如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

心が疲れた人向けの格言集。「許す」のも「話す」のも苦手な人はどうする?

 

斎藤一人 しあわせセラピー

斎藤一人

2018年11月21日

 著者は、化粧品・健康食品の「銀座マルカン」の創設者で、2003年には納税額日本一になったという大金持
ちの実業家である。
 
 さぞかし「お金持ちになるための秘訣」が書いてあるであろうと思った人には残念だが、全180ページ強の
本文中に、「おカネ」という言葉は一言も出てこない。

 ではどんな内容かと言うと、一言で言えば「相田みつを」氏の格言集に近い。生き方のヒントというか、
人生に迷った時の心の支えのようなものだろう。
 
 という訳で、人生の成功者が「悟り」の境地から、思いついた言葉をひたすら書き連ねたような内容なので、
よほど自分の人生に落ち込んでいるか、困り果てている人以外には、あまり参考にならないような気がした。

 これは私的な偏見なのかもしれないが、「こういう発言をするのは社会的に成功して、おカネに余裕がある
からできるんでしょ」と、どうしても斜めに受け止めてしまうのだ。

 例えば、P16に「自分を燃やしながら周りを照らすロウソクみたいな生き方をしたい」とあるが、貧困の拡
大が問題視されるこのご時世で、自分を燃やしたら周囲を照らす前に自分が燃え尽きてしまう人が少なくない
だろう。こういう余裕のモノの言い方がどうにも気になる。

 著者がまえがきで書いているが、人間の心の「こり」を取るには、2つ方法があってひとつは「人や自分を
許す」、もうひとつは「人と話をする」だそうだ。

 とはいえ私自身、自分の性格を考えると「人を許せない」という感情が、「この野郎!」という発奮材料に
なってスキルを高め、問題や障害を克服してきたという自負があるし、基本的に人の言うことは鵜呑みにしな
いので、人と話をするよりは本を読む方が向いている。

 「許す」「話す」のどちらも苦手な人はどうすればよいのか?、私が読んだ限りでは回答は見つけられなか
った。

 とまあ以上、散々なレビューとなったが、最後に本書で数少ない参考になった言葉をひとつ紹介したい。
それは「欲にキリなし。地獄に底なし」(P130)だ。

 要するに「上を見ても下を見てもキリがない」ということなのだが、自分はどうしても良くも悪くも先の先
まで考えてしまう性質だけに、これは「普段から気に留めておかねば」と改めて感じた。