如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

メンタル強化には「公助」「共助」が重要というけれど・・・

佐藤優が説く「下品な人に心削られない働き方」(東洋経済オンライン)

佐藤 優 : 作家・元外務省主任分析官

 

 「知の巨人」とも呼ばれるほどの読書量で有名な作家で、元外務省主任分析官の佐藤優氏の「佐藤優が説く『下品な人に心削られない働き方』」というタイトルの記事が2月14日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 

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 内容を要約すると、今や格差社会となった日本で「勝ち組」として成功しているのは、「特異な能力があるか、あるいは親の遺産を引き継ぎ、最初からスタートラインが違っているか、さもなければよほど図太く、図々しい人物」と指摘、なかでも「図々しい」ことが必要不可欠で、これを「下品力」と表現している。

 

 この「下品力」をもつ人が管理職として幅を利かしている会社組織の現状では、これに対抗して生きるには「自分自身の内面を強くしていくこと」「自分を取り巻く環境を変えていく」の2つが必要だと解説している。

 

 私の感想を言えば、「おっしゃることはもっともだが、対応できる人はすでに対応済で、問題はこの2点を実行しようと頭では理解できても、実際に行動に移せない人が大多数ではなかろうか」である。

 

 佐藤氏の言いたいことは理解できるのだが、「自分の内面を強くする」というのは、言い換えれば「他人の余計な干渉を受け入れない」ということで、これに必要な「自己規律」を確立、維持するのは結構しんどいと思う。

 あえて対応策を挙げれば、個人的には「読書」が最も手軽で効果的だと思っている。他人の考え方や発想を取り入れることで、自分の生き方の参考になるはずだ。読解力が必要ではあるが。

 

 まだ「自分を取り巻く環境を変えていく」の方が、現実的だろう。職場でストレスを感じているなら、異動願を出すか転職を検討するとか、上下や利害関係のない趣味などのコミュニティに入るというのもひとつの手段だろう。

 

 記事では最後に「強く生きるためには『自助・公助・共助』の3つが重要」としたうえで、とくにポイントになるのが「公助」と「共助」だと強調している。「公助」とは国や地方自治体のサービスで、「共助」は仲間同士で助け合うということを示す。

 

 これに対しては、やや同意しかねる内容だと感じた。というのも知り合いの消防団に40年勤め、消防団長になった人から聞いた話だが、自然災害の場合、現実に助けになるのは「自助7割」「共助2割」「公助1割」であり、あくまで「自分の身は自分で守る」が大原則だと言っていた。

 「自然災害への対応」と「人生を強く生きる」ことは別物との意見もあるだろうが、「生き延びる」という点では五十歩百歩である。やはり優先すべきは「周囲の環境」よりも「自身の変化」ではないだろうか。

 

 また、高齢化が進み、結婚しない人も増えた結果、一人世帯の比率は年々増加、総務省の「平成30年版情報通信白書」によれば、2040年には単独世帯の割合は約40%に達すると予測されている。自分の生活を自身で管理せざるを得ない時代はすぐそこにある。

 

 急増するセルフネグレクトによる孤独死などへの対応は喫緊の課題だが、行政がすべての世帯を常時把握するのは、民生委員の負担を考えれば現実には不可能だ。

 その観点からは「共助」「公助」も活用すべきではあるが、プライベートな個人の生活にどこまで踏み込めるのかは意見が割れるだろう。障がい者などを除けば、基本は「自助」で対応せざるを得ないはずだ。

 

 話はやや逸れるが、「他人と過去は変えられない」という言葉は、ストレスに悩む人がよく聞かされるフレーズだと思うし、私自身も常にこれを意識している。加えて個人的に意識しているのは「自分の価値は自分で決める」ということだ。

 この根底には「他人の評価で行動した結果、失敗した場合人のせいにすることになり、自身の存在価値を見出せなくなる」という危機意識がある。

  

 昨今の風潮を読むと、小泉純一郎内閣以降「自己責任論」があまりにも強まった反動で、「自己責任限界論」や「社会責任論」のような論調が見受けられるが、それ以前の日本があまりにも「お上の言うなり」になり過ぎていたのである。

 

 著者の言う「下品な人」になる必要はないが、「下品な人に囚われない品性」は、今後さらに重要になると思っている。