如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

先天的におカネの管理ができない人という存在――必要なのは「相談」より「治療」

FPは見た!「お金が全く管理できない人」の実態(東洋経済オンライン)

高橋 成壽 : ファイナンシャルプランナー

 

 世の中には、一般常識では考えられないようなレベルの「おカネ」の管理ができない人が一定数存在する――このような実例を紹介する記事「FPは見た!『お金が全く管理できない人』の実態」が12月19日の東洋経済オンラインに掲載された。

 

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 執筆したのはファイナンシャルプランナーで「ライフプランの窓口」を企画運営する高橋成壽氏。「ライフプランの窓口」は、ライフイベントに合わせた「安心」と「生活設計」をお手伝いすることをアピールしており、全国のFPと契約している組織のようだ。

 

 今回の記事のテーマは、「おカネの管理ができない人」なのだが、紹介される実例は以下の3つ。

  • 自動車の趣味に入れ込んで家計に関心がない
  • 借金の返済のために投資に手を出す
  • ストレス解消のため買い物で返済不能なまでの借金を抱える

 の3つだ。

 

 私自身、AFP(失効中)、証券外務員、銀行業務定試験(証券)などの資格は保有しているので、身内や知人などから資産運用の相談を受けることもあるのだが、この事例のように本人の意識の問題から「どうにも手の施しようがない」人がいたこともあった。

 

 彼らに共通するのは「借金をすることにまったく抵抗がない」という点だ。

 普通の人は住宅ローンがいい例だが、まず借金をする段階で立ち止まって考えることが多いだろう。ただクレジットカードの普及によるボーナス一括払いやリボ払いなどの普及で、同じ借金でもカードだと抵抗が小さいという面はある。

 また安易にできる「キャッシング」も一因になっているだろう。

 

 ただ借金で家計が破綻に追い込まれるまでとなると、これは普通の人の常識を超えた行動だ。彼らの思考パターンは、とにかく目先にある趣味やストレスのために「おカネ」を使ってしまうのである。

 相談された本人と会ったこともあるが、やや疲労感は感じたが、誰もが一見して生活が破綻しているようには見えなかった。

 

 個人的には、後先を考えずに自分のやりたいことをやらずにはいられない性格で、そのためには借金がいくらになるかなどという現実に関心が及ばないという点で、「借金依存症」という一種の病気ではないかと思う

 

 つまり事例1、3のように借金を止める気がない、事例2のように止めたいができないの区分はあるものの、これは家族や友人、そしてFPが解決できるような「相談」レベルではなく、医療面での「治療」が必要だろう。

 具体的には精神科のカウンセリングの他、借金依存症の別名DA(デターズ・アノニマス)を対象にした自助グループ「DA Japan」などが対応策のひとつとして挙げられる。

 

 記事でも、「学校や職場での金銭教育以前に、お金の管理が致命的にできない人たちが、一定割合いるのだろう」としているが、続けて「今後脳科学による研究が進めば、なぜお金を管理することができないかも明らかになるかもしれない」とするにとどまており、具体的な解決策は提示していない。

 

 まあ、プロのFP集団の代表なので、医療機関や自助グループに行くことを勧めるのは、立場的に難しいのだろうが。

 

 とにかく、周囲に今回の事例のような人がいたら、関係者はFPではなく、まずは医療機関や自助グループに行くことを勧めるべきだろう。FPは資産管理や運用のアドバイスはできても、「借金依存症」という病気の治療はできないからだ。

 

 これから政府の推進するキャッシュレス社会が進行すると、買い物での支払いが便利になるため、無意識のうちに購入金額が膨らみ、クレジットカードの場合深く考えずにリボ払いを選択、気が付いたら払いきれない借金を抱えていた、という事態にならないことを願っている。

 

 こうしたなか最近、各種クレジットカード会社から執拗に「リボ払い」を勧誘するハガキやメールが届くのが、どうにも気になるのは私だけだろうか。