如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

都会に住む人が田舎に移住するのは「憧れ」に留めた方が無難

田舎暮らしで「失敗する人」と「成功する人」の差(東洋経済オンライン)

滝 和秀 : ジャーナリスト、中東料理研究家

 

 都会を逃れて田舎暮らしに憧れる人は少なくない――こう始まる田舎暮らしの実態をレポートした記事「田舎暮らしで『失敗する人』と『成功する人』の差」が24日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

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 記事は、12日に配信された「40代男性『生活費8000円』田舎暮らしで得た快感」が好評だったことを受けて、その続編という位置づけのようだ。

 

 著者は、ジャーナリスト、中東料理研究家の池滝和秀氏。経歴を読む限り少なくとも「田舎暮らし」の専門家ではない。推測ではあるが、著者が個人的に関心を寄せていた「田舎暮らし」で情報収集していたら、月8000円で暮らしているという実例を聞いて面白いので記事にしたら、予想外のインパクトがあった、という事情が影響しているようだ。

 

 記事の内容はタイトルにあるように、田舎暮らしにあたって成功、失敗する要因を列挙している。

 ちなみに本文中の見出しを挙げると以下のようになる。

  1. 古民家探しの現実は甘くない
  2. 何世代も尾を引いている怨恨
  3. 既成概念に縛られない創造力が必須
  4. 田舎暮らしは意外と忙しい

 の4つだ。

 

 これらの見出しから分かるように、「成功例の紹介」というよりは「失敗しない覚悟」を記事の大半が占めている。要するに、「安易な憧れで田舎暮らしをすべきでない」という警告と言えそうだ。

 

 都会の喧騒に悩まされて、田舎ののんびりとした暮らしに憧れる気持ちは私にも理解できる。テレビ番組で都会から移住して充実した人を取り上げることがあるのも、そういったニーズがあるからだろう。

 

 ただし個人的な考えを言えば、田舎へは「移住」ではなく「仮住まい」をまずは選択すべきだと思う。

 これについては当ブログでも「田舎暮らしに殺されない法 (朝日文庫)」の書評「田舎への移住は自殺行為だ!『住む』のではなく『いいとこ取り』をすべき」で詳しく書いているので参照して頂きたい。

 

 ちなみに書籍「田舎暮らしに殺されない法」では、冒頭から「田舎暮らしに憧れるのは自立の精神が欠如しているため」という、なんとも問題の本質を鋭く突いた指摘から始まる。その後の本書の内容は「本当にここまでやるの?」という田舎での生活の驚きの実態が明らかにされている。

 田舎暮らしを視野に入れている人は一読して損はないはずだ。

 

 私自身は田舎暮らしをする気はさらさらないが、定年後は余暇も増えるので、田舎で自然に囲まれた生活を「一時的」にするのは悪くないと考えている。

 ここで言う一時的というのは短期の仮住まいで、数日から数週間程度の期間だ。つまり田舎暮らしに付きまとう面倒な「付き合い」「慣習」などに関わらず、巻き込まれそうになったらさっさと自宅に戻るなり、別の田舎を探せばよい。

 

 もちろん過ごした田舎が気に入れば、期間を延長して、最終的に移住しても構わないとは思うが、おそらく都会の生活に慣れ親しんだ人をそのまま受け入れてくれる田舎はそう多くはないはずだ。

 参考までに私の親の実家がある田舎には、生まれてから住み続けている同い年の親戚がいるのだが、1年のうち半分の週末は「祭りや催しの会合」で、奥さんまで駆り出されるとこぼしていた。

 

 ブログでも書いたが、都会からの移住が失敗するのは、「よそもの」が田舎社会の内側に入り込もうとする結果、軋轢が生じるのである。外側でお金を払ってくれる「お客さん」であれば、理不尽な警戒や嫌がらせを受ける可能性は低くなるはずだ。

 

 記事では最後に「自然の美や恵みを感じ、今ここに在ることを楽しめる人だけが、田舎暮らしの成功者になれるのではないだろうか」とまとめているが、この境地に至るまでのハードルは相当高い。

 ここでいう「楽しめる」の代償として、受け入れざるを得ない「苦労」の方がはるかに大きいのが現実だと思う。