如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

不動産屋とは「性悪説」を前提に対応すべき――宅建士資格より営業成績を評価する体質

なぜ不動産には悪徳業者が集まるのか(アゴラ)

岡本 裕明 

 

 言論プラットフォーム「アゴラ」に、1月28日「なぜ不動産には悪徳業者が集まるのか」というタイトルの記事が掲載された。元ネタは岡本裕明氏のブログで、「外から見る日本、見られる日本人」からの転用とのこと。

 

 今回この記事を取り上げるのは、不動産業者というものに対して私自身が個人的に大きな不信感、嫌悪感を持っているからである。

 

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 ちなみに現在、私自身は不動産とは縁もゆかりもない職業に就いているが、学生時代に賃貸専門の不動産屋でアルバイトした経験があり、宅地建物取引士の資格も持っている。ブログではマンションを中心に不動産関連の記事をそれなりの本数を投稿してきた。

 

 一言で言えば、不動産業界に勤める社員に良心を求めるのは、八百屋で魚をくれというのに等しいレベルである。これは大手財閥系、中堅デベロッパー、街中の仲介業者を問わず、すべての不動産会社に当てはまると言っていい。

 

 業界の内情を描いたコミック「正直不動産」を読んで頂くと、いかに「いい加減」で「悪質」かがよく分かる。このコミックについては、私も第一巻をAmazonの書評でレビューしているほか、ブログでも昨年4月に「不動産屋を信ずるべからず。どうしようもない輩がいるのは事実。情報武装して立ち向かうべし」というタイトルで書いているので参照して頂きたい。

 

 アゴラの記事では、「なぜ、不動産には悪い奴らが集まるのか、といえば扱う金額が大きいこと、不動産売買そのものからマネーのにおいがプンプンするため、悪徳な輩が入り込む余地が大きい」と指摘しているが、これに加えて、専門知識のない従業員でも仕事が可能なうえ、業界の体質としていわゆる体育会系の組織が多く、給与体系が「歩合制」の比率が相対的に高いことを指摘したい。

 

 要するに、顧客に対して、「強引な勧誘」、「恫喝や泣き落とし」、「時間差の波状攻撃」など何でもありで、契約を取った者が偉いという絶対的な価値観が業界全体に蔓延しているのだ。

 

 その証拠として、宅地建物取引士(宅建士)の資格を引き合いに出したい。毎年20万人前後が受験する国家試験としては断トツの受験者数を誇る試験だが、合格率は例年15~17%に留まっている。7人に1人しか合格しない訳だが、これを「難関試験」と受け止めるのは間違いだ

 

 実際に宅建士の試験問題を見たことがある人であればわかると思うが、全50問で四肢択一、しかも過去問と類似した内容が少なくないうえに、暗記が必要な項目はあるが分量はさほど多くはない。まともな学習能力を持つ人であれば、半年も勉強すれば、合格することは難しくはないはずだ。

 

 合格点は毎年変わるが、70%つまり35問正解すればほぼ合格できる。試験範囲で言えば「民法」は難問・奇問が毎年いくつか出題されるが、これは大多数の受験生が間違えるので問題にはならない。他の分野でカバーすれば十分に35問は正解できる。

 

 要するに、まともに勉強をせずに会社から急かされて「仕方なく」受験する不動産会社の従業員が多数を占めている結果、見かけ上の合格率が低くなっているだけなのだ。

 

 ではなぜ勉強もしない社員が宅建士試験を受験させられるかと言うと、法律で事務所には従業員5人につき1人以上の宅建士資格保有者が必要とされているからだ。というのも「いざ契約」となると、顧客への説明が義務付けられている重要事項説明を行えるのが宅建士に限られているのである。このため資格保有者は多いほど契約がスムースに進むという効果がある。

 

 逆に言えば、顧客との交渉で契約の意志を確認して契約に結び付ける直前までは、宅建士の資格がなくても問題はない。つまり資格がなくても不動産の営業活動が可能なのである。

 

 このような状況下では、資格の有無よりもセールストークや営業活動がうまい従業員の方が評価されるし、給料も高くなるのは当然と言える。現場の営業マンにすれば「資格取得」よりも「セールス」に力が入るのは当然だ。

 

 現在、物件を探している人にアドバイスするとすれば、担当者に「宅建士の資格を持っていますか?」と聞いてみることを勧める。かなりの確率で持っていないはずだ。私の経験では、超大手財閥系の営業担当者の名刺を受け取った際ですら、宅建士の名称が入っていなかったことがある。

 

 時間的に余裕があるのであれば、物件購入の前に宅建士の資格を取ることをお勧めする。先に書いたが真面目に半年勉強すれば取得できるレベルの資格である。

 モデルルームなどで担当者との出会い頭に宅建士の資格証を見せると、その効果は絶大だ。相手が資格保有者であっても、言葉遣いには慎重になるし、仮に資格がない担当の場合は、かなりの確率で顔色が変わって奥に引っ込み、別の担当者か上司が対応することになるはずだ。

 つまり当初の担当者が「通常のいい加減な対応では自分のペースに持ち込めない客」ということを本能で察知するのである。これは買い手にとっても「まともな」営業マンに担当してもらえるというメリットがある。

 とは言え、逆に警戒されて「ぞんざいな扱い」を受けることがあるかもしれないが、そんな不動産屋はロクでもないのは明白なので、こちらから願い下げた方がいい。

 

 以上をまとめると、不動産会社の営業社員に対しては「性悪説」を前提に対応するべきだ、ということだ。もちろんすべての営業担当が悪人だとは言わないが、不動産は金額が大きい取引だけに失敗した場合のダメージは大きい。相対する担当者は慎重に選んだ方が間違いないと思う。

 

 そもそも、例え資格はなくても物件や取引に関して相手は営業の「プロ」である。一方、顧客であるこちら側は、情報や経験で圧倒的に不利な「素人」の立場にあるのが不動産取引の実態なのだ。

 こうした状況に対応するには、こちらが情報武装して相対するしか手はないと思った方がいい。