如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

雇用、賃金の減少はこれからが本番、株価は2番底を模索へ

緊急事態宣言は今後の景気悪化を決定づける

 

 7日夕方に政府が緊急事態宣言を発令した。本ブログでも4月1日に「東京、『都市封鎖』は不可避の様相に――買い溜めは回避すべきも長期戦を覚悟」と書いて、個人的に3つの条件を挙げたが、そのうち「47都道府県すべてへの感染者確認」はクリアせず(岩手、島根、鳥取の3県は感染者なし)に実施されることになった。もっとも正しくは「都市封鎖」ではなく「緊急事態宣言」だったことはお詫びし、訂正したい。

 

 緊急事態宣言については、様々なメディアやSNSで語られるであろうから、ここでは本ブログの趣旨から在り来たりのことは書かない。

 今回私が意見したいのは、どうにも世の中が「新型コロナウイルス禍の影響を過小評価しているのではないか」と思われることだ。その対象は「賃金」「雇用」「株価」である。

 

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 これから影響が顕在化すると思われるものに「雇用」と「賃金」がある。厚生労働省が調査している「毎月勤労統計調査」の最新発表は4月7日発表の2月分だが、これを参照してみたい。

 

 まず賃金だが、主に正社員である一般労働者の現金支給総額は前年同月比0.4%増だが、このうち所定外給与は同1.2%の減少となっている。残業代の減少が主な要因と思われるが、これが3月以降はコロナ禍の影響でさらに減少するのは確実だろう。

 さらに言えば4月からの働き方改革で「同一労働同一賃金」が大企業に適用され、正社員の家族手当や住宅手当などが軒並み廃止される。これはおそらく所定内給与(同0.5%増)を直撃する可能性が大きい。

 この結果、一般労働者の賃金(現金支給総額)は早ければ3月以降減少に転じ、4月以降はさらに減少を続ける公算が大きい

 

 一方、雇用の40%近くを占めるとされる非正規雇用者のなかで統計にあるパートタイム労働者(31.58%)を見ると、その見通しはさらに暗い。

 現金支給総額こそ前年同月比1.1%の増となっているが、残業代が中心の所定外給与は同7.5%の減少となっている。しかもこれはコロナウイルスで顧客や売り上げの減少が顕著になる前の2月の統計値だ。消費者の外出などの自粛が始まった3月、緊急事態宣言が発令された4月にどうなるかは想像すらできない。

 

 次が雇用。総務省の労働力調査(基本集計)によれば、最新のデータは今年1月。何とも古いデータだが、これによれば就業者数、雇用者数ともに85カ月連続で増加と7年以上の拡大が続いており、これは安倍政権の経済政策の効果と言っていいだろう。もっともこの連続記録も2月か遅くとも3月で途切れる可能性が大きい。

 一方、完全失業率(季節調整済)は2.4%で前月比0..2ポイントの上昇となり、これは過去2年間でのピーク2.5%に近い水準。このなかで小売り、外食、レジャーなどの業種は非正規雇用の比率が高く、経営者が売り上げ減少に伴うコスト削減で真っ先に手を付ける対象になりやすいのは周知の事実だ。

 

 しかも安倍首相は7日の衆院議院運営員会で「緊急事態宣言で営業休止を求められた事業者などへの損失補塡(ほてん)について「現実的ではない」と否定した」と朝日新聞デジタルで報じられている。3月以降の売り上げ減少で、雇用者が会社生き残りのために非正規労働者を中心に解雇に動く可能性は相当高いだろう。

 

 ここ数年2%台に留まっている完全失業率は今後急速に上昇、1948年以降の最大値である2002年の5.4%に近づくこともあると個人的には想定している。(データは独立行政法人労働政策研究・研修機構

 

 最後が株価。コロナウイルスの兆しが出る前の1月の日経平均は24000円台で、ここから3月18日には1万6000円台前半まで急落した。

 ちなみに当ブログでは、3月18日に「株価の暴落は一時的なもので、日経平均は年内にも2万円台を回復すると想定している」と書いた。

 

 この見通しは今でも訂正する気はないのだが、気になるのは戻りピッチの速さだ。3月25日に19000円台の回復したのは、急落への一時的な反動で説明はつくが、4月7日の終値18950円(高値は1万9162円)はちょっと理解できない。         

    

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 市場では、出渋られていた緊急事態宣言が出ることで、「アク抜け」を意識したとの見方があるようが、今後雇用、賃金などの悪化が鮮明になり、景況感が悪化するの確実。私が年内に2万円台を回復といったのは、コロナウイルス感染拡大の世界的な収束が見え始めたことを前提にしており、その時期は早くても年後半おそらく10月以降になるはずだ。

  今この時期に2万円台近くまで回復するのは、市場がコロナウイルスの影響を楽観視し過ぎていると感じる。

 

 いくら政府が事業継続のための目先の資金繰りを手当てしたところで、本業が回復する見通しが立たないのだから根本的な解決策にはならない。

 特に自転車操業で事業をやり繰りしていた小規模経営者などは、淘汰されるのは時間の問題だろう。レジャー、観光など「不要不急」の代表ともいえる業界は、経営規模の小さい会社が大半で、今後経営破綻が続出することは免れない。

 マスコミはこぞって景気悪化の象徴として取り上げるだろうから、社会不安は高まり、世間の消費ムードはさらに落ち込むことになる。まさに向こう数カ月は、売り上げ低迷⇒経営破綻⇒さらに売り上げ減少という「悪循環」にはまるのは確実だ。

 個人的には景気悪化の経済指標が今後相次いで明らかになるにつれて、相場は冷静さを取り戻し、2番底を模索すると観ている。感覚的には2016年の安値である16000円割れが下値の目途になるだろう。

 逆に言えば、この水準からなら買い下がっても中期的には利益が得られると観ている。

 

 ここまでをまとめると、現時点の雇用、賃金の公開データは景気の実勢を反映していない。しかもこの事実から眼を逸らしたうえで、コロナウイルスの経済的、社会的な影響を楽観視しているのが現在の株価水準である、ということだ。

 緊急事態宣言が発令されたことで、世の中の経済活動にさらなる低迷がかかるのは必至。ここは向こう数カ月は「冷静な行動」を取るようにしたいと考えている。