如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

大卒/非大卒間の衝撃的な断絶の壁、学歴タブーに斬り込む姿勢は潔し

 

日本の分断 切り離される非大卒若者(レッグス)たち

2018年4月18日

 タイトルに惹かれて読み始めたものの、第1章「忍び寄る次の時代」、第2章「現役世代の再発見」は何を
主張したいのかポイントがつかめず退屈だったが、第3章「学歴分断社会」から一気に面白くなる(筆者も
第2章は第3章のための補助線だとしている)。

 その第3章で、社会的な経済的地位は「学歴」「職業」「経済力(稼ぎ)」の3要素からなるが、「職業」
「経済力」が不安定な時代となるなか、「学歴」は固定的で、根幹をなすものと定義している。そして、「現
代日本は大学に進学するかしないかが、その後の人生を分断し、それが世帯を超えて繰り返される」と断じて
いる。

 第4章では、現役世代を「壮年/若年」、「大卒/非大卒」、「男性/女性」の3区分から8つのカテゴリーに
分類、その人生の有利・不利を分析している(第5章も同様)。 
 結論の一部を紹介すると、
  最上位:壮年大卒男性:20世紀型の「勝ちパターン」
  最下位:若年非大卒男性:不利な境遇、長いこの先の道のり
となる。本書の定義によれば、この「若年非大卒男性」は約680万人、現役世代の11.6%を占めるという。

 続く第6章で、筆者は彼ら(若年非大卒男性)がいわゆる3Kの仕事に従事してくれるおかげで、大卒層は
自由な働き方ができるとし、社会的なサポートが必要と結論づけている。

 ここで個人的な感想を述べると、
 まず、現役世代を8カテゴリーに分類し、その社会的な「幸福度ランキング」を正々堂々と論じた点は高
く評価したい。筆者の言う「学歴による社会的な不均衡という現実を公言するというタブー」に切り込んだ
潔さも同様だ。

 ただ、現役世代の大卒と非大卒の比率がほぼ半々という現在の状況を前提に話が進むのには違和感があっ
た。
筆者も「すべての日本人が大学進学を望んでいる訳ではない」としているが、私立大学(短大含む)937校(
文部科学統計要覧平成27年版)のうち40%近くが定員割れを起こしている現状からみれば、そもそも通う価値
のある大学(最低でもFランクより上)は多く見積もってもせいぜい400校程度ではないか。

 つまり大学への進学率は現状の半分25%程度で十分であり、その分の国の補助金は専門性の高い専門学校や
高校に振り向けて、「大学よりも手に職を」という意志のある学生・生徒のスキル向上→企業の採用意欲アッ
プ→仕事を通じた社会貢献、という流れにする方が効果的だと思う。

 最後に、筆者は「若年非大卒男性」のことをレッグス(LEG`S:Light Educated Guys、軽学歴の男たち)と
名付けているが。この言葉がニート(NEET:Not in Employment, Education or Training)のように定着するか
スネップ(SNEP:Solitary Non-Employed Persons)のように忘れ去られるかは、学歴のタブーに斬り込んだ
本書が世間にどれだけ広まるかにかかっているだろう。