如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

コンビニの店舗指導員は時代遅れ――製薬会社のMRを参考にしては?

コンビニ本部の店舗指導員が転職市場で全く評価されない理由(ダイヤモンドオンライン)

ダイヤモンド編集部 岡田悟

 

 若者が入社後数年で転職するのが常態化し、会社のリストラ対象年齢も低下する一方。こうしたなかで、34日付のダイヤモンドオンラインに「コンビニ本部の店舗指導員が転職市場で全く評価されない理由」というタイトルの記事が掲載された。 

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 記事は、今週初内になった週刊誌の特集『コンビニ搾取の連鎖』に入りきらなかった内容とのことで、「転職」がテーマになっている。

 折しも、大手コンビニのファミリーマートが大規模なリストラを打ち出し衆目を集めたが、コンビニ各社の内情ではなく早期退職した人たちの転職市場での実態に触れている。

 

 個人的な結論から言えば、「自分で物事を考えない人が転職で苦労するのは当たり前」ということだ。言い換えると、個人のスキルで優位性がなければ仕事を見つけるのは難しい、ということ。

 

 記事で取り上げる転職者の中心となったのは、店舗と本部を結びつける接点となる「店舗指導員」だ。各種チェーン店に存在するスーパーバイザーといった方が一般的かもしれない。仕事としては、オーナーの意向と本部の方針の折り合いをつけて、店舗の経営改善の改善を図ることが目的の「アドバイザー」と言っていいだろう。

 

 ところが実態は、本部の意向を受けて販売ノルマをそのまま店舗に押し付けるだけの「メッセンジャー」というのが実態だったようだ。最近話題になった「商品の無断発注」もこれが原因だろう。

 

 一般的なイメージとしては、コンビニは本部が儲けて、店舗のオーナーは休日返上、家族ぐるみで店舗経営を行い、利益もたいして出ていない、という「本部と店舗」の対立という構図で見られていたと思うが、実際にはその本部にも、本社勤務と店舗指導員の2種類の社員がいて、店舗指導員が間に挟まって無責任や無理な仕事をしたようだ。

 

 店舗経営の実態は雑誌を読んで頂くとして、今回のテーマは今回大量に退職した店舗指導員の動向である。これも結論から言えば記事にもあるが一般的には「個人の課題解決能力がない職種とみなされ、同業以外では未経験扱いになる」という低い評価しか得られないようだ。もちろん中には優秀で的確な店舗指導をする者もいるのだろうが、全体としては低評価なのは事実だろう。

 

 その理由として、本部の決めた経営計画に何ら疑問を持たず、顧客である店舗オーナーの事情を汲み取れなかったことが挙げられる。本来は店舗ごとに購買層、売れ筋商品や多忙な時間帯などは異なるはずだし、近隣の他社、他店舗との差別化も図らなければいけない。言われたことを「そのまま」伝えるなら、本部が直接メールなどで店舗オーナーに連絡した方が合理的で正確だ。

 

 そうは言っても現実には店舗指導員は「本部の意向には逆らえない」というのであれば、裁量の権限がなく、担当する店舗にそぐわない商品を売り付ける仕事を続けるぐらいなら、さっさと別の業態に転職した方がキャリアの向上にも繋がる。その方がよっぽど「現実的」な対応ではないか。

 

 しかも業態としてコンビニ市場はもはや飽和状態にある。120日の付けの読売新聞オンラインでは「コンビニ店舗数、初の減少…大手は新規出店抑制に」として集計を開始した2005年以来初めて年末の店舗数が減少に転じたことを伝えている。

 ちなみにJFAコンビニエンスストア統計調査月報(1月度)によれば、今年1月も店舗数は来店者数とともに前年同月比で減少している。

 

 話は戻るが、では具体的にどうやってコンビニの店舗指導員の体質を改善させるか。

 ここでは似たような仕事として、製薬会社の医薬情報担当者(MR)を挙げてみたい1960年代までプロパーと呼ばれた製薬会社の営業担当者は当時、医者や病院への医薬品の売り込みが仕事で、接待、贈り物は当たり前だった(未確認だが医師の家庭の犬の散歩まで請け負ったという話も)。この背景には、製薬会社間のシェア獲得の熾烈な競争があったのは言うまでもない。

 これらの接待の実態があまりにも常軌を逸したレベルに達し、しかも常態化したことで、世間の批判を浴びることになり、日本製薬工業協会(製薬協)は自主規制のルール作成に取り組み、プロパーはMRへと名称を変更、その仕事も「薬の販売促進」から「薬の情報提供や情報収集」へと変化した。本来なすべき仕事に戻ったのだ。

 

 高圧的な態度でコンビニ店主に商品陳列を強要する店舗指導員と、接待で医師や病院に揉み手で取り入るプロパーでは立場は大きく異なるが、会社上層部の意向を受けて、重要な顧客ニーズを無視した営業活動を行うという点ではどちらも「似たようなもの」である。

 

 現在は24時間営業や無断発注などの問題でコンビニ本部への批判が根強いが、これを機会に「本部社員」だけが旨い汁を吸うのではなく、「店舗オーナー」「店舗指導員」「顧客」も納得のいく構図に変化してほしい。業態としては伸びやなんではいるものの、すでに社会インフラのひとつとして認識されているのは間違いないからだ。

 

 そのためには現在の店舗指導員が本部の方針しか見ていない体制を抜本的に変える必要がある。引き合いに出した製薬会社のMRは、業界の自浄機能で「営業体質」が改善された手本のひとつになると思うのだが。