如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

高井議員のセクキャバ問題の本質を問う――倫理で感染は止められない

本件について気になった2本のブログ記事

 

 立憲民主党が、今月7日の緊急事態宣言の発令後に東京・歌舞伎町の「セクシーキャバクラ」と呼ばれる飲食店を訪れた高井崇志衆院議員の離党届を受理せず、除籍(除名)処分とすることを決めた、と各種マスコミで報じられている。

 

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 まあ常識的に考えて、宣言発令直後に歌舞伎町のその手の店に行くこと自体、もはや普通の感覚では理解できないのが当たり前だし、非常識、不謹慎と言われても反論はできないだろう。本人も離党届を出す時点で反省はしていたらしい(枝野代表のツイッター動画)。こうなると高井議員本人の言い分を聞きたくなるのだが、肝心のホームページにアクセスすると「Forbidden」が表示され、閲覧はできない状態だ。(4月17日現在)

 

 さて、当ブログのポリシーは「話題、情報を斜め視線から」であり、巷に溢れる高井議員へのディスりは避け、最近投稿された興味深くも方向性が全く異なる2つの記事を紹介したい。

 

 一つ目は、参議院議員音喜多駿氏のブログで4月15日に公開された「あわや国会がストップ?!立憲民主党議員の「セクキャバ騒動」の何が問題だったのか」という記事。

 論調は世論やマスコミとほぼ同じで、「都知事が特に自粛を要請した『夜の繁華街』に出かけたこと」と「国会の仲間・関係者を始め、周囲の人を著しく危険に晒した(晒している)こと」の2点を取り上げて、批判している。

 

 ただ気になったのは「国会議員と言えどプライバシーはありますし、平時であれば『趣味の話』で特段に問題視することではないと思います。お店でも言動を含めて、平時であればガハハと笑い飛ばしておけばよろしい」とまで言い切るのはいかがなものだろうか。

 個人的には、国会議員はその行動が常に国民の視線を受けている者と認識すべきだと思うし、性風俗の店に行ったことが報じられれば、議員のイメージダウンは必至、たとえ議員歳費の経費として計上してなくても「立場上何をやっているのか」と非難されて当然だろう。この手の性風俗店には平時、非常時を問わず関与すべきではないと思う。

 

 そもそも「セクシーキャバクラ(セクキャバ)」とはどんな店なのか。私も経験がないのでネットで調べた範囲でしか分からないが、ネットの記事「初心者でも分かるセクキャバ遊び」によれば、「セクキャバとは、おっぱいパブ、おっパブとも呼ばれます。 キャバクラでもありますし、風俗でもあります。 キャバクラのように女性の接客でお酒を飲みながら、その女性の体を触ることができるサービス」と書かれている。

 

 この記事を読む限り、通常の女性とお酒を飲んで会話を楽しむ通常のキャバレーというよりは、性風俗業に近いと言ってもいいのではなかろうか。平時であっても国会議員が通って「趣味の問題」として国民が納得するだろうか。お遊びにも「程度」というものがあるはずだ。

 

 さて、気になった記事のもう一つはNPO法人いいちばみらい代表理事の角間惇一郎氏がYAHOOニュースに4月16日に投稿した「国会議員の性風俗店利用の報道 本当にまずい問題」である。

 記事では、「今回の報道姿勢と社会の反応には無自覚な問題(アンコンシャス・バイアス)が内包されており、明らかにそれら問題のほうが根深い」と指摘している。

 

 ここからは性風俗業に特化した内容になるのだが、「今回高井議員が利用された店舗は所謂、『店舗型』に該当する形式で、歓楽街等に実店舗が存在しており「3密」の環境になりがちだ」と問題視している。

 

 一方で、「日本には『無店舗型』と呼ばれる性風俗店が存在します。派遣型性風俗店(デリバリーヘルス)とも呼ばれ、1999年4月の改正風営法により誕生し国内の性風俗店の届け出上約70%程がこの形式をとっています」と性風俗業界の現状を解説している。(データは令和元年度版の警察白書の109ページ)

 

 記事では、この『無店舗型』の場合、ホテルや自宅を使うので「密閉」はなく、1対1なので「密接」でもなく、「密集」もほぼないと、いわゆる「3密」ではないと解説している。私はこの『無店舗型』も経験がないので詳細は不明だが、大きく間違ってはいないのだろう。

 ただ見ず知らずの相手との1対1の個人的な接触が「密接」でないとは言い切れないと個人的には思うが。

 

 記事の著者が主張したいのは以下の内容だ。現在の東京都の休業要請リストに入っている各種風俗店(セクキャバもおそらく該当)に、この「無店舗型」が入っていない。だが、規制対象の「店舗型」の営業自粛の影響を受けて休業を始めた結果、これが無店舗型にも波及して休業が増え、所属している女性が禁止行為であっても自身の客と店舗を通さず直接連絡を行うことが予想されるという点だ。

 この結果、「不運にも個人営業中に新型コロナウイルスに感染した場合、客も含め自身がまずいことをしているという自覚から、その感染元を公表することは見込めず、国も病院も感染元を辿れない事態に発展する」と指摘している。

 

 つまり、東京都が休業要請を指定した各種「店舗型」の性風俗業から全体の70%を占める「無店舗型」が外れたことで、他の性風俗に通っていた人たちが、この無店舗型に切り替えるも、そこも休業となることで「非合法」かつ「管理不能」な状態の個人営業の性風俗が活性化し、感染経路不明の患者が増えるという指摘だ。

 もっともすでに東京都の1日当たりの新規感染患者数は100人超えが続いており、すでに感染経路の追跡は困難な状況にあるのだが

 

 記事では「実際に東日本大震災のときにも同様の店舗を通さない営業活動を行う方が多く発生する現象が起こりました。残念ながら、店舗があろうとなかろうと、働きたい女性と利用したい客がいる限り普段性風俗店内で行われている経済活動が止まることはないと推測されます」とも書かれている。

 

 音喜多参議院議員の指摘がどちらかと言えば「倫理的な視点」な内容であるのに対して、角間氏の主張は「性風俗の現場」からの声だと言えるだろう。

 

 個人的には、セクキャバに国会議員が通うこと自体が「議員としての資質」を疑うべき事柄であり、立憲民主党の迅速な除名処分は倫理的に正しい行動だと思う。

 

 ただ、政府や自治体が性風俗業の営業自粛を訴えても「利用したい男性とお金が欲しい女性」が存在する限り、無店舗型に勤める女性の個人営業のような「抜け道」ができるのは避けようがないだろう。人の行動は「倫理」だけでは制御できないものなのだ。

 しかも現在の感染状況を見る限り、5月6日に緊急事態宣言が解除されると限らない。「抜け道」は一層増加・拡大していく可能性もある。

 

 性風俗業の実態に合わせた感染防止策を検討、実施するべきではないだろうか。