如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

レジ袋有料化、影響は個人商店に及ぶ?――新年度以降の関連商品に期待

7月からレジ袋完全有料化…安倍政権の「消費増税+キャッシュレス推進」で個人商店廃業(ビジネスジャーナル)

文=小川裕夫/フリーランスライター

 

 2020年7月からレジ袋の有料化が全国一律でスタートする。税金ではないのでレジ袋の価格は全国一律ではないが、スーパー、コンビニ、個人商店など業態を問わず導入されるので、消費者への負担は確実に増える。こうした事態に伴う影響を解説する記事「7月からレジ袋完全有料化…安倍政権の『消費増税+キャッシュレス推進』で個人商店廃業」が26日付けのビジネスジャーナルに掲載された。

 

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 記事では前半で、これまでのレジ袋有料化に向けた自治体の取り組みなどを紹介、後半では「レジ袋有料化は大義名分ばかりが立派で、その内実は面倒なルールが増えただけで終わる可能性が高い」として、その弊害を指摘している。

 

 ビジネスジャーナルが政策批判をするのは珍しい話ではないのだが、今回の記事は「ツッコミ」要素が満載の内容だった。

 

 まず、レジ袋削減策に積極的な自治体として「東京都杉並区」を挙げている。同区は2002年にレジ袋への課税を制定したが、1枚5円という重税感などから結局導入は見送られた。

 レジ袋有料化の事例として引き合いに出すなら、「富山県」の方が適切だろう。同県は平成20年4月1日から県下全域で、要スーパーマーケット及びクリーニング店で、レジ袋の無料配布の取止めを実施している。

 検討したけど導入できなかった「区」ではなく、10年以上前から実現している「県」の事例を取り上げないのは、記者の取材不足と追われても仕方がないだろう

 

 また記事では、「いずれレジ袋の価格競争・サービス競争が起きてしまい、レジ袋削減にはつながらない」と指摘している。

 これについては、昨年12月に公表された経済産業省・環境省の連名による資料「プラスチック製買物袋有料化実施ガイドライン」が参考になる。これによれば「商品価格を値引くことや、ポイントを付与すること、 その他の利益供与を行うことはここでいう有料化に含まない」(p7)、「複数枚のプラスチック製買物袋を提供する際に、一定枚数を有料で提供しつつ、その他の袋は無料で配布するという価格設定方法(例えば、1枚目を無料で配布する等)は、有料化には当たらない」(p8)と定めており、レジ袋を巡る競争は限定されると想定するのが妥当だろう。

 ”いずれにせよ”レジ袋の価格競争・サービス競争は起きない可能性が高い

 

 そして後半では、「地方自治体の商工課などでは、有料化を機に多くの消費者がネット通販に流れて商店街の“シャッター街化”が加速すると懸念されている」としているが、そもそも地元の商店街で買い物をするような地元民は「シニア層」以上が多いはずで、レジ袋の有料化をきっかけにネット通販に切り替えることなどできない「情報弱者」が大半だろう。

 しかも商店街で買い物をするシニア層(特に女性)は、マイバッグやキャリーバッグを持参していて、レジ袋を不要としている姿をよく見かける。考えてみれば、肉、魚、野菜などを個別の商店で買うのだから、いちいちレジ袋に入れてもらうよりも、持参したバッグにまとめて入れた方が効率的だ。

 すでに来客層がシニア以上に限定されている商店街が、レジ袋の有料化で大きな影響を受けることはないだろう。

 

 レジ袋有料化の効果だが、先の資料によれば8ページ目にレジ袋1枚の価格と、レジ袋辞退率の関係図が掲載されていて、レジ袋の価格は2円、3円、5円の3種類に集中しており、辞退率もすべて70%を超えている。有料化の効果は大きいと言える。

 加えて、近年全国の自治体が家庭ゴミ回収にあたって、回収用のゴミ袋の有料化を推進している事の影響も大きいだろう。これまではスーパーのレジ袋をゴミ袋に流用できたが、これが不可能になった。使い道の限られるレジ袋にお金をかける人は減るのは確実だ。

 

 個人的に今回のレジ袋有料化で関心を寄せているのは、資料の3ページ目にある「厚さが 50 マイクロメートル以上の袋は、繰り返し使用することが可能であり、 プラスチック製買物袋の過剰な使用抑制に寄与するものとして、省令に基づく 有料化の対象外とする」という記述。

 具体的にはレジ袋に「この袋は厚さ 50μ m 以上であり、繰り返し使用することが推奨されています」といった記載があれば、有料ではないということなのだが、実物を見たことがないので、判断のしようがない。

 この記述を見る限り、顧客が買い物の都度「繰り返し利用可能なレジ袋」を請求すれば、実質的に「有料化」の効果が低減する可能性はないのだろうか。

 

 ともあれ、全国一斉にレジ袋削減への取り組みが始まるのは良いことである。「レジ袋の使用は年間20万トン程度で、1年間に出る廃プラの2%程度」との指摘もあるが、「何もやらないよりはやった方がマシ」なのは間違いない。

 

 私も通勤の行き返りの途中で、コンビニ、スーパーに立ち寄ることは多いので、対策を講じるつもりだ。

 ただ、新年度入りして有料化の実施時期が迫ってくれば、各種業界が「レジ袋有料化対策」として様々な新商品を打ち出す可能は高い。エコバッグ等が中心になるのだろうが、今年のトレンド、人気商品のひとつになるのは確実だと思う。