、中高年には投資先の選択肢を絞り込むというのは、給与水準が下がっていく世代にとってはダブルパンチのようなものだ。

 

 2023年までは一般NISAは継続されるので、それまでは最大限活用するつもりだが、現行の制度がそれ以降も続くことを期待したい。