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「人を生かし」「利益を上げる」職場への処方箋、ヒントは意外なところに

 

残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実

2018年4月16日

 働き方改革が叫ばれるこのご時世、世間ではまだまだ根強く残る非常識、非効率な「残念な職場」の実態
とその解決策を取り上げた本である。

 筆者は、変化を嫌い、自分の保身だけを考え、既得権益にしがみつく人を「ジジイ」を定義、この「ジジ
イ」たちが会社の上層部を占めることで、無責任な人ほど出世するという職場が形成される、としている。

この指摘は私が「座右の書のひとつ」とし、筆者も取り上げている「ピーターの法則」にあるように、「階
層社会では誰もが無能レベルに達し、そこに例外はない」と合致する。つまり課長として有能で部長に昇進し
ても、その役割を果たせない無能者が社内に跋扈することになるということだ。

 また、女性の労働環境については労働を、商品としての労働力の「市場労働」と家事、育児、介護などの
「ケア労働」に分類。フィンランドなど北欧のように男女の区別なく両方の「労働」にアクセス可能とすべ
きとしている。

 他にも残業問題について、長時間労働が直接「過労自殺」を生み出すのではなく、その間に「オーバーワー
ク」「精神障害」という要因が存在するとし、職場における責任、ノルマなどの「ストレス要因」の軽減が必
要と結論付けている。

 以上のほかにも、様々な視点から「残念な職場」を論じているが、本書が多数の研究・調査からデータを引
用しているにも関わらずスーッと理解できるのは、引用にあたって「数字」でなく「文章」を多用しているた
めだろう。筆者の主張にうまく紛れ込むような形でデータが「引用」されているので、頭を切り替えなくても
内容が無理なく理解できる。

 最後に、本書では「会話」が会社のリソースを機能させる具体例として「ひと声がけ運動」が奏功した会社
を挙げている。「おはよう」の一言が上司と部下のいい関係につながったほか、休職率も大きく改善したそう
だ。

 残念ながら現在の日本には「残念な職場」がまだ多数派だろう。改善の必要性や方向性を検討する際に、
(無能な可能性ある)経営トップの「声」を背景にして大上段に構えて「解決策」を検討する会社が多そう
だが、意外に足元の「声かけ」といった地味な行為が解決への道筋につながるのかもしれない。

 追記:★4とした理由は、東芝の元社長・西田厚聰氏に関する記述です。筆者は西田氏の部下に対する配
慮など人間性を高く評価していますが、本来経営者は人財、資金などの経営資源の使い方というトータルな
「業績(経営力)」で評価されるべきのはず。ジャーナリスト児玉博氏が西田氏が亡くなる約2か月前に自宅
で3時間半に及ぶインタビューをしていますが、このなかで東芝の経営危機の原因となったWHの原子力事業
について「最後まで自分の責任を認めなかった」とあります。選択と集中でノートPCや半導体部門などで大
きな成果を上げたことには誰も異論はないでしょうが、反面、原子力事業ではどう見ても失敗に終わったこと
に対する責任を「断固として回避する」姿勢を見ると、西田氏も「加齢による無能化」という宿命を避けられ
なかったのだと思います。