如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

トヨタのKINTO苦戦、個人リースとの差別化と魅力向上がカギ

トヨタの自動車サブスク「KINTO」大苦戦の真因(東洋経済オンライン)

木皮 透庸 : 東洋経済 記者

 

 トヨタ自動車が、今年導入した自動車の定額利用サービス、「KINTO」が苦戦を強いられているようだ――「トヨタの自動車サブスク『KINTO』大苦戦の真因」が12月26日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 

f:id:kisaragisatsuki:20191226084446p:plain

KINTOのWebサイトの一部抜粋

 記事によれば、KINTOの契約件数はトライアル期間(3月~6月)に83件、その後の全国店以後も11月までの5カ月で868件に留まったそうだ。

 全国に4800店の販売網を持つトヨタとしては、月間の取り扱いが173台というのは「かなりマイナーな車」の水準である。ちなみに日本自動車販売協会連合会によれば「乗用車ブランド通称名別順位」によれば、11月の上位50車の最下位のハイエースワゴンでも731台売れているのだから、KINTOは予想をかなり下回っていると言っていいだろう。

 

 トヨタも、対象となる車種を追加したり、中古車や法人向けを手掛けるなど、手は打っているようだが、効果はまだ未知数だ。

 

 実は私自身、以前KINTOではないが、日産の個人向けリースでミニバンを購入したことがあるのだが、その決め手になったのは、

 ①当時は新規格キャンペーンとして金利優遇があったので、普通に分割払いで購入するのとあまり価格差がなかったことと、

 ②車がモデルチェンジではなく、完全な新モデルだったので、リコールや故障、修理、事故など何が起きても「販売店」に持ち込めばいいという安心感

 が決め手になった。

 

 任意保険も価格に含まれていたので、事故の際にも窓口を販売店の担当者がすべて対応してくれるというメリットは、実際に2回ほど自損事故を起こして実感した。保険会社との交渉が不要なうえ、代車の手配が迅速だったのもありがたかった。

 

 話は戻ってKINTOだが、トヨタが若者を中心とした「クルマ離れ」に一石を投じようとする試みは理解できる。最近のサブスクリプションブームに便乗するのも悪くはない。

 ただ、購入する側から見ると、個人リースや残価設定ローンとの違いが分からないというのが実情ではないだろうか。

 

 しかも記事では、販売会社の「残価設定型クレジットなどで売る方が、収益性が高く、今のところキントを顧客に積極的に勧める理由が見当たらない」というコメントを紹介しており、販売の現場にとっても「売る手法が増えたほどメリットはない」ようだ。

 つまり、買い手にも売り手にも「あえてKINTOを選ぶ理由」が見当たらないのだ。

 

 個人的にはサブスクリプションを訴求したいなら、記事にある福岡トヨタが展開する「KINTO ONE FT」ように、一年ごとに別の車種に乗り換え可能なスタイルにしてこそ、サブスクリプションのような魅力を感じるのではないだろうか。半年ごとに乗り換えられるレクサス版「キントセレクト」もあるにはあるが、月額19万8000円からというのは個人にはハードルが高すぎる。

 

 現時点ではコンパクトSUV「ライズ」で月額3万9820円(税込)が最も安い設定のようだが、これを3年縛りではなく半年か1年で乗り換え可能、しかも中古車も選択可能というような仕組みを変えれば、多少価格が高くなってもニーズは出てくると思う。

 

 現在、新車を実際に乗って確かめようとすると、売店で短時間の「試乗」をするか、新車のレンタカーを探すしか手段がない。試乗は無料だが、レンタカーは一日借りれば安くてもコンパクトカーでも諸経費込みで1万円近くなる。

 現在、日産ではリーフの「一泊二日試乗」を提供しているようだが、これは「電気自動車の知名度向上」を狙った一時的なキャンペーンに過ぎない。

 

 これが、定額の支払いで半年もしくは一年ごとにSUV、ミニバン、コンパクトと乗り換えができれば、その都度交渉、契約して、支払い額を決めるという手間も省けて、いわゆる「サブスクリプション」的な「乗り放題」のイメージに近くなる

 

 来年4月からは4系統に分かれて販売車種を棲み分けていた販売店が、全国で一斉にすべての車種を扱えるようになる。

 これはKINTOの普及には追い風要因になるはずだ。トヨタは買い手にはさらなる「幅広い車種選択」と「手ごろな価格」を、売り手にはより「KINTO販売のメリット」を提供して欲しい。

 

 個人の「モノ」への価値観が「所有」から「利用」へと変化しているだけに、KINTOはやり方次第で普及する可能性はあると思う。