田代まさし氏覚せい剤で4度目の逮捕、依存性と常習性の恐ろしさ(ダイヤモンドオンライン)
「ああ、またか」と思った人も多いのはないか。
タレントの田代まさし疑者が、覚せい剤取締法違反の容疑で逮捕された。今回で4度目である。
この逮捕劇の顛末と田代容疑者の過去の経緯などを解説する記事「田代まさし氏覚せい剤で4度目の逮捕、依存性と常習性の恐ろしさ」が11月16日付けのダイヤモンドオンラインに掲載された。
このニュースを聞いて私が個人的に感じたのは、依存症もアルコール、ギャンブルなど様々だが、覚せい剤からの依存が他に比べて「かなり」困難だということだ。
アルコールとギャンブル(一部を除く)は成人であれば合法で税収も見込めるので、社会的にある程度までは嗜好の一部として容認されている訳だが、人間を破壊する「覚せい剤」の使用・販売には当然ながら厳罰があってしかるべきだとは思う。
問題は記事後半にも書かれているが、取材した警部の話として「(覚せい剤の利用者には)ほぼ被害者という容疑者もいた。懲役はあまり意味がない」という発言を紹介、また元組長は「目を付けた女性に『栄養剤』などと言って使わせる。一度使うと抜けられない。常連の『お客さん』は女性が多かった」と覚せい剤利用の実情を解説している。
あらゆる依存症からの脱出には、本人の「やめたい」という意志が最低条件として必要なのだが、自分から望んで覚せい剤の世界に踏み込んだのではなく、騙されて常習者となった人たちには「自分は被害者」という思い込みもあるだろう。個人的には、それでも騙される側の責任は大きいとは思うが。
記事では、覚せい剤は、度やったら、骨の髄までしゃぶられる」ということで「シャブ」と呼ばれる、という話や、先の組長が「好奇心とか、試しにとかで、絶対にやるな。あれは麻薬じゃない。『魔薬』だ」という発言を紹介している。
脳を刺激してドーパミンを出させ興奮状態になるという点では、どの依存症も同じなのだろうが、その刺激性と依存度の高さから、厳しい「取り締まり」の対象になっているのだろう。
問題は、アルコール依存症については、アルコホーリクス・アノニマス(AA)という世界的規模で活動する団体があり、日本でも600以上のグループがあり5700人以上がメンバーになっているほか、日本独自の組織として「全日本断酒連盟」があり、こちらは約1万人の会員がいる(WEbサイト「断酒のすすめ」より)。日本で初めて「アルコール専門外来」を設置した久里浜医療センターも有名だ。
またギャンブルについては、GA日本インフォメーションセンターが窓口となって、全国193のグループが活動している。
これに対して覚せい剤を含む薬物依存症対策の団体は日本ダルクが有名だが、59団体(95施設)しかない。
これは、合法的な嗜好や趣味から依存症に至った人々を「患者」としてケアされるのに対して、薬物の依存症者に対しては「犯罪者」として扱うためだと思われる。
つまり同じ依存症でも、「治療」で対応するか「刑罰」という社会的制裁を与えるかという大きな違いがあるのだ。
もうひとつ気になる「薬物依存症」に関する最近の報道について。
それは欧州、北米を中心に大麻(マリファナ)の民間人の利用を解禁する国・地域の増加だ。
特にオランダでは街のコーピーショップで早々とマリファナを吸引する光景が日常らしい。北米ではカナダが合法に、アメリカでも州よって合法とされている。
この背景には、マリファナは「アルコールほど精神依存が強くない」といった論調が世界各国で高まっているほか、合法化することで「非合法組織の活動資金源を断つ」という目的も大きいと思われる。
ただ、個人的には、大麻の合法化にはまだ慎重な議論が必要だと思っている。
というのも、アルコールも最初は「とりあえずのビール一杯」、ギャンブルも「たまたま入ったパチンコで大当たり」といった、ちょっとした「きっかけ」が入り口となって、どんどん深みにはまっていくのが常だからだ。
これは薬物にも当てはまるはずで、最初の大麻が、エスカレートして覚せい剤に行き付く可能性は決して小さくないだろう。
覚せい剤の依存症者を、「刑罰」だけで解決できるのか、犯罪者の「自己責任」で放置してよいのか。
また世界的な傾向だからと言って、軽々しく「大麻」を合法化してよいのか。
社会的な合意のためには、まだまだ議論の余地は大きいと思う。