如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

管理職には受難の時代、自ら視野を広げる努力を

優秀な中堅ほど上司を「尊敬できない」根本理由(東洋経済オンライン)

徳谷 智史 : エッグフォワード 代表取締役

 

 有名企業所属で、客観的に見ても実績のあるミドルの方々が、口をそろえて、「上司のようになるイメージが湧かない」と現職でのキャリア形成に疑問を抱く――こんな傾向が強まっているとする記事「優秀な中堅ほど上司を『尊敬できない』根本理由」が1月9日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 

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 著者は、「企業変革請負人」として組織・人財開発のプロフェッショナルを自任する徳谷 智史氏。「世界唯一の人財開発企業」を目指し、エッグフォワードを2012年に設立、代表取締役を務めている。

 

 記事のテーマは、先述のように中堅世代にとって「目標としたくなるような上司が社内にいないので、このままでは自分の将来のキャリアデザインが描けない」という深刻な事情だろう。

 

 確かに現在の管理職である上司は、採用された当時はまだ終身雇用や配属先の部門で「修行」を重ね、40代になってようやく実力が評価され、給与も上昇するという時代を経験してきた。特に歴史のある大企業などではその傾向が強いはずだ。

 

 ところが時代は変わって、終身雇用制度は崩壊、年功序列もそれに続きつつある。現在の管理職が歩んできた「一所懸命」という考え方はもはやミドル世代には通用しないのだ。

 一方で、管理職は自分の成功体験をもとに語るので、「自らキャリアデザインを描きたい」中堅との溝が埋まらない。

 

 記事では、この状況について管理職が「特定の環境でしか働いたことがないため、新たなスキルや知識を学ぶ機会をつかもうとせず、視野が狭くなりがちなこと」を理由として挙げ、「社外との接点を増やし、客観的な視点で自分や今いる組織を見つめなおすこと」を推奨している。

 

 私自身の経験で恐縮だが、30代になって「親会社」に出向となり、全く畑違いの仕事を一から学ぶ羽目になった。今思えば当時は大変な苦労をした記憶があるが、数ある子会社を抱える親会社という立場で仕事をするというのは、グループ全体を見渡せるという意味で勉強になったのは確かだ。

 

 数年後に元の会社に戻れると思っていたら、今度は新設される「子会社」への出向となった。今思えば、子会社での仕事を円滑に進めるための機会として親会社への転出を考えていたようにも思えるが、当時は会社の知名度は全く異なるし、仕事内容もまた一変したが、それまでの経験が、グループ内での企業としての視点から仕事の進め方のツボを押さえた効率的な仕事をする手助けになったことは否めない。

 

 たまたま自分の場合は、当時としては数少ないキャリア事例に当てはまったので、仕事を客観的に見る機会を得たが、同世代の管理職には「経理一筋30年」のような人材も少なくない。

 

 ただし、記事でも「一本道のキャリアが決して悪い訳ではない」と解説しているように、重要なのは「自分のスキルや能力が『世の中一般的にどの程度のものなのか』を知ること」だろう。そのための手法として転職支援企業に登録して、とりあえず自分の社会的かつ客観的な「実力」を知っておくことは有効かもしれない。

 

 政府も「働き方改革」を推進する中で、厚生労働省は就業モデル規則を「副業容認」へと、これまでとは180度方向性を転換している。実際に副業を認める会社も増えつつある。

 これは見方を変えれば、「もう社員を定年まで雇用する制度は維持できないので、将来設計は副業を生かして自分で考えてください」という会社側のメッセージでもある。

 

 有名な大企業でもリストラ対象が40代まで下がってくる時代に、「過去の栄光」にしがみつく管理職に明るい未来はないと思った方がいい。