裏ではびこる主催団体のエゴイズム
3月18日のブログで「オリンピックが「中止」ではなく、来年か再来年に「延期」される可能性が高いと思われる」と書いたが、24日付けの日本経済新聞電子版では「東京五輪1年程度延期、21年夏までに開催 首相とIOC会長」と報じられており、予想通りの結果となりそうだ。
株価はこの「延期」の方向性に反応したのかどうかは不明だが日経平均は急伸、7営業日ぶりに1万8000円台を回復している。ニューヨークなど他市場に比べて、下げ渋り感は強い。ここ数日米国株が急落、急伸しても、翌日の東京市場が反対の値動きをする傾向が目立っており、海外相場との連動性は弱まっているようにも見える。
もっとも「延期」が確定となればまた違う動きが出る可能性もあるし、そもそも株価急落の主因である新型コロナウイルスの収束見通しが欧米を中心に立たない以上、株価は当面波乱含みの可能性が高い。
日本株の値動きが海外相場の影響を受けにくくなっていると書いたが、一方で、日本人の間では海外の権威を必要以上に崇め、評価する向きが多いように常々感じている。
具体的には、「オリンピック」「国際機関」「ノーベル賞」の3つだ。世界中の国々を対象にした活動を否定する訳ではないが、日本ではこの3つに対する絶対的な評価が高すぎると思う。以下にその理由を挙げてみたい。
まず最近最も話題となっているオリンピックだが、私の言いたいことが簡潔にまとめられているサイト「『日本人アスリート』差別の『ルール改定』の横行」を読んで頂きたい。この他にも水泳に特化した記事「実はルール違反ではなかった!?『潜水泳法』の複雑な国際事情」でも、欧米各国に有利なルール改定を行い、日本人を差別している実態を明らかにしている。
主導権を欧米各国から選出された委員が握っているためだろうが、ここまで露骨に差別されると「怒り」を通り越して「呆れ」てしまう。
同じスポーツでも、テニスの全英オープン・ウインブルドンは、開催国の英国では男子シングルスは1936年以来80年以上英国人の優勝者が出ておらず、自国選手を優遇するような動きがないのとは対照的だ。イギリスも単独ではフェアな立場を維持するも、欧州各国が集まると欧米以外を排除するという「仲間意識」強まるのだろうか。
次に国際機関だが、最近悪評で名高いのは世界保健機関(WHO)だろう。テドロス事務局長は3月12日にようやく新型コロナウイルスについて「パンデミック(世界的な大流行)とみなせる」と表明したが、その約1カ月前には産経新聞が「批判呼ぶテドロス事務局長の「中国擁護」 背景にWHOと中国の蜜月の仲」として批判記事を掲載、テドロス氏が1月22、23日に開催された緊急委員会で緊急事態宣言を見送ったことで、中国寄りの姿勢が各国のメディアで批判された、としている。
各メディアの報道を読むと、同氏が中国から巨額インフラ投資を受けるエチオピアの元保健相・外相だったことが影響しているとの見方が大勢だ。
中国がアフリカへの多額のインフラ投資を行い、各国への経済的な影響を強めていることは周知の事実だし、今回の中国への配慮もその一環と考えれば納得がいく。
最後がノーベル賞だ。毎年10月頃になると日本人が受賞するかどうかが話題となり、受賞者が出れば大いに世間が盛り上がるのは恒例になっている。
確かに世界的に評価されるような研究は発明をしたのであれば立派だと思うし、その「功績」にケチをつける気はさらさらない。
私が指摘したいのは、過去の受賞者の「国籍」である。
文部科学統計要覧(平成31年版)から引用
世界中から優秀な技術者を集めて、最新かつ高度な研究を進めるアメリカがトップなのは当然だろう。図表では黄色で色付けしたが、スウェーデンが5位というのに違和感を感じないだろうか。
長らく経済大国である日本が経済学賞を一度も受賞していないのに対して、スウェーデンはすべての分野で2回以上受賞している。しかも受賞資格がはっきりしないと言われている平和賞は5回、これも上位5番目の多さだ。
科学技術は専門外なので間違った認識なのかもしれないが、自然科学分野の研究でスウェーデンが、ロシアやカナダよりも世界的に大きく貢献しているというイメージはない、というのが一般的な受け止め方ではなかろうか。
ウィキペディア(Wikipedia)によれば、選考は「物理学賞」「化学賞」「経済学賞」の3部門についてはスウェーデン王立科学アカデミーが、「生理学・医学賞」はカロリンスカ研究所(スウェーデン)が、「平和賞」はノルウェー・ノーベル委員会が、「文学賞」はスウェーデン・アカデミーがそれぞれ行う、とされており個人的な見解だが、スウェーデンが受賞者の選考で大きな影響力を持っていることが影響しているのは間違いないだろう。
以上「オリンピック」「WHO」「ノーベル賞」の3つを取り上げたが、どれにも共通するのは主導権を持つ勢力の意思とエゴイズムが大きく働いているという点だ。
個人的にはオリンピックのメダリストやノーベル賞の受賞者には大きな敬意を払っている。ただ、日本人はメディアの影響もあるのだろうが、その裏で露骨な「身内びいき」が存在していることに、多くの日本人は気づいていないのではないだろうか。
世界的なイベント、組織、表彰だからといった理由で、その実態を知ろうともせず必要以上に「美化」するのは、そろそろやめた方がいいと思う。
今回のWHOの中国擁護の姿勢が世界中で報じられたことで、その権威が大きく失墜したのは確かだ。これを契機に他の世界的に認知度が高い分野でも、その本当の姿を見極める動きが出てくることを期待したい。