如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

「定活」で生きがいを探すための無理は無駄では?

適齢期は50代前半 定年後の準備、早めがいい理由(NIKKEI STYLE 定年楽園への扉)

経済コラムニスト 大江英樹

 

 定年後の生き方を指南するいわゆる「定年本」がここ数年大量に出版されている。多くは、仕事一筋で趣味らしい趣味もなく、家庭でもあまり居場所や存在感のない「お父さん」を対象にしたものだ。

 

 日本経済新聞の電子版の「NIKKEI STYLE」のコンテンツのひとつ「定年楽園への扉」に11月14日付けで定年前の準備活動いわゆる「定活」について、「適齢期は50代前半 定年後の準備、早めがいい理由」というタイトルの記事が掲載された。

 

 著者は野村証券で個人向けの投資相談などを長年手掛けてきた大江英樹氏。この人は最近でこそ定年本を量産し、各種セミナーや講演などでも引っ張りだこだが、60歳の定年直前まで定年後の何の準備もせずに起業・独立したという経歴を持つ。

 

 デビュー当初からコラムや著作を読んでいるが、大江氏については、自身の経験をもとに定年後の生き方に関するコラムなどをメディアで書き始めたら、「定年後」と言う現代の注目テーマの波にうまく乗って、ビジネスを展開・成功したという「運」にも恵まれた人だと個人的には思っている。

 

 直接お会いしたことはないが、別名ノルマ証券とも呼ばれる天下の野村證券で、個人向けの投資相談業務を長年手掛けて定年まで勤め上げたという人は相当少ないと思う。年齢からみても平成のバブルとその崩壊を目の当たりにしている訳で、個人的には、「定年後の生き方」よりも「天国と地獄のなかをどうやって生き残ったのか」に関心がある。

 

 話は逸れたが、本題は「定活」である。

 記事を要約すると、「定活」は仕事で脂が乗った40代では早すぎて、出世競争に決着がついた50代前半が望ましい。ただ、50代後半でも十分間に合う、という点がまずひとつ。

 そして、次に「定活」の具体的なポイントとして

  1. 自分がやりたいことを明確にする
  2. 友人の幅を広げておく
  3. 健康を維持する

 の3点を挙げている。

 

 これに対する現在50代後半の私の対応は、1については「試行錯誤中」、2は「いまさら広げるのはストレスになり無理」、3に関しては「自宅でサイクルマシンを1日30分漕ぐ」、という状況だ。

 つまり1が最大の問題なのだが、これは多くの同世代のサラリーマンに当てはまると思う。問題は「何がやりたいことなのかをどうやって見つければいいかが分からない」ことではないだろうか。2と3は個人差が大きいだろう。

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 私の場合は、「熱しやすく冷めやすい」という性格も影響しているのだが、長年続いている趣味がほとんどない。酒は飲まないし、ゴルフもしない。ゲーム機やカメラ、DVDの収集、鉄道模型などに凝った時期もあったが、せいぜい続いて数年だった。

 あえて挙げれば、年に1、2度行く程度の競輪ぐらいだ(一応30年ぐらいは続いている)。

 別に入社以来「仕事一筋」と言うほど仕事熱心な訳でもなく、55歳で役職定年を迎えて、あと数年で本当の定年を迎える。その後は「再雇用」ということになる予定だが、「これ」といった人に言えるような「生きがい」が今のところ見当たらないのである。

 

 それでは、今の「生きがい」がない状況に不安を抱えているかと言うとそうでもない。勢古浩爾氏の著作「定年バカ」(SB新書)の影響を受けた面もあるのだが、定年前と定年後で生活に「区切り」を付ける必要があるかどうかは、本人が決めればいいと考えている。

 

 つまり私の場合で言えば、定年に関係なく「やりたいこと」があればやればいいし、なければ「なにもしない」もありで、定年後の生活に特に支障はないと思うようになったのだ。

 

 大江氏の言う「やりたいこと」というのは「生きがい」とほぼ同義だと思うのだが、人生後半に入ってから苦労して生きがいを探して、おカネや時間を費やすのは「無駄な努力」に終わることも多いのではないかと思う。

 「陶芸」「絵画」「山登り」が3大老後の趣味という話を聞いたことがあるが、どれも60過ぎから人に評価されるレベルに達するには大変な労力がかかりそうだ。まあ、本人が好きで納得しているなら、他人がとやかく言う話ではないのだが・・・。

 

 では、私自身がどういう定年後のイメージを持っているかと言うと、情報収集のための高いアンテナを立てて、常に何か面白そうな「モノ」や、自分にもできそうな「コト」を探し続けるという生き方だ。

 

 アンテナが探知するのは、新聞、雑誌やテレビのメディアもあるが、毎月届けられる自治体の市報や、近場の公民館などからも様々なテーマの講座やセミナーなど活用できそうな情報は結構得られる。費用も格安だ。

 最近では、大学も社会人やシニア向けの公開講座を開催していて、これを聴講するのも面白いだろう。

 あた、健康に配慮して「ウォーキングや散歩」をする人が増えているのは良い傾向だが、今は電動アシスト付き自転車という便利なツールもある。これだと行動範囲は徒歩よりも飛躍的に広がるので、アンテナに引っ掛かる情報も格段に増える。

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 つまり、私が定年後の生活で興味を持っているのは、「生きがい」そのものではなく、生きがいを探す「アンテナの性能」なのだ。これはあくまで個人的な考えなのでご参考までにということで。