如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

恋愛をリスクと考える20代が急速に増えている現実

「交際経験がない」20代男性は約4割という現実(東洋経済オンライン)

リクルートブライダル総研

 

 20~30代の若者は、どんな恋愛をしているのだろうか?――私のような50代後半のサラリーマンには直接関係のない話だが、現代の若者の恋愛観を知るのには参考になる記事「『交際経験がない』20代男性は約4割という現実」が2月16日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 

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 記事は、結婚情報誌サービス『ゼクシィ』を企画運営する株式会社リクルートマーケティングパートナーズにおける調査・研究機関であるリクルートブライダル総研が実施、分析している。リクルートというのが個人的にはやや引っ掛かるが、元データ「恋愛・結婚調査2019(リクルートブライダル総研調べ)」自体はまともな内容だと思えた。

 

 記事では、「現在恋人のいない人」が67.9%、この恋人がいない人たちが「恋人が欲しい割合」は56.2%で、逆に「欲しくない人」は20.7%となっていることの紹介から始まる。

 まず「現在恋人のいない人」についてだが、同社が前回2015年に行った同調査では、この比率は男性で80.3%、女性で67.1%だった。今回は男性が73.2%で、女性は67.1%だから、男性は7ポイント近く低下した一方で女性は変わらずとなっている。

 

 「恋人がいない人の割合は約7割」と書いているが、これは間違いではないが、「男性の恋人持ちが7ポイント近く増えた」ことに触れないのは、やや意図的な感じがしないでもない。まあ記事全体のトーンが「なぜ恋愛しないのか」だから仕方がないのかもしれないが。

 

 次に「恋人が欲しい割合」だが、これは前回の調査項目にはない。ここで記事は「欲しくない人」の方にスポットを当てて検証している。過去との比較ができないので傾向はわからないが、個人的な感想を言えば、「恋人が欲しい人」が過半数を占めるのは普通に考えて当たり前の話なので、「欲しくない人」を取り上げるのは妥当だろうし、結果への関心も高いと思う。

 

 では「恋人が欲しくない理由」だが、調査によれば「1人の方が気楽だから」「恋愛が面倒だから」「好きな人がいないから」が性別、年齢別ともにトップ3となっているのだが、これは合点のいく結果だ。

 記事では「自立をベースとした『個』の時代になった。またその中でも、恋愛は、自分だけでハンドリングできることは少ない」と見立てているが、これは正しい見方だと思う。

 

 また、今回の記事の特徴は、年代別に恋人が欲しくない理由のなかで、20代で突出して割合が高い項目に「交際するのが怖いから」ことを挙げている点。確かに40代が6.5%、30代が11.6%に対して20代は22.9%とその数字の高さは顕著だ。

 元資料のアンケート結果の方にも記載はあるが、これは若者の「リスク回避志向」であることは間違いなさそうだ。「経済的にも政治的にも自然環境的にも不安定さがある中で生きている年代にとって『安定』は価値である」というのは説得力がある。つまり恋愛によって、「面倒」で「気楽でなくなる」という不安定要因を避けるのは合理的な行動だ。これは年々進行する「非婚化」の一因のひとつでもあるだろう。

 

 記事では後半で本論ともいえる「恋人は欲しいが、今はいない」という人に焦点を当てている。この理由のトップ3は、

   1、出会いがないから(53.4%)

   2、異性との出会いの場所がわからないから(35.7%)

   3、異性に対する魅力に自信がないから(32.5%)

となっている。

 

 この傾向について記事では「昨今、婚活サービスが急激に拡大しているのは、このような状況の中、自分の条件で効率的に相手を探し、出会える機会を提供している仕組みが広がったことが背景にあるだろう」と分析しているが、やや自社メディア「ゼクシィ」を意識した我田引水的な側面は否めないが、この「利便性の向上」が寄与している傾向があるのは確かだとは思う。

 

 これに続く内容は「恋人が欲しい人は具体的に何をすればいいのか」というもの。結論を引用すれば「自律的に自ら行動して出会いをつくりにいくことがカギ」ということなのだが、その後に「昨今マッチングアプリや婚活サービスなどもかなり充実。今や4人に1人が婚活サービスの利用経験があるという調査結果も出ている」というのは、どうにも婚活ビジネスへの「お誘い」に見えてならない。

 そもそも、今回のテーマは「恋愛」であって、「結婚」ではないはず。「婚活サービスの利用経験」を引き合いに出す時点で、論点がズレているし、意図的なモノを感じる

 

 以上から私の結論をまとめると、アンケート結果から参考になったのは、男性は恋人のいない人は減っているということ、そして恋人が欲しくない理由が「恋愛」を煩わしいものと考える傾向に変化がないこと、若い世代は恋愛をリスクと捉えていること――3点だ。

 

 これに加えて私自身の感想を言えば、「個」を重視する時代という指摘は間違ってはいないが、ここで言う「個」は「孤立」「孤独」のようなものではなく、「個性」を生かしたいという意識だろう。

 実際に、世の中の風潮を見る限り、「おひとり様」も志向も根強い一方で、趣味やライフスタイルに合わせた小規模な「集まり」も人気を集めている。

 またその実態も、「恋愛」を意識したものではなく、気の置けない「友人」としてコミュニケーションを楽しんでいるように思える。気の合う仲間と共通の話題で盛り上がればいいのであって、そこに「恋愛」は必要不可欠なものではないのだろう。

 

 記事では最後に「普遍的に大切なことは、恋愛を楽しんで相手との時間をかけがえのないものにすることだろう」と結んでいるが、20代が「恋愛をリスク」と捉える傾向が強まっている中で、この言葉が若い世代の心に「突き刺さる」とは思えない。

 

 残念ではあるが、恋愛というリスクの回避⇒恋愛経験の減少⇒非婚率の増加⇒少子化の進展、という流れは「加速」することはあっても「減速」することはないだろう。