如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

定年後の「資金計画表」は早めの取り組みが吉

会社の「定年後の生き方研修」が役に立たない訳(東洋経済オンライン)

山中 伸枝 : ファイナンシャルプランナー

 

 私事で恐縮だが、年齢は50代後半であと数年で定年を迎える。60歳以降は再雇用制度があるのでそのまま現在の会社に居続けるつもりだが、私のような定年が迫ってきた会社員に向けた記事「会社の『定年後の生き方研修』が役に立たない訳」が16日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

            f:id:kisaragisatsuki:20200116075512p:plain

 著者はファイナンシャルプランナーの山中伸枝氏。公式サイトによれば、2004年にCFPを取得し独立系のFPとして活動を開始、現在は確定拠出年金のプロを育成する山中塾を主宰している。

 

 今回のテーマは、勤め先の会社が開催する「ライフプランセミナー」。私の勤める会社でも50代後半になると開催されて、60歳以降の生き方について講師のお話を聞くことになっている。ちなみに60歳の定年までに合計3回開催されるらしいが、私自身はまだ一度も出席したことがない

 というのは、講師の話す内容がほぼ想定内の内容になることが分かっているので、時間の無駄としか思えないのである。

 

 記事を読むと、以前は定年後の社員が燃え尽きて無気力になったりするのを回避するための定年直前の「たそがれ研修」が主流だったが、現在は対象年齢が低下し、40代を対象にしたセミナーも増え、「(再雇用の)条件に不満がある人は、身の振り方を自分で考えるように」などと「人事担当は口調がきつくなった」ようだ。

 まあ現在の60代後半以降の世代のように、公的年金をベースに一生涯安穏と過ごせる時代ではなくなったので、こういった会社が社員向けににライフプラン研修を実施するのは良い取り組みだとは思う。

 

 終身雇用制度、年功序列賃金が崩壊するなかで、新卒採用した社員の面倒を「会社は定年まで面倒見切れない」ことの証でもあるのだが、現在の50代後半世代には、まだ「定年後は何とかなるだろう」と漠然と考えている人は多いようだ。

 著者は、こうしたセミナーで講師をする際に「老後のキャッシュフローの作り方」を講義するそうだ。

 簡単に言えば、定年後は収入が激減することを前提に、生活費をイメージし、リフォーム、旅行などのイベント費用などを組み入れた25年から30年の資金計画を策定することだ。キャッシュフローでも構わないのだが、言葉としては資金計画表の方がしっくりくるので以降はこの表現を使うことにする。

 

 この資金計画表を作る意味は2つある。一つ目は「漠然としていた老後の資金計画をある程度明確にすること」。もうひとつは「そのために何をすればよいのか考えるきっかけになること」だ。

 昨年の「老後資金2000万円問題」で、老後への資金面の不安が一気に社会問題化した感はあるが、個人的な考えを述べれば、「何をいまさら」というのが率直な感想である。

 リーマンショックさらに言えばその前のバブル崩壊で、会社の社員への対応は大きく変わった。簡単に言えば、会社の視線は「社員」から「株主」へと、具体的には「福利厚生」よりも「配当金」に利益を分配するようになった。この結果、一部の幹部社員を除き、大多数の社員は給料が上がらなくなったのである。退職金の減額傾向も続いている(下図は老後の生活費Webより引用)

f:id:kisaragisatsuki:20200116074930p:plain

老後の生活費Webから

 こういう状況下で、会社任せ、公的年金任せでは安心できる老後が過ごせるはずがない。折しも定年の70歳までの引き下げが義務化される方向が固まり、これに伴い公的年金の支給開始時期が70歳に引き下げられるのも時間の問題。

  雇用が70歳まで確保されても給与は大きく引き下げられるのは確実。私自身の勤める会社でも60歳からの再雇用では、支給額はほぼ半額となる。これを見越して将来設計をするのは、もはや当たり前の話だ。

 政府が「働き方改革」を進め、就業規則モデルが「副業解禁」へと大きく舵を切り、実際に副業を認める会社が増えてきたのも、この流れの一環だ。

 

 ちなみに記事では「家計の収支はいろいろ、大切にしている価値観もさまざまで、生活設計に正解はない」としているが、これは事実で実際に作成する「資金計画表」も個々で違いがあって当然だろう。

 私自身は50歳の節目から、資金計画表をエクセルで作成しているが、項目特に支出の方はかなり大雑把だ。というのもそもそも医療費などは想定できないし、突発的な事案などはその時点の貯蓄で賄うしかないからだ。加えてあまり細かく設定すると、更新が面倒になって止めてしまうリスクも高くなる。

 基本的に更新は毎年2回、ボーナスの時期に見直している。ちなみに「資産」の部分は、パソコンのアプリ「マネーフォワード」を使って金額を管理・転記している。このアプリについては当ブログで昨年8月に「資産管理アプリ『マネーフォワード for <みずほ>』が結構使える!」で書いているので参照して欲しい。

 

 以上をまとめると、会社主催のセミナーに参加するのもいいが、あくまで参考にしかならない。親の介護や子供の教育、家のローンなど家計の事情は様々だ。

 ただ、現時点でわかる範囲内の資産や今後の収支を把握しておくことは、早いに越したことはないと思う。