如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

英BBCは課金制へ、NHKも「スクランブル化」は必然の流れ

BBCの「受信料廃止」はどこまで現実的なのか(東洋経済オンライン)

小林 恭子 : ジャーナリスト

 

 221日付けの東洋経済オンラインに「BBCの『受信料廃止』はどこまで現実的なのか」というタイトルの記事が掲載された。

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 内容を要約すると、日曜紙のサンデータイムズ(216日付)の記事を引用し、「イギリス政府はBBCのテレビ・ライセンス料(日本のNHKの放送受信料に相当、以下「受信料」)を廃止し、希望者のみが視聴料を払う課金制(サブスクリプション)の導入を視野に入れた見直し作業を始める意向」との報道をもとに、現地での反応を中心にレポートしている。

 今回は、BBCと同様に国営放送であるNHKについて日頃から思っていることを書いてみたい。

 

 まず個人的な見解を先に述べると、NHKの受信料の強制的な徴収制度は直ちに廃止し、見たい人だけが契約する方式に変更、契約者のみが番組を視聴できるスクランブル方式を採用すべき、ということだ。

 

 これは昨年話題になったN国党NHKから国民を守る党)の意見と同じなのだが、私自身は30年以上前から主張しており、受信料契約締結を求めるNHKの担当者が自宅にくる都度、「見たくない人にまで支払わせる制度自体がおかしい。スクランブル化すれば済む話」という論法で「撃退」してきた。

 それでもしつこく食い下がる人には「文句があるなら裁判になっても構わないので訴訟しろ」とまで言い切ったことがある。実際に訴えられたことはないが。

 

 ただし、誤解のないように言っておくと、現在は受信料を自動引き落としで支払っている。というのも平成29126日に最高裁判所大法廷が判決の裁判趣旨で「日本放送協会の目的にかなう適正・公平な受信料徴収のために必要な内容の,日本放送協会の放送の受信についての契約の締結を強制する旨を定めたものとして,憲法13条,21条,29条に違反しない」と結論付けたためである。

 

 それまでは裁判で決着していないとの理由から支払いを拒絶してきたが、判決に不満があるとはいえ「最終決着」した以上、国民の義務として支払わざるを得ないとの判断からだ、悪法であっても確定すれば従わざるを得ない。

 ということで30年以上支払いを拒んできた者としては忸怩たるものがあるが、その後徴収員が人の家のポストに無断で受信契約者のシールを貼っていたのには「怒り」を通り越して「呆れた」。個人の所有物に勝手に加工するのを問題視しない非常識ぶりに、「これは相手にするだけ時間のムダ」と悟った次第である。

 

 本論に戻るが、そもそもNHKが根拠とする放送法自体が昭和25年という69年も前に制定されたこと自体がすでに「時代遅れ」だと言いたい。当時はテレビ自体がまだ一般家庭に普及していなかったので、所有者全員を徴収対象とするのは問題ではなかったのだろうが、現代は全世帯に普及するのを通りこして、テレビを見ない人が増えているのである。

 さらに言えばNHKは、携帯電話、スマホやカーナビでもテレビが視聴できれば課金の対象に対象にする意向のようだが、こうなるともやは「時代錯誤」も甚だしいレベルだ。自宅で契約していれば二重契約する必要はないらしいが、どうやって個別に契約の有無を区別、判断するのかその方法を聞いてみたいものである。

 

 スクランブル化についてのNHKの見解は、簡単に言えば「一見合理的に見えるが、NHKが担っている役割と矛盾する」ということだ。さらにWebサイトでは「スクランブルを導入した場合、どうしても『よく見られる』番組に偏り、内容が画一化していく懸念があり、結果として、視聴者にとって、番組視聴の選択肢が狭まって、放送法がうたう『健全な民主主義の発達』の上でも問題があると考えます」としている。

 

 もっともらしい意見に見えるが、まず「よく見られる番組に偏り」というのが手前味噌である。そもそも公共放送としてしっかりとした自覚があれば、このような考えにはならない。番組の編集方針を明確に定めておけば済む話である。

 さらに言えば、一介の放送局ごときが「健全な民主主義の発達」などと偉そうに宣うこと自体が、ちゃんちゃらおかしい。自分たちを何様だと思っているのか勘違いも甚だしい。

 

 また、「緊急災害時には大幅に番組編成を変更し、正確な情報を迅速に提供する」という重要性は理解できるが、これはスクランブル化とは無関係のはずだ。緊急時にはスクランブルを外せば済むだけの話である。そこに費用がかかるというのであれば、災害対策費として政府や自治体が負担すればいいだけだ。

 

 スクランブル化のメリットは他にもある。最も大きいのは戸別訪問で、訪問集金は平成20年に廃止されたが、未契約者への訪問活動などは継続されている。こうした業務に関わる人員がすべて不要になれば経費が大きく削減されるのは間違いない。全国に現在どの程度の人数がいるのかすぐには調べられなかったが、数百人程度といったレベルではないだろう。

 

 NHKを視聴したい人が受信料を支払い、見たくない人には視聴できないようにして何が問題なのだろうか。NHKには「受益者負担」という概念が欠けているとしか思えない。

 冒頭の英国のBBCの受信料制度が今後どのような経緯をたどるのか、そしてNHKにどのように影響するのか、しっかりと注視していきたい。