如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

東京の人気エリアは「ピラミッド型」から「前方後円墳型」へ

郊外の戸建てに人気が集まる傾向の強まりで

 

 新型コロナの感染で、在宅勤務・テレワークが一気に普及、新しい働き方として認知されるようになったことは間違いない。

 特に大企業のホワイトカラー(事務職)については、在宅でも十分仕事が可能との認識から、日立、富士通などが社員の大半をテレワークの対象にしたことは、大手メディアで大きく取り上げられたし、当ブログでも7月4日に「在宅勤務を元に戻すか推進するか。別れる大企業の経営判断」として紹介している。

 

 ちなみにブログでは、逆に社員全員を出社する体制に戻した伊藤忠商事について「総合商社大手といっても子会社などを含めれば、在宅勤務などにコスト面で踏み切れない中小企業との付き合いも多いはず」と書いた。

 17日の日経電子版には「伊藤忠、社員半数を在宅に 原則出社を転換」というタイトルの記事で「7月に入ってからは中小の小売店など営業を続ける取引先との円滑なコミュニケーションには出社が必要だとして、ほぼ全員が出社する体制に戻していた」とあり、私の見立ては正しかったようだ。

 

 さて、今回のテーマは「東京の人気エリア」。なぜ前振りで大企業のテレワークの話を書いたかと言うと、これらの企業がテレワークを前提とした働き方が前提となると、都心のバカ高いマンションに夫婦共稼ぎ世帯が35年のフルローンで無理して購入する必要性がなくなり、その需要は都心から離れた郊外に向かうと推測するからだ。

 

  具体的には、購入希望者の対象エリアは、都心3区(千代田・港・中央)を頂点にした「ピラミッド型」に集中していたマンション(特にタワマン)への人気が落ち込み、代わりに23区から東京市部までエリアが広がった「古墳型」、特に23区を円形、市部を角型にイメージした「前方後円墳」のような全体的に平たく広いスタイルになると推測する。

 

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 この動きはマンション評論家として有名な榊敦司氏が、7月11日にニュースポストセブンで「コロナ禍でミニ戸建が売れている理由 タワマン離れは加速か」という記事のなかで、「都市部や郊外の“ミニ戸建て住宅”の契約は伸びている」と指摘していることと一致する。また記事では「ミニ戸建てを購入する人は、広さと部屋数を求めているそうだ。やはりテレワークの動きと連動しているのだろう」とも指摘している。

 

 これを裏付けるデータもある。東京圏を中心に小規模戸建てを得意として手掛ける東証一部上場企業オープンハウスが7月10日に発表した「6月の戸建関連事業の業績動向について」によれば、緊急事態前言が発令された4月の仲介契約件数の前年同月比増加率はさすがにマイナス39.1%と急落したが、解除された5月にはプラス43.0%と反転、6月もプラス52.3%と業績を伸ばしている。これは新築マンションの販売がデベロッパーの供給件数の絞り込みで激減を続けるなかで極めて異例な事例と言えよう。

 大手デベロッパーが都心のマンションの供給件数を絞り込んだ結果、高止まりしている価格を見て、購入希望者が対象を「都心・タワマン」から「郊外・戸建て」に変化させている動きがあるのは事実のようだ

 

 実際、山手線の西側のターミナル駅新宿から中央線で30~40分程度のエリアである国分寺・立川でも、国分寺からの西武線支線の各駅からの徒歩圏や立川からのバス便圏であれば、新築戸建ての建売は4000万円台で十分購入可能だ。これは都心のタワマンを買う場合のおよそ半分の価格と見ていいだろう。

 これで100平米以上の土地(庭、駐車場付き)の物件が手に入るのである。しかも周囲には緑の多い公園なども配置されていることが多い。戸建てなので上下の騒音問題は起きないし、部屋数も4LDKはごく普通だ。細かい話だが2階建てならトイレも2つある。「勤務先への利便性」と言う項目を最優先にしなくなるだけで、これだけ住環境は良くなるのである。

 

 もちろん、都心のすべての企業が在宅勤務にシフトするわけではないし、会社の業務上都心にオフィスが必要な企業(中央官庁との関係が強い会社など)は、大手町など東京周辺にオフィスをいままでのように維持するはずだ。

 

 ただこれまでのように「何が何でも都心3区のタワマン」という購入希望者が減って、その視線が他の都区部や郊外に向かっているのは間違いなさそうだ。

 東京の不動産ニーズは明らかに「ピラミッド型」から「前方後円墳」型に移り始めている