如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

何度でも言う「現役世代は家を購入すべきではない」

引退後に現金一括で購入するのがオススメ

 

 私はすでに過去に何度も「家の購入は引退後にキャッシュで」という主張は、書評やブログなどで明らかにしてきたのだが、ここ最近「『一生、賃貸に住む』と思っていたらトンデモナイ悲劇に」とか、「老後資金の退職金で「家」を買ってはいけない」といった、私の主張に反対するような記事が目立ってきた。

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 ここで改めて私の主張をより強固にするため、この記事に反論をしてみたい。まず1本目の記事だが、「後の人生で物件を購入したいと思っても年齢とともに様々な理由で住宅ローンを組むことができず、自らの意志ではなく、本当に「一生賃貸」しか選択できなくなってしまう」と書かれている。これについては、そもそも後半の人生で住宅ローンを組むという発想が間違っている。将来の減額が確実視されている年金を原資に金融機関がローンを認めるはずがない。だからこそ「引退後の現金一括購入を」と口を酸っぱくして意見しているのだ。

 筆者は後半で「賃貸で暮らして『高齢になってから現金一括で家を買うのもいい』という考え方もある。そうできるのであればその考え方自体は否定しない」と一応、引退時の現金購入にも理解を示しているが、「ほとんどの人たちはそのような家を買う現金を持っているケースは少ない」と改めて否定している。

 どうにもこの筆者は頭が固いように見えるが、私は購入と同程度の負担がかかる賃貸に住むことなど勧めていない。都心の利便性の高い築浅のマンションなら購入とさして変わらない負担になるだろうが、ちょっと郊外に目を向ければ、民間の安いアパートなどはザラにある。 

 どうしてもマンションが譲れないなら、ちなみに国土交通省傘下のUR都市機構のWebサイトで、東京地区の賃貸物件を検索すると町田市で148、多摩市で98件もの物件が見つかる。町田市なら2DKで良ければ3万円台から見つかる(1日現在)。このように公的機関のあっせん物件を探せば民間よりもはるかに安い賃貸料で入居可能だ。しかも礼金、仲介手数料、更新料、保証人は不要と言う条件まで付いてくる。

 筆者は最後に「ずっと賃料を支払っていけるのか?」「老後『住宅難民』になる可能性は全くないと言い切れるのか?」と危機感を主張しているが、引退後に現金で買える範囲で自分に合った物件を選べば問題は生じないはずだ。

 

 続いて2本目。筆者は「退職金を頭金にして持ち家を購入した人は、本当に悲惨な老後を過ごすことになるリスクが一気に高まります」と主張している。この例として「退職金の額が1000万円しか無かったら、全額を住宅ローンの返済に回すことになります。老後の生活を支える大事な生活費となるはずの退職金が、ゼロになってしまうのです」と書いている。

 そもそも老後の資金が退職金を含めて1000万円しかないという前提がどうなのだろうか。確かに一部の零細自営業者や非正規雇用の期間が長かった人たちには現役時代に貯蓄の余裕もないうえ、老後の月々数万円程度の年金しか期待できず、生活は厳しいかもしれない。

 こういう人たちには東京であれば「公営住宅法や東京都営住宅条例に基づき、住宅に困っている収入の少ない方のためのセーフティネットとして、低廉な家賃で賃貸する公共住宅」である都営住宅というものが存在する。入居にあたっては所得制限があり、家族人数が2人なら227万円、3人なら265万円だ。これを月額にするとそれぞれ約19万円、約22万円となる。国民年金ぐらいしか収入がない人ならまずこの基準をクリアできるだろう。

 

 一方、会社勤めの正社員サラリーマンやそれなりに稼ぐ自営業者やフリーランスであれば月3万円程度の貯蓄は可能だろう。仮に22歳から60歳まで38年間毎月3万円を積み立てて、年率3%で運用すれば38年後には2564万円の資産が形成できていることになる

 これに多少なりとはいえ退職金などを加えれば、3000万円ぐらいの貯蓄は不可能ではないはずだ。ここから1000万円程度の出費は小さいとは言わないが、途方もなく無理な住宅購入金額ではないだろう。しかも私は何もきっちり1000万円の住宅を推奨しているのではなく、今の現役世代が引退する数十年後には郊外を中心に空き家だらけで、築15年ぐらいの利便性がそれなりの物件でも数百万円で買えるはずと以前から主張している(マンション、戸建てを問わず)。すでに現状でも郊外のバス便物件なら1000万円以下は珍しくない。仮に65~70歳で引退して築15年の物件を購入したとしても、85~90歳(築35年)ぐらいまでは建て替えの心配はないはずだ。

 現役を引退する頃には、子供たちも成人・結婚してそれぞれの家庭を築いているだろうし、本人もペットや園芸などの趣味も固まっていて、それに合わせた物件を選べばよい。

 近くに商業施設がないと不便と言う声も聞こえてくるが、今はネットで日用品などは購入できるし、生鮮食料品もスーパーが宅配サービスを行っている。どうしても外出がしたければタクシーを使えばよい。自治体によっては高齢者向けに毎月タクシー利用券の補助が出るところもある。

 

 以上をまとめると「現役時代は家族構成の変化に沿って住みやすい間取や環境を選んで賃貸を住み替えて、毎月3万円程度を積み立て・運用に回し、引退が視野に入ってきたら数年かけて老後の住処を検討、現金一括で購入するというのが私の住宅購入に対する現役世代へのアドバイスと見解である。

 これも繰り返しになるが、物件の購入を勧める人たちの背景には多くの場合「すぐにでも建築費の回収や販売手数料を受け取りたい不動産屋の論理」が存在することを忘れてはならない。

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