アマゾン「偽ブランド品」販売の責任はないのか(東洋経済オンライン)
中野 大樹 : 東洋経済 記者
インターネット通販最大手のAmazonでいわゆる「偽ブランド品」が堂々と販売されている状況を問題提起する記事「アマゾン『偽ブランド品』販売の責任はないのか」が10月11日付けの東洋経済オンラインに掲載された。
記事では「ルイ・ヴィトン風バッグ」が本物の10分の1以下で数多く販売されている実態や、販売業者の「類似品であり、違法ではない」という主張、特定商取引法で義務付けられている電話番号の多くが繋がらない実態などを紹介している。
私自身は、いわゆるブランド物のバッグなど装飾品に関心はないが、PC関連の機材(インクカートリッジ)などで純正品以外を購入することはある。
この商品が違法なのかどうかは正確なところは分からないが、大手家電量販店などでも扱っている状況を考えれば、現時点では違法ではないのだろう。
では、なぜ私を含め消費者が「模倣品」を買うのかという話になるのだが、この理由として個人的には本物のブランドが価格的に割高であるという意識があることを前提にして、2つあると思っている。
一つ目は、「本当は本物が欲しいけど買えないから偽ブランドで自分を納得させる」という記事にあるようなケース。この場合、「本物」の価値を認めているうえで、あえて「偽物」を買っているので、消費者のモラルが問われても仕方がないと言えなくもない。
一方で、メール広告などで「激安ブランド品通販」などが頻繁に届く現状を見ると、ニーズがあるから違法覚悟のうえで偽ブランド品を製造・販売しているという側面もあるだろう。「売れるから作る」のである。
二つ目は、「本物の価格にそれだけの価値を認めないので模造品を購入する」というケースだ。私のプリンタ用のインクカートリッジがこれに該当する。
数年前、キヤノンの家庭用プリンタの普及機を購入、利用していたのだが、当時はエプソンなどとの競合が厳しく、プリンタの価格競争が激化していた。正確な記憶ではないが、プリンタ本体の価格が3000円以下だったのに対して純正のインクカートリッジは3000円以上していた。もちろんプリンタには純正のインクが付属している。
一方、互換性のあるカートリッジは半分以下の価格で、性能も大差なかった。メーカーには「プリンタを安く売ってカートリッジの利益で元を取り返す」という戦略があるのだろうが、消費者から見れば全く納得のいく話ではない。「プリンタを激安で売るなら、その分カートリッジも安くしろ」というのが本音だろう。
この二つの行動に共通するのは、消費者が「消極的」か「積極的」かという違いはあるが、自分の意志で模倣品を納得したうえで購入しているという点だ。
Amazonも偽ブランド品対策として、偽造品撲滅プロジェクト「Project Zero」を開始したと10月9日にプレスリリースで発表しているが、資料を読むとこのプロジェクトは「招待制」となっている。
中小の数多くのブランドまでを対象にするには時間と手間がかかるので、できる分野から始めるというのは間違いではないし、プロジェクトの内容を読む限り効果は見込めると思う。
ただ、最終的に商品を選ぶのは消費者であり、模造品へのニーズがある限り、手を変え品を変えて業者が商品を出品する可能性は高い。
もうひとつ指摘したいのは、実質的に同じ商品の内外価格差をどう考えるかだ。
例として引き合に出せば、アニメのブルーレイやDVDがある。同一タイトルでも海外で販売されている商品と、国内で売られている正規品では価格が大きく異なるのだ。
例えば、人気アニメ「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか」のケースでは、Blu-ray BOX(OVA付き)の国内正規版の定価は税別で23,700円。一方、フランス版の同商品のAmazonでの販売価格は何と税込みで4,980円だ。確かに映像がPAL形式なので再生可能なDVDプレイヤーが必要だが、これは1万円以下で購入できる。
OVAや特典の有無などの差はあるが、フランス版にも日本語音声は収録されており、普通に見る分には問題はない。5倍以上の価格差があれば、よっぽどのマニアでなければ輸入盤の存在を知れば「購入する」ことを検討するのではないか。
偽ブランドを取り締まるのは当然だが、世の中には「偽ブランド」でもなければ「国内正規流通品」でもない「グレーゾーン」な商品も流通しているのが実態だ。
Amazonの「Project Zero」では、あくまで「模造品」をターゲットにしており、グレーゾーン商品には言及していない。
ただ、偽ブランド対策が定着した先には、グレーゾーン問題が浮上してくると思う。