如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

マニュアルは「必要」だが、それだけで「十分」ではない

「駄目なマニュアル」が組織にのさばる深刻度(東洋経済オンライン)

中田 亨 : 産業技術総合研究所 人工知能研究センター NEC-産総研人工知能連携研究室 副連携室長

 

 世の中にいかに「使えない」マニュアルが存在し、その理由を解説する記事「『駄目なマニュアルが組織にのさばる深刻度」が10月15日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 

 記事では。「駄目な」マニュアルを以下に5つに分類、解説している。

              ・仕方なく作ったマニュアル

              ・責任回避手段としてのマニュアル

              ・判断を奪うためのマニュアル

              ・門前払いのためのマニュアル

              ・すでに存在しているという理由だけで使われ続けるマニュアル

 

 どれも、過去に経験した仕事を振り返ると思い当たることがある人が多いのではないだろうか。

 

 まず、ここで挙げられたマニュアルに関して言えば、どれも「後ろ向き」に作られたという特徴がある。

 また、後任者へと仕事を引き継ぐうえで、その「最低限」の内容を「分かりにくく」記載しているという共通点も挙げられる。

 

 つまり、「定型作業」を「そのまま」、「次の担当者」に引き継ぐまでの「言い訳と時間稼ぎのツール」になっているのだ。

 

 しかも、やっかいなことに長年職場で使われてきただけに、「金科玉条」のような存在になっていて、誰も何の口も出せないような扱いになっているケースも多い。

 

 昭和の時代ならまだしも、仕事を取り巻く環境が加速度を付けて変化しているなかで、その仕事の手順を書いたマニュアルが、令和に入ってからもそのまま通用することは少ないはずだ。

 

 記事にも、「マニュアルが読者に与えるべきは、「被統制」とは全く逆の「自主的な統制」への助け」とあるように、マニュアルはあくまで仕事をするための「参考」とすべきで、本来、仕事を進める上での改善点などを見つけるための「出発点」に過ぎない。

 

 また、マニュアル最優先型の「頭の固い」社会人にありがちなのだが、「マニュアルも所詮人間が作ったもの、欠陥はあって当たり前、それをより良いものに常に改善していくのがマニュアルのあるべき姿」という認識ができていない。

 

 とは言え、実際の世に出回っている多くのマニュアルは新人などに「効率的に仕事を覚えてもらうためのツール」になっているのも事実

 ファストフードやスーパーのレジや、コールセンターの受付など、仕事の内容が一定の範囲に収まっていて、例外として「マニュアルにない問題が発生した場合は上司の指示に従う」という規則が徹底しているような、定型作業がほとんどを占める職場では、既存のマニュアルをいかに早く理解するかが最優先項目だろう。

 

 現場で仕事をするパートやアルバイトに「マニュアルの改善・更新」まで意識して仕事を任せるのは、支払う給与に対して期待値が高すぎる。少なくとも現場を知るリーダー以上の仕事だろう。

 

 では、現場により「早く」「分かりやすく」理解してもらえるマニュアルとは、どういうものなのか。それは「想像力を持つマニュアル」である。

 

 これはあるテーマパークの従業員マニュアルにある内容だが、迷子になった子供への対応方法として「子供が安心するように、自分が子供の目の高さになるまで腰を落として」とある。これを読んでその内容が理解できない人は少ないだろう。顧客の目線に立って、しかも具体的に説明している。

 

 同じ対応策を想像力を働かさない人が書くと「迷子は見つけ次第、迷子センターに届ける」といった無味乾燥な内容になるはずだ。間違いではないが、親切でもない。いわゆる最低限の必要事項を書いたに過ぎない。これでは到底「役に立つ」マニュアルとは言えない。

 この差は、現場を知ったうえで、より効果的な対応を考えるように常に意識してマニュアル作りに取り組んでいるかどうかによる処が大きいだろう。

 

 マニュアルは「必要」ではあるが「十分」ではない、という認識を社員が共有する企業はまだ伸びしろがあると言えそうだ。逆もまた然りだが。

後付けカーナビは消滅へ――トヨタはモニタを「素」で販売

カローラから始まったカーナビ専用機の大転換(東洋経済オンライン)

桃田 健史 : ジャーナリスト

 

 乗用車のカーナビゲーションにおいて、後付けの製品が消滅するかもしれない――このようなカーナビの未来を予想する記事「カローラから始まったカーナビ専用機の大転換」が10月14日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 

 記事の要点をまとめると、トヨタは2019年9月に発売された「カローラ」以降、すべての乗用車のモデルチェンジのタイミングで、オーディオ再生機能のみを持つ「素」のディスプレイを提供、ユーザーは必要に応じてナビ機能などをオプション等で組み込むというスタイルになる。

 しかもオーディオ機能と言ってもCD、DVDデッキは搭載されていない。音楽はネット接続での利用を前提にしていると思われる(ラジオは標準装備)。

 

 しかも驚くべきはその価格だ。無料のLINEカーナビを使うのであれば標準装備だけで済むので無料。それ以外のナビアプリを使う場合は「キット」を購入することになるが、これが3万3000円(税込み)。トヨタのエントリーナビシステムを搭載した場合でも6万6000円(同)だ。

 これは現行のカローラフィールダーの搭載可能な純正ナビの最も安いエントリーモデル(85,800円)よりも、20%以上安い。

 

 記事では、「仮にT-Connectなどをフル活用した最上位パッケージを買ったとしても20万円でお釣りがくる計算」としているが、これは確かに安い。

 ちなみにほぼ同じ価格帯のミニバン「シエンタ」を例に出すと、最も高いナビは30万5800円もする。

 シエンタの最も安いモデル(FUNBASE X)の価格が180万9500円だから、このナビを買うと本体価格の約17%を占めることになる。これにETCやバックカメラを搭載したら20%を超えるだろう。純正カーナビの価格は高くなり過ぎたと言っていい。

 

 このように純正カーナビの価格が上昇する中でユーザーは、スマホを運転席の前に置いて、スマホアプリでカーナビを代用するようになった。

 ちなみに「Yahooカーナビ」なら、地図もナビも更新は無料、交通情報もしっかり提供される。確かに画面は小さいので地図の利用勝手は悪いが、音声案内で走行する分には特に支障もないだろう。

 

 この状況に危機感を覚えたトヨタが、利益率の高い純正カーナビという「ハード」にあえて見切りをつけて、T-Connectというネットワークサービスの利用を促す「ソフト」路線に切り替えたと思われる。

 T-Connectは車両の状態や緊急時の通報など24時間サポートする機能だが、対応ナビ購入から5年間は無料、その後は年間3630円となっている。

 高齢運転者が増えることや、万が一の安心機能としてニーズは高まるのは間違いないだろうし、月額換算で300円というのは安心料として考えれば高くはない。

 

 一方、トヨタにとっても大きなメリットが2つある。ひとつは年間制のサブスクリプションモデルになっていて、一度契約したらそのまま継続利用するユーザが多数見込めること。一台当たりの金額は少なくても販売台数が多いので、総額ではバカにできない水準だろう。

 

 もうひとつは、2020年までに標準搭載される「DCM(データ・コミュニケーション・モジュール)」だ。

 これは、ネットワーク機能介して車両、走行状態を一分ごとに自動送信するもので、トヨタは受信した膨大なデータを、渋滞情報の提供や走行パターンの分析などに生かすことが可能になる。

 現在は、二年目以降年額1万3200円だが、T-Connectの価格に合わせて改訂される可能性もある。

 

 いずれにせよ、トヨタがオプション品のなかでも利益率の高い純正カーナビを、汎用品に置き換えたインパクトは大きい

 少なくとも、向こう数年で「ケンウッド」「パイオニア」「クラリオン」といったカーナビの売上比率が高いメーカーへの影響は多大だろう。後付けのカーナビ製品は「音質」にこだわるような、ごく一部のマニアを対象にした製品しか生き残れないかもしれない。

 

 組み込みROMから始まったカーナビは、CD-DOM、DVD、メモリーカードという変遷を経て、ネットワーク社会に組み込まれる形で、「ハード」から「ソフト」が主体の製品へと変わりつつあるようだ。

ダイソーの老眼鏡、度数の高い人は「拡大鏡」も視野に――価格はハズキルーペの100分の1

コスパは抜群、300円の高級型も登場

 

 私は50代後半で、加齢のせいか老眼鏡が欠かせないのだが、ここ数年で老眼が一気に進み、「度数」のアップが毎年のように続いていた。(ちなみに5m先の視力を測る健康診断では裸眼で両目ともに1.0と良好)

 

 当初は、眼鏡専門店でフレームを選び、視力検査をしてレンズを調整していたのだが、度数アップの度に、買い直すのは費用がかさむため、昨年からは100円ショップの老眼鏡を購入していた。

 当初は品質などに不安もあったのだが、もともと不精な性格も影響して老眼鏡が「行方不明」になって困ることが多かったので、10個ぐらいまとめ買いして「オフィス」「リビング」「寝室」「カバン」「車内」など各所に配置して、その場その場で便利に使っていた。

 

 巷では「安い眼鏡は目に良くない」という声もあるのだが、使った感想を言えば「品質に問題は感じない」レベルだった。それよりも「安く」「大量」に買えて、利便性が上がったことのメリットの方が大きいというのが実感だ。

 

 現在の私の「度数」は+4.5。これは100円ショップで買える老眼鏡では最も高い度数。同じ100円ショップでもダイソーが最もデザインが豊富なのでよく利用していたのだが、最近問題が生じていている。

 

 というのも、高い度数の老眼鏡の在庫が極端に減っているのだ。近場のダイソーを数件回ったのだが、どこも品揃えは「+3.5」まで。店員さんに聞いたところ、「高度数の老眼鏡は入荷してもすぐに売れてしまう」らしく、いつ買えるかは答えられないとのこと。(ちなみに同社のWebサイトによれば、500個以上買えば取り寄せ可能らしい)

 100円老眼鏡を家のそこらじゅうに配置して自自由に使うというスタイルはすでに定着しているので、いまさら専門店の老眼鏡にはコスト面からも戻れない。

 

 という訳で、これからどうしようかと悩んでいたのだが、最近解決策を発見した。それは「拡大鏡」である。

 従来の老眼鏡が「ピントを合わせる」という機能なのに対して、拡大鏡は「近くのモノを拡大する」という特徴がある。

 ダイソー店内の老眼鏡コーナーの隣に置いてあったのにたまたま気が付いて、「物は試しに」と購入、使ってみたのだが、これが想像以上に使いやすいのだ。

 ちなみにレンズの大きさによって「レギュラー」「ワイド」の2種類がある。

 

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ワイドタイプ

 老眼鏡の度数で言えば、感覚的には+4.5から+5.0といったところ。拡大鏡なので「文字が大きく見える」メリットは当然なのだが、通常の眼鏡のうえに重ねても使えるようになっているので、レンズ面が老眼鏡よりも大きくて、フレーム枠もないのではっきり見える視野が広い。しかもブルーライトカットの効果もある。

 

 巷では、最近話題の「ハズキルーペ」を模倣したものという指摘もあるが、確かに機能的には同じ「1.6倍」の商品であり、デザインも似ていなくもない。作りも安っぽさを感じないではない。中国製ということも影響しているとは思うが。

 

 その比較対象の「ハズキルーペ 」国産をウリにしているうえ、倍率は1.6倍のほかに、1.32倍、1.85倍も選べる。レンズもカラーは2種類、大きさも2種類から選択可能。フレーム色に至っては10色から選べる。

 ただ、機能面だけを考えれば、ダイソーの拡大鏡もレンズの大きさについては2種類から選べる。「ハズキルーペ」が1万円以上することを考えれば、同じ価格で100個買えるダイソーのパフォーマンスは決して悪くない。

 

 しかもダイソーでは最近、レンズの上部に黒いフレーム枠が入って、「ハズキルーペ」にデザイン面でも似ている300円拡大鏡がラインナップに加わった。箱入りで、携帯用のポーチとクロス付きである。触った感触でも「耐久性」は100円モノより強そうだ(中国製ではあるが)。

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300円の箱入りタイプ

 

 ダイソーの度数の高い老眼鏡を使っていて、在庫不足に悩んでいる人には「一度使ってみては」と勧めたい。最初のおススメは「100円のワイドタイプ」である。

 もっとも私は眼科医ではないので、利用した結果に対しては何の責任も負えない。使ってみて違和感があるようなら、使用はすぐに中止すべきなのは当然だが。

台風19号、事前準備は進んだがやはり「犠牲者」は避けられない

 この記事を書いている12日午前5時30分現在、東京では「猛烈」な雨と風が襲い掛かっている。

 11日には気象庁の報道担当者がテレビの会見で、「(犠牲者1200人を出した)昭和33年の狩野川台風並みの規模」の可能性を指摘したこともあって、マスコミを通じて、全国各地で過去にない規模の災害に向けた取り組みが事前に行われたことは良かったと思う。

 ただ、こうした「計画的な準備」にも関わらず、それなりの「犠牲者」は出るのだろう。まだ「台風が猛威を振るうのはこれから」という12日朝の段階で、不謹慎かもしれないが、これは避けられないと思う。

 

 東京に住んでいる者として気になるのは「多摩など丘陵地区での土砂崩れ」と「都心特に江東地区の水害」の2つだ。気象庁は13日午前0時までの24時間予想雨量は、関東甲信で600mmと想している。

 過去にない規模の雨量によって、通常なら被害は考えられないような地形の「丘」や「崖」が崩れ落ちた場合、その被害は甚大だ。特に多摩地区は「多摩ニュータウン」などの傾斜地での大規模住宅開発もあり、影響が懸念される。

 

 もう一方の江東地区(江東5区とも言う)では、最大の問題は、大潮の時期に暴風雨に襲われることで「沿岸部が高潮の被害を免れない」こと。最大では10m規模の高潮になるとの観測もあり、タワーマンションの地下が浸水すれば、エレベーターを稼働させるモーターや給水用のポンプなどの電源部は被害で稼働できないはずだ。

 地震の際と同じように、高層マンションは「陸の孤島」になりかねない。

 また、都心部では雨量の処理能力は一時間当たり50mm程度とされている。24時間続いた雨の総量が500mmを大きく上回る規模の雨は、この処理能力を大きく超えている。増水した河川からという「外部」からと、雨水の処理能力オーバーという「内部」からの浸水のダブルパンチで、被害は過去にない規模になる可能性もある。

 

 住民の台風への警戒感から各家庭が「事前準備」を進めたのは評価できるが、今回の台風は家庭や行政が対応できる規模を大きく超える規模の「災害」をもたらすだろう。

 

 台風が過ぎ去った後に明らかになる被害規模ができるだけ小さいことを望みたいが、冷静に考えれば少なからぬ犠牲者は覚悟した方がいいだろう。

 被害が出る前から言うべきことではないのかもしれないが、残念ではあるがこれは「避けられない」事実になると思う

 

Amazonの偽ブランド対策、その先にあるのはグレーゾーン商品問題

アマゾン「偽ブランド品」販売の責任はないのか(東洋経済オンライン)

中野 大樹 : 東洋経済 記者

 

 インターネット通販最大手のAmazonでいわゆる「偽ブランド品」が堂々と販売されている状況を問題提起する記事「アマゾン『偽ブランド品』販売の責任はないのか」が10月11日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 記事では「ルイ・ヴィトン風バッグ」が本物の10分の1以下で数多く販売されている実態や、販売業者の「類似品であり、違法ではない」という主張、特定商取引法で義務付けられている電話番号の多くが繋がらない実態などを紹介している。

 

 私自身は、いわゆるブランド物のバッグなど装飾品に関心はないが、PC関連の機材(インクカートリッジ)などで純正品以外を購入することはある。
 この商品が違法なのかどうかは正確なところは分からないが、大手家電量販店などでも扱っている状況を考えれば、現時点では違法ではないのだろう。
 
 では、なぜ私を含め消費者が「模倣品」を買うのかという話になるのだが、この理由として個人的には本物のブランドが価格的に割高であるという意識があることを前提にして、2つあると思っている。
 
 一つ目は、「本当は本物が欲しいけど買えないから偽ブランドで自分を納得させる」という記事にあるようなケース。この場合、「本物」の価値を認めているうえで、あえて「偽物」を買っているので、消費者のモラルが問われても仕方がないと言えなくもない。
 一方で、メール広告などで「激安ブランド品通販」などが頻繁に届く現状を見ると、ニーズがあるから違法覚悟のうえで偽ブランド品を製造・販売しているという側面もあるだろう。「売れるから作る」のである。

 

 二つ目は、「本物の価格にそれだけの価値を認めないので模造品を購入する」というケースだ。私のプリンタ用のインクカートリッジがこれに該当する。


 数年前、キヤノンの家庭用プリンタの普及機を購入、利用していたのだが、当時はエプソンなどとの競合が厳しく、プリンタの価格競争が激化していた。正確な記憶ではないが、プリンタ本体の価格が3000円以下だったのに対して純正のインクカートリッジは3000円以上していた。もちろんプリンタには純正のインクが付属している。


 一方、互換性のあるカートリッジは半分以下の価格で、性能も大差なかった。メーカーには「プリンタを安く売ってカートリッジの利益で元を取り返す」という戦略があるのだろうが、消費者から見れば全く納得のいく話ではない。「プリンタを激安で売るなら、その分カートリッジも安くしろ」というのが本音だろう。

 

 この二つの行動に共通するのは、消費者が「消極的」か「積極的」かという違いはあるが、自分の意志で模倣品を納得したうえで購入しているという点だ。

 Amazonも偽ブランド品対策として、偽造品撲滅プロジェクト「Project Zero」を開始したと10月9日にプレスリリースで発表しているが、資料を読むとこのプロジェクトは「招待制」となっている。

 中小の数多くのブランドまでを対象にするには時間と手間がかかるので、できる分野から始めるというのは間違いではないし、プロジェクトの内容を読む限り効果は見込めると思う。

 ただ、最終的に商品を選ぶのは消費者であり、模造品へのニーズがある限り、手を変え品を変えて業者が商品を出品する可能性は高い。

 

 もうひとつ指摘したいのは、実質的に同じ商品の内外価格差をどう考えるかだ
例として引き合に出せば、アニメのブルーレイやDVDがある。同一タイトルでも海外で販売されている商品と、国内で売られている正規品では価格が大きく異なるのだ。

 例えば、人気アニメ「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか」のケースでは、Blu-ray BOX(OVA付き)の国内正規版の定価は税別で23,700円。一方、フランス版の同商品のAmazonでの販売価格は何と税込みで4,980円だ。確かに映像がPAL形式なので再生可能なDVDプレイヤーが必要だが、これは1万円以下で購入できる。

 OVAや特典の有無などの差はあるが、フランス版にも日本語音声は収録されており、普通に見る分には問題はない。5倍以上の価格差があれば、よっぽどのマニアでなければ輸入盤の存在を知れば「購入する」ことを検討するのではないか。

 

 偽ブランドを取り締まるのは当然だが、世の中には「偽ブランド」でもなければ「国内正規流通品」でもない「グレーゾーン」な商品も流通しているのが実態だ。


 Amazonの「Project Zero」では、あくまで「模造品」をターゲットにしており、グレーゾーン商品には言及していない。
 ただ、偽ブランド対策が定着した先には、グレーゾーン問題が浮上してくると思う。

若年層の就職への近道は「自信」を取り戻すことから

「就活ひきこもり」の社会復帰を阻む4つの壁(東洋経済オンライン) 

 川畑 翔太郎 : UZUZ 専務取締役

 

 昨今話題となる「人手不足」問題について、働き盛りである若年層の失業者を社会復帰させることで解消を目指すとする記事「『就活ひきこもり』の社会復帰を阻む4つの壁」が10月10日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 

 記事では、総務省の「労働力調査」を引用、働き盛りの15~34歳のうち69万人が失業しているとしている。

 タイトルにある「就活ひきこもり」というのは、「やりたい仕事が見つからない」「就活で挫折した」などの理由で、求職活動から遠ざかり、社会に出られずにフリーターやニートになっている「広義のひきこもり」と定義している。

 

 記事後半では、「就活ひきこもりが社会に出るために乗り越える4つの壁」として、「就活開始」、「仕事選び」、「面接」、「就活継続」という具体的な就活のハードルを挙げている。

 

 当然ながらこの4つは確かに「壁」になっているのは事実だろうし、それぞれ項目に対する解説と対応策は参考になるし、説得力があるのも事実だ。

 

 ただ、個人的にはこの4つの壁を乗り越える最大のテーマは「自信」だと思う。

 もちろん、自分に自信がないから失業しているという現実を自覚するのはつらいものがあるだろうが、現実はそうだ。

 

 その意味では、一つ目の「就活開始の壁」が最大の難関だろう。最初の一歩は誰にとっても不安だし、自信などある方が少ないはずだ。ましてや就活の経験が全くなかったり、終活に失敗したというトラウマがあれば、なおさらだ。

 

 ここは記事にもあるが「自分と同じ境遇の他人の事例を知ることで、成功イメージを持つ」ことがカギになる。

 これはフリーターなら、周囲を見渡して同じような立場にありそうな人たちと「挨拶」から始めて、「会話」に、そして「相談」というステップを踏むのが手間はかかるが、より確実な手法だと思う。境遇を共有することで得られる情報は多いはずだ。

 

 自宅で引きこもっているケースでは、周囲に相談できる知人・友人もいないだろうから、対応してくれる行政等の窓口が有効だろう。

 東京都の場合、「ひきこもりサポートネット」として、取っ掛かりとなるWebサイトを用意している。具体的なサポート内容は「リーフレット(令和元年版)」に記載されているが、相談窓口は「パソコンメール」「携帯メール」「電話」「訪問」の4形態があり、メールを例に取ると、相談に必要なのは「ニックネーム」「年齢「性別」などで、詳しいプライベートな情報を知らせる必要はない。

 「自信」を取り戻すための最初のステップとして、何とかアプローチできればその先の展開が見えてくる可能性がある。ダメ元で試してみる価値はあると思う。

 

 第2の「仕事選び」と第3の「面接」の壁は、できるところから始めて少しづつ経験を積んでいくしかないだろう。幸いにも「人手不足」の影響で、若年層の就職先は中高年よりも選択幅が広い。

 新卒採用組の多くだって自分に何が向いているかについて確証的な自信がある訳ではないはずだ。

 

 究極的に言えば、「直観」で会社を選んでも構わないと思う。ダメ企業かどうかなど勤めてみなければわからないことが多いのが現実だろう。また、面接で落とされたら「相手に自分を観る目がなかった」ぐらいの割り切った気持ちで臨んだ方が気は楽だ。

 もともと仕事をしていなのだから、面接で落とされても「マイナス」にはならない。

 

 記事では最後に、「状況を変えたければ行動するしかない」と結んでいるが、これは事実だ。先に紹介したサポート事業も、「就活ひきこもり」組からのアプローチから第一歩が始まる。

 就活への意欲を失った人に「自ら動け」というのは厳しいようだが、現状に満足している人は別として、そうでなければまずは「最初の一歩」を踏み出すことを勧める。そのための「窓口は開かれている」ことは知っておいてほしい。

リモートワーク成功の可否は会社の社員への「信頼度」にかかっている

会社員が毎日出勤する意味はどれだけあるのか(東洋経済オンライン)

伊庭 正康 : らしさラボ代表

 

 行き帰りの満員電車に揺られ、疲弊したサラリーマン勤務を続けている人はまだまだ多いと思うが、こうした非効率的な仕事の進め方の改革を提言する記事「会社員が毎日出勤する意味はどれだけあるのか」が10月9日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

  記事で取り上げているテーマは3つ。

                  ・出社しない「ノー・オフィスデー」

                  ・「サードプレースオフィス(第三の事務所)」

                  ・仕事を飽きずに楽しむために必要な「あそび心」

 である。

 

 一つ目の、「ノー・オフィスデー」だが、これはまず思いつく「在宅勤務」のほかに、「コワーキングスペースでの仕事」、さらに「直行直帰」も含まれる。

 

 在宅勤務については、かなり社会の認知度も高まってきたが、現実的には「介護」や「育児」などの家庭の事情を抱えた人を対象に、週に数日までといった制度が一般的ではないだろうか。

 要するに特殊な事情を抱えた人への「特例措置」という側面が強く、仕事の効率性を考慮して積極的に導入している企業はまだ少数派だろう。

 

 ではなぜ、在宅勤務を含むリモートワークが普及しないかというと、一言でいえば「会社が社員の管理に自信が持てないから」というのが最大の理由だろう。

 簡単に言えば、「仕事をしているかサボっているかどうか確認できない」からだ。その証拠のひとつにあるメーカーは、在宅勤務者を管理するために専用の部屋を用意して、壁一面にモニタを設置、勤務者のPCにあるカメラの画像を投影して、誰が何をしているかすぐにわかるような「監視体制」を敷いている。

 

 これは極端な例だろうが、会社というか管理職にとっては、部下の仕事ぶりを自分の目で確認できないと安心できないのだ。つまり「出社することに意味がある」と考えているに他ならない。

 

 本来、会社員はそのスキルを「仕事」を通じて会社に貢献することで報酬を得ている訳で、「出社」することは必要不可欠な条件ではないはずだ。

 会社側としては、勤務時間や健康管理などにも配慮しなければならないので、完全なリモートワークは困難化もしれないが、現在の原則「特例」から選択「自由」に変化していくのは時代の流れだろう。

 

 そもそも毎日会社に来なくてはできない仕事というのが、どれだけあるのかゼロから洗い直した方がいいだろう。システム開発などはネット環境が整備されれば「在宅」でも十分仕事は可能だろうし、、企画、調査部門などは相手との打ち合わせに伴う移動時間や取材先の都合などを考えれば「直行直帰」の方が、より効率的かもしれない。

 

 この相手との打ち合わせ先で有効なのが、2つ目の「サードプレースオフィス(第三の事務所)」だ。会社でも自宅でもないカフェなどで打ち合わせをすることで、記事では「とても自由な雰囲気で話ができました。意見交換が活発になる」としている。

 

 3つ目の「あそび心」は、保守的な会社ほど抵抗が強いだろう。「あそび」=「サボり」というイメージが強く、新たな発想や企画は仕事とは直接関係ないことから生まれることが少なくない、という事実に理解が及ばない。

 

 以上3つのテーマに共通するのは、「会社が社員を」「上司が部下を」信頼しているかどうか、という点に尽きるだろう。

 もっとも、社員の側もやみくもに「在宅勤務」を主張するには無理がある。入社したばかりの新人が「自宅で仕事をしたい」と言っても、上司にはそれを許可する根拠に欠けるからだ。

 少なくとも会社内で評価されるような実績を残したうえで、「より効率的に仕事がしたい」というのであれば、会社の理解も得やすくなるだろう。

 

 一方、会社側にとっても、同業他社が有能なエンジニアなどに在宅勤務を認めるようになれば、人材が流出する可能性は高まる。そもそも新卒で入社する社員は「終身雇用」を期待していないし、人生設計では「会社の知名度」という他者の評価よりも、「自分のスキルや待遇のアップ」という自身の価値観を優先するのが大きな流れになりつつある。

 

 AI、ITなどの普及で社会や職場を取り巻く環境は加速度を付けて変化している。働き手の都合や要求に応えられず、変化に対応できない企業の先行きは暗い。

 会社は、社員を「出社や勤務時間」という勤務体系ではなく、「仕事の成果」で評価するという本来あるべき姿へと「思考回路」を切り替えていくべきだろう。

「お見合い」⇒「恋愛」⇒「ネット婚活」は自然な流れ、個人スコアの存在感アップも

今や8人に1人が「婚活サービス」で結婚する背景(東洋経済オンライン)

リクルートブライダル総研

 

 昭和中期ころまでは主流だった「見合い」結婚が、今は「恋愛結婚」が9割に達し、現在ではネットを使った婚活サービスなどに移行しつある――という最近の婚活事情を解説する記事「今や8人に1人が『婚活サービス』で結婚する背景」が10月8日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 

 サブタイトルにあるように「自由恋愛の歴史に大きな変化が訪れている」のである。

 記事では、2018年に結婚した人のうち、8人に1人が婚活サービスを利用して結婚、20~40台の独身者の4人に1人は婚活サービスの経験があるという調査結果を紹介している。

 しかも、婚活サービスのなかでも最も結婚した人の比率が高かったのはネット系婚活で、結婚相談所とパーティー・イベントに約2~3倍の差をつけたそうだ。

 

 こうした「婚活」の大きな動向に、現代の独身者の結婚に対する「認識」と「環境」の変化が影響しているのは間違いない

 

 そもそも「結婚」は、昭和の時代には「しなければならないもの」「してようやく一人前」という周囲からの圧力が強く、当事者も疑問を持っていなかったが、その後女性の社会進出が進み、男女が職場やサークルなどで知り合い「自発的」に相手を選んで結婚するという流れになった。

 ただ記事中にある「恋愛・見合い結婚の構成の推移」グラフでは、1965年頃に逆転した「見合い」「恋愛」の比率は、その後上昇を続けるが、1990年頃に90%近くまで上昇したあとは頭打ちになっている。

 

 想像するに、「恋愛」結婚というスタイルは定着したが、その内訳が変わってきたのだ。これは記事にもあるがネット環境の充実が影響している。

 ネットを通じたコミュニケーションは1980年代から「パソコン通信」の掲示板など存在はしたものの、機材や接続環境などは一般的ではなかった

 いわゆる「オフ会」などもあり参加した経験もあるが、いわゆる「オタク」系の人が多かった記憶がある。参加者も大半は男性で、女性にはハードルが高かった。

 

 その後、帯電話NTTドコモの「i-mode」をはじめとする各種ネットサービスが充実、現在ではLINEでやFacebookなどSNSでのコミュニケーションなしでは若者の生活は成り立たなくなっている。

 こうした結果、ネット環境の充実が「ネット系婚活」というサービスへの抵抗感を弱めたのは確実だろう。もちろん「いかがわしさ」感の強かったネット系恋愛サービスの「浄化」が進んだことも効果はあっただろうが。

 

 という訳で 、職場や友人の紹介など「現実空間」で知り合いになるよりも、自分の価値観で相手を探し、選ぶことが容易になったことで「仮想空間」で、相手との距離感を見極める傾向が強まった。

 「仮想」だけに、実物を判断できないデメリットはあるが、コミュニケ―ションや発言履歴などを調べれば、大体の「人となり」は判断できるのだろう。時間や手間などの効率やコスト面でもネットの方が優れている。普及するのは時代の流れだろう

 

 今後の展開としては、相手を選ぶ際の客観的な基準となる「個人スコア」へのニーズが高まりそうだ。選択肢が増えても、自分の考える基準に自信のない人も多いはずで、数値化されれば「相手」だけでなく「自分」の立ち位置もわかるというメリットもある。

 この分野で先行した中国では「個人情報の管理」が行き過ぎて、民間企業に政府が介入したようだが、日本では、みずほ銀行とソフトバンクGの「Jスコア」などが立ち上がったばかり。

 個人情報保護の問題はあるが、最近リクルート系の就職支援企業が就活生の個人データを企業に無断で販売していたことが社会問題化するなど、世間の個人情報への監視の目は強まっており、「まともな」企業であれば、同じようなヘマはしないだろう。

 

 個人的には、結婚相手を選ぶ手段は、お見合いという「押し付け」から恋愛結婚という「自由恋愛」という自分の意志が優先される流れの先に、個人スコアを利用した婚活サービス業者からの積極的な結婚相手の「あっせん」という、どちらかといえば再び「受け身」のサービスが増えてきそうな気がする。

 結婚したい人にとっては「自分の意志」を重視したいが、業者は「成婚させてなんぼ」であることに変わりはないからだ。

 ネット系婚活も、現在は普及・拡大の一途だが、そう遠くない将来淘汰が進みそうな気がする。

 

障がい者雇用に立ちふさがる達成企業率50%の壁

「障害者の雇用率」が高い上位100社ランキング(東洋経済オンライン)

村山 颯志郎 : 東洋経済データ事業局データベース3部

  

 毎年9月は障がい者雇用支援月間ということで、厚生労働省や自治体が協力して啓もう活動を行っている。

 10月7日付けの東洋経済オンラインには、障がい者雇用に力を入れている企業を特集した「『障害者の雇用率』が高い上位100社ランキング」が掲載された。

 

 現在、民間企業の障害者法定雇用率は2.2%だが、記事ではランキング上位5社の雇用状況を紹介している。1位の会社の雇用率は20.92%、2位も13.78%と規定値を大きく上回っているのが目を引く。

 

 意外なのは3位のエンターテインメントのエイベックス。同社のサイトにあるCSRレポート2017を見ると、障がい者のスポーツ活動支援事業を大きく紹介している。前回2016年のリオパラリンピックでは、単一企業として最多の選手(6名)を送り込み、文部化科学省から表彰もされている。来年の東京パラリンピックでも同社の選手が活躍し、障がい者支援に積極的な企業への評価が高まることを期待したい。

 

 また、5位にはユニクロのファーストリテイリングが入った。雇用率5.62%も立派だが、雇用者数も917人と人数では最大の日本電信電話(NTT)の939人に匹敵する障がい者を雇用している。

 同社はこれまで一部のマスコミでは内部告発という形で、過酷な労働環境が伝えられ批判も浴びたが、2012年度以降はほぼ国内全店で「1店舗1人以上の障害者を雇用」を実現しているという。

 まあ会長兼社長の柳井正氏のリーダーシップによるものだとは思うが、マスメディアは有名企業や大企業の「マイナス面」を取り上げるのには熱心だが、こうした「プラス面」も、評価すべきだと思う。

 

 ただこうした個別に頑張っている企業がある一方で、法定雇用率を達成する企業の比率は伸び悩んでいる。厚生労働省の「平成30年 障害者雇用状況の集計結果」によれば、平成以降で見ると、2年に52.2%となったのが最高で、その後は伸び悩み16年には41.7%まで低下した。29年には50.0%と50%台を回復したが、翌30年には45.9%と大きく落ち込んだ(p17)。

 ここ30年で見ると、法定雇用率を達成する企業の割合は50%の壁を乗り越えられないのが実態と言える。

 

 実際にランキングを見ても同率99位には雇用率2.59%の企業が6社もあり、義務である2.5%を何とか上回っている企業がいかに多いかを示している。

 

 厚生労働省は障がい者雇用に対して、様々な対策を講じている。具体的には「障害者雇用納付金制度」として、雇用率未達成企業から納付金を徴収し、雇用率達成企業に対して調整金、報奨金を支給するとともに、障害者の雇用の促進等を図るための各種の助成金を支給している。

  つまり「ムチとアメ」の両面でサポートしている訳だが、法定雇用率の達成企業が頭打ちな原因として2つ考えられる

 

 一つ目は「障がい者雇用」への理解度がまだ浸透しきれていないというか、会社側の受け入れ体制が整っていないという事情、もうひとつは、制度面の「ムチ」の弱さだろう。

 

 障がい者雇用への理解は進みつつあるものの、実際に仕事をしてもらうにあたって「どのような」仕事を「どのように」任せればいいのか、まだ手探り状態の会社は少ないだろう。

 特に平成18年以降は、それまでの「身体障がい者」「知的障がい者」に加えて「精神障がい者」が対象になっており、一見して他の障がいに比べて障がいの内容が掴みにくいことも影響している可能性はある。これは時間をかけて解消させていくしかないだろう。

 

 もうひとつの要因である「ムチ」だが、雇用率未達成の場合不足一人当たり月額5万円が徴収される。これが高いか低いかは議論の余地があるだろうが、経営者が労働生産性を重視して「納付金を支払ってもそれ以上の利益を稼げげれば構わない」と考えている場合は、このままでは効果は望み薄だろう。

 

 もっとも、未達成企業に対しては、「適正実施勧告」「特別指導」を経て、改善が見られない場合は企業名の公開に踏み切っており、実際に平成28年度の「障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく企業名公表等」では東京の2社が公開されている。ちなみに29年度は2社とも改善されたため企業名の公開はゼロとなった。

 

 ここまで厳しい処分を受けるまで障がい者雇用を拒否し続けた企業も企業だが、会社名の公開に効果があることも実証された形だ。

 ただし現状では、会社名の公開までは、障がい者の雇い入れ計画(2年)の作成命令を実施後、改善が遅れている企業に特別指導(9カ月)を実施したあとの公表というスケジュールとなっており、この2年9カ月という期間を短縮することは検討する価値はあるだろう。

 

 来年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、社会のムードが盛り上がる中で、障がい者雇用への認知度や理解が一段と進めばよいのだが

「関数電卓」にみる日本教育の特殊性――「電子辞書」とは事情が違う

カシオの関数電卓、地味に2000万台売れる理由(東洋経済オンライン)

劉 彦甫 : 東洋経済 記者

 

 カシオという会社から製品として何を思い浮かべるだろうか。

 個人的にはかつての「デジタルはカシオ」というCMのキャッチコピーから「デジタル時計」や「電卓」を思い浮かべるのだが、10月6日付けの東洋経済オンラインには、「カシオの関数電卓、地味に2000万台売れる理由」として、カシオの「時計」とならぶ二大事業柱である「教育事業」の主力を占める「関数電卓」の動向を解説している。

 

 世間一般的には「G-ショック」に代表される腕時計の会社として認知されていると思うし、実際に同社のWebサイトを見ると、最上段に大きく画像で紹介される商品は「時計」が半分を占める。その下の製品情報でも序列は「時計」から始まって、「電卓」は5番目。それでも、正式社名は「カシオ計算機」なのである。

 

 汎用性のある普通の電卓はそれこそ100円ショップでも売っているし、オフィスで事務に使うある程度の大きさのしっかりした卓上サイズの電卓も1000円台から購入できる(12桁卓上電卓の例)。

 

 これが関数電卓となると、価格帯が2500円から4000円台へとアップする。ボタンは増えるが、内部の部品に大きな変更はないだろうから利益率は高い。記事では関数電卓の売上高営業利益率は16%と、全社の利益率10.1%と比べても高収益だ、としている。

 

 この関数電卓、近年台数を伸ばしているのは東南アジアなどの新興国だそうだ。数学を効率よく学習するために、ベトナムなど数十カ国で関数電卓による数学教育法を普及する取り組みを行っているそうだ。

 

 翻って日本では、関数電卓の存在感は薄い。一部の理系学生などでは必須だろうが、そもそも電卓は、手計算の手間を減らすという目的でしか使われていないのが現実だろう。普通の電卓にも標準装備されていて、使いこなせば便利なメモリーキー(Mキー)ですら使う人は少ないはずだ。

 

 ではなぜ日本の教育現場で「関数電卓」が普及しないのか。この疑問に対する回答が記事にある「現場の高校の先生たちが関数電卓による教授法を知らないうえ、手計算を頑張ってきた自らの成功体験が捨てきれない」という「教育者側」の事情だ。

 

 これを教育者の怠慢と非難することは容易だが、「関数」を「四則演算」と同じレベルに考えていいのかは疑問も残る。

 私は数学に詳しい訳ではないが、例えば「標準偏差」を計算する場合、大量のデータを手計算で行うのは非合理的なのは分かるが、標準偏差の意味やその計算式を知らずに、ボタンひとつで結果が出てしまうのは、便利の一言で済まされるのだろうか。

 

 もちろん関数を、「数学」のツールとして活用するのか、「計算」の効率化として使うのかで意味合いが違うとは思うが、少なくとも「数学」として利用するのであれば、まず最初に数式を覚えて、計算を紙に書いて、結果を導きだすという手間は、関数の種類にもよるだろうが、「無駄」ではないと思う。一度関数の仕組みを知ってしまえば、あとは電卓で済ませても何の問題もないと思うが。

 

 このあたりの事情が、「手間」の問題だけで「紙の辞書」が「電子辞書」に置き換わったのとは事情が異なると思う。

 

 あとは、社会環境の変化の影響も大きい。「英語」については、文部科学省が2011年から小学校での英語教育の必修化、2020年から同教科化の導入(P15)を決めており、教師を中心に学校側が英語教育に真剣に取り組まざるを得なくなった。

 古参教師の「紙の辞書に慣れしんだ」などという「電子辞書」を回避する言い訳が通用しなくなったのである。

 

 また同じく2020年からは小学校の「プログラミング教育」も全面実施される。学習活動はAからDまでの分類があり、実際にプログラミング言語に触れるのはCレベルからのようだが、プログラミングに「関数」の概念は必要不可欠だろう。

 英語と同じように、教師が「必要に迫られれば」、プログラミングや関数を勉強せざるを得なくなる。

 結果として、関数が身近なものになれば、関数電卓の利用価値が見直される可能性がなくはない

 

 「なくはない」という表現を使ったのは、スマホやタブレットの普及で、入力機能の工夫や計算結果の表示の多様性では、専用機である関数電卓よりも有利な面も少なくないと思うからだ。

 

 記事では、「認知度が高まれば、いずれ日本でも関数電卓への理解が深まり、普及するかもしれない」としているが、個人的には今後「関数」への関心は高まっても「関数電卓」の売り上げ増につながるかは疑問だ。

 

 カシオもコンパクトデジカメ市場では、「エクシリム」ブランドで一時人気を集めたが、スマホカメラの普及で2018年に撤退した。過去に参入したワープロ、パソコン事業も今はない。

 これらに共通しているのは、新しい技術が社会に普及しても「より洗練された機能や利便性を持つ製品しか生き残れない」という事実だ。

 

 関数電卓が日本で普及するとすれば、より高度な機能がより簡単に使えるという優位性をスマホより発揮できた場合だろう。