如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

障害年金を本人が「申請」するのは難易度高レベル

社労士に依頼するのもアリだが・・・

 障害年金は、国民年金や厚生年金を支払ってきた勤労者にとっては、病気やケガで仕事ができなくなった際に収入面でとても頼りになる「保険」のようなものである。

 年金という名目にはなっているが、実際には障がい者となった場合に申請、受給できるもので、一定の年齢に達すれば自動的に受け取れる「老齢年金」とはまったく概念が異なるものだと言える。 

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 私の昔からの友人で、うつ病にかかって障害年金を申請したが受理されず、私が相談に乗って申請の手伝いをして何とか受給できるようになった人がいるのだが、やや古い記事でなぜか3月15日のプレジデントオンラインのトップページに「うつ女性『月6.5万円の障害年金』再開への執念」という記事が掲載された。

 

 記事の趣旨は、30代の女性が20代からうつ病で引きこもり状態となり障害年金を受給していたが、更新時に提出した医師の診断書が原因で受給停止となってしまう。母親が困って社会保険労務士である著者に相談し、問題の解決を図るという内容だ。

 

 私の友人の場合は「新規申請」、記事の事例は「継続申請」という違いはあるのだが、申請が受理されなかった経緯が似ているので、参考までに私の個人的な経験として、「障害年金」を申請、受給するまでの流れを紹介したい。うつ病で会社を休んでいる人や休む予定で障害年金を申請しようと検討している人にとって多少なりとも役に立てればと思う。

 

 まず最初に言いたいのは、「障害年金の受給のハードルは想像以上に高い」ということだ。

 これは極端な事例なのかもしれないが実際に友人が年金事務所に障害年金の相談に出向いた際に窓口で言われた言葉に「本人が年金事務所に自分1人で来れるぐらいなら障害年金は不要では?」があったそうだ。

 

 この指摘はうつ病で苦しんでいる状況で、気力と体力を振り絞って相談した本人にとっては、かなり堪えたらしい。本人曰く「まずは水際で申請を受け付けないようにしようという意図が感じられた」とそうだから、巷で言われる市役所の窓口で生活保護申請をするのと似たような状況だったと想定される。

 

 とは言え、本人は苦労して出向いたので何とか申請の意思表示をして必要な書類一式を書かれた案内書を受け取ってきた。必要な資料には戸籍謄本など比較的容易に取得できるものもあるのだが、申請にあたって問題になったのは「医師の診断書」と「病歴・就労状況等申立書」の2点だ。

 

 障害年金関連の各種案内サイトにも書かれているが、他の書類に不備がなければ申請が受理されるかどうかはこの2点で決まると考えていいだろう。特に医師の診断書は決定的な要因になるようだ。

 当然ながら精神科や心療内科の医師に書いてもらう訳だが、この医師の障害年金申請のための診断書記載の「経験の度合い」によって、同じ症状でも申請書の受理されるかどうかが決まるのである。

 

 具体的な内容には詳しく踏み込まないが、日常生活の状況や、就業の可否などを段階評価するのだが、これらが一定レベル以下の評点でないと「障害年金支給に該当しない」と判断される仕組みになっている。この評点の仕掛けを理解していない医師に診断書を任せると、当然ながら不受理の可能性が当然ながら高くなる。

 

 友人の場合は、家庭での日常生活や就業には困難な側面が大きいのだが、診察を受けるために病院に行く際には数日前から体調を整えて、ある程度普通の会話ができるような状態であったうえ、障害年金申請の診断書に不慣れな医師だったことで、「見た目のまま」診断書が書かれたことが、不受理の要因のひとつになっていたと思われる。

 

 そこで私が本人からの相談を受けて診断書の項目を確認、現在かかっている医師では内容の大きな変更は難しいと考えた結果、本人とも相談のうえ障害年金に精通した精神科のクリニックを紹介、受信当日は普段の状態のまま行かせるため私も病院に付き添い、病状などで本人がうまく説明できない部分については補足説明して、診断書作成の手伝いをさせてもらった。

 

 もうひとつの問題は「病歴・就労状況等申立書」だ。こちらも私が資料の作成を手伝ったのだが、初診日から現在に至るまで通院したすべての病院・診療所を時系列で1日も欠けることなく、病歴や症状、投薬などの履歴を書く必要がある。

 

 友人の場合は、医師との相性の問題などもあって心療内科などを10年近く転々としたので、記憶が定かでなく「切れ目なく」履歴を書くのは困難を極めた。

 私も通院歴などを調べる手伝いぐらいはしたかったのだが、病院側は個人情報保護の問題もあって、本人でないと教えられないと言うし、本人に治療履歴を書面で請求することを要求するところも多く、申立書に必要な資料が揃うまでに数カ月を要した。

 

 しかも、病歴と症状の履歴には一貫した整合性がないと受理されないらしいので、本人が取り寄せた資料から書いた内容を私が確認して、矛盾がないかどうかを確認するのにとても苦労した。

 幸いだったのは、履歴の記載にあたって「手書き」ではなく「ワープロ」文書の切り貼りでもOKだったことで、これは非常に助かった。これが本人の手書きしか認められなかったらと思うと恐ろしい。

 

 申請から数カ月してようやく無事に受理され、障害厚生年金3級が受給できるようになった。本人が言うには「自分一人ではとても承認されなかっただろう」と感謝されたが、これは本音だと思う。当然だが私は一切の報酬を受け取っていない。あくまで友情から手助けをしただけであって、申請が受理される確信はなかったからだ

 

 記事のように社会保険労務士に頼む手もあるが、成功報酬として年金額の2か月分ぐらいは請求されるので貯蓄が乏しい人には厳しい面もあるし、昨今は障害年金申請をウリにする社労士も増えて、手際の良さなどの対応が玉石混交になっているとも聞く。

 

 ノウハウがあって良心的な社労士に出会うのが最善だとは思うが、どうにも自分では手掛けられないという重症でない限り、ダメもとで一度自分で申請書類にチャレンジしてみる価値はあると思う。自分の病歴を改めて振り返ってみるのも、現状認識と今後の治療方針の指針になるかもしれない。

 

 繰り返しになるが、最も重要なのは障害年金の申請に精通した医師に「診断書」を書いてもらうことで、次が「病歴・就労状況等申立書」をいかに整合性のとれた説得力のある内容にするかだ。

 本記事のタイトルとは矛盾するようだが、この2点をクリアできれば、障害年金の受給は決してクリアが厳しい「難敵」ではないはずだ。