如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

「高利回り銘柄」を求めるのは必ずしも悪くないが・・・

高配当利回り株に投資する人がはまる落とし穴(東洋経済オンライン)

山崎 元 : 経済評論家

 

 多くの上場企業の決算期である12月が過ぎ、3月が近づいたことで最近の各種株式投資メディアには「株主優待」や「高配当」を特集する記事が増えてきたように感じる。

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 こうしたなか、私が個人的にその正直かつ実践的な投資スタンスの解説を評価している経済評論家の山崎元氏の「高配当利回り株に投資する人がはまる落とし穴」が1月11日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 

 記事の趣旨は「高配当銘柄」に人気が集まる原因の分析と、それに対する山崎氏の見解。

 同氏によれば、この人気の要因として、

  1. 日本株の配当利回りに注目する投資家が増えた
  2. インカムゲインを指向する投資家が、高配当株に注目するようになった
  3. バリュー投資(割安な株式への投資)に取り組む投資家が増えた

 ことを挙げている。

 

 著者のスタンスは、この中で3.については、いわゆる「不人気」銘柄としての観点から「高配当」=「高利回り」銘柄投資には賛成だが、他の2つについては否定的だ。

 その理由として、株式の配当は変動的なもので、その利回りは銀行預金や国債とは単純比較できないこと、利益予想の下方修正でもあれば、株価が大きく下落する可能性を指摘している。

 

 個人的な考えを言えば、著者の意見には賛成だが、その対象は「株式」に限ればという条件付きだ。

 というにも私自身のポートフォリオ構成を見ても、そのほぼ半分はREIT(上場不動産投信)で占められている。その部分の平均予想利回りは4%近い。

 

 確かに「株式」であれば、内部・外部環境の突発的な変化で、黒字予想が一転して赤字になって、株価が大きく下落、配当金も無配になる可能性はある。

 実際に日産自動車(7201)は高配当銘柄で有名だったが、業績の悪化で前期、前々期に1株当たり50円台だった配当金を、今期は「未定」としている。市場のコンセンサス予想も10円台から高いものでも20円台に急落している。スルガ銀行(8358)のように、前期無配に陥る会社も決して珍しい事例ではない。

 

 一方、「REIT」は投資対象が不動産であり、主な収益源はそこから得られる賃貸料収入だ。確かに賃貸料自体も下落の可能性はあるが、現在の物件の稼働率が軒並み90%を超える状況下で、来年賃貸料がいきなり急落するということは考えにくい。

 個人が住む賃貸物件を考えてみても、翌年の家賃が「2倍」になったり「半額」になることはまずないはずだ。

 ましてや「賃貸料収入」が赤字になるということは理論的にありえない。(ただし保有物件の売却によって実損が出る可能性はある)

 

 よって、資産の一部はREITで運用するのが「利回り向上には効果的」と言うのが私の持論だ。当然ながら反論、異論もあるだろうし、他人に推奨するつもりもないので、個々で判断してほしい。

 

 ただ指摘しておきたいのは、REITは昨年その利回りの高さから人気化して、昨年一年間で20%近く上昇した。今後の波乱含みの不動産市況などを想定すると、REITにも銘柄を選別する動きが出る可能性はある。

 私がREITのポートフォリオを組んだのは数年前なので、多少の相場下落には耐えられるが、この相場水準からの新規投資には慎重にならざるを得ないというのが現在の投資判断だ。

 

 最後に記事では、定期的な現金収入が欲しい人には、ネット証券などが最近導入している「定期売却サービス」を推奨している。

 私の利用しているSBI証券の説明によれば、「金額指定」「積立買付」でお買い付けいただいた投資信託(一部投資信託を除く)中から、設定した金額を特定の日に自動的に売却し、年金のようにお受取りいただけるサービスだ。

 ただし、積立買付を設定中の銘柄は対象外で、現金で引き出すには当然ながら銀行口座への「出金」手続きが必要になる。

 

 最近再び人気が復活しつつある「毎月分配型投資信託」よりは、はるかに「まともな」サービスだと思うが、気になったのは売却する投資信託を自分で決める必要があること

 特定の銘柄を定期的に売却するというのは、見方を変えれば著者が記事内でも否定する「ドルコスト平均法投資」の売却版とも言えなくもないのではないか。

 

 毎月一定額を売却するというのであれば、その時点で最も基準価額の評価益が大きい投資信託を自動的に選択してくれるところまで配慮してほしい。

 SBI証券には、全自動で世界レベルの資産運用をしてくれるロボアドバイザー「WealthNavi(ウェルスナビ)」というサービスがあるのだから、それぐらいの仕組みは簡単に提供可能だろう。

 

 ともかく、資産運用で高い利回りを追求するのは間違いではないが、株式の高配当銘柄(株主優待を含む)とREITの配当利回りを同列に扱うのには、株式と国債を同様に扱うぐらい無理がある、というのが私の考え方だ。

 毎月定期的な収入が必要になったら、その時点ごとに利が乗っている銘柄を選択して部分売却するというのが効果的かつ効率的だと思う。