如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

株式投資の基本は「自分の投資スタイル」を確立すること

お金持ちになりたい投資初心者がとるべき戦略(東洋経済オンライン)

益嶋 裕 : マーケットアナリスト

 

 投資初心者に向けたアドバイスは巷に溢れているし、その内容も千差万別だが、投資にあたって最初に理解するべき事項を明快、簡潔に解説した記事「お金持ちになりたい投資初心者がとるべき戦略」が10月30日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 

 結論から言えば記事のポイントは4つ。一つ目は「情報収集する際に自分自身の頭で考えること」。

 まあ、普通の人にとっては命の次に大切なおカネの事なのだから、自己責任で投資するのは当たり前の話なのだが、これが未だに十分には理解されていないのが実情だろう。

 

 最近では郵便局の不適切な保険商品の販売がクローズアップされたが、証券会社や銀行などでも、外貨建ての保険や毎月分配型の投資信託など、商品の仕組みを十分に理解せずに、セールス担当から勧められるがままに高齢者を中心に投資する事例が後を絶たない。

 これらの商品は金融庁が、平成27事務年度版金融レポート「ほぼ名指し」で注意勧告した“曰くつき”の金融商品であるにも関わらずである。この辺の事情は、ライバル誌ダイヤモンド・オンライで山崎元氏が「金融庁がダメ出しする運用商品ワースト3」として詳しく解説している。

 

 話をもとに戻すと、雑誌やニュースなので紹介される専門家と呼ばれる人達のコメントを鵜呑みにして「投資」するのは、「投資したつもり」になっているだけである。

 

 その理由としては、こういう投資家に限って、「儲かれば自分の才覚、損をすれば人のせい」にする傾向が極めて強い傾向があるように感じるからだ。

 

 ポイントの2番目が「当たるも八卦当たらぬも八卦」、3番目が「もし予想が外れたとしても、専門家はあまり傷まない」だ。

 

 あくまで予想なのだから、ギャンブルと同じとは言わないが、投資が百戦百勝だとしたら、それはインサイダー情報を掴んでいるとか「不正行為」による可能性大だろう。

 注意すべきは、投資初心者であっても、こうしたインサイダー情報による取引に関われば「有罪」は免れない。しかも捜査対象には「儲けた」場合だけでなく、「損した」場合も含まれるのである。

 

 こう考えると、アナリストや株式評論家の発言が「ありきたり」なものにならざるを得ない理由が分かるはずだ。逆に専門家が自らの発言によって予想外に相場が荒れたら「相場操縦」への関与さえ疑われる可能性すらある。

 

 最後のポイントは、「自らの確固たる投資哲学を持っている」こと。

 90歳を超えてなお現役の株式投資家である英文学博士・外山滋比古氏が近著「お金の整理学 (小学館新書)」でも書いているが、外山氏が60年以上株式投資を続けていられるのも、自分なりの投資手法を確立しているからに他ならない。この本については当ブログでも4月11日に「文学博士、老後の「おカネ」を語る。お薦めは株式投資」で書評を書いている。

 

 私自身も30年以上の株式投資歴があるが、当然ながら儲かることもあれば損失を被ることもある。リスクあっての投資なのだから当然ではある。

 

 ただし重要なのは、記事にもあるが「利益や損失を出したこと」ではなく、「どうしてそうなったか」を考えて、経験として自分の投資手法を改善させていくことなのだ。

 

 加えて言えば、投資手法は投資家の数だけ存在すると言ってもいい。言うまでもなく運用に回せる金額、投資期間などは人によって異なるからだ。

 

 投資の世界に「絶対はない」というのはよく聞かれるが、自分の投資スタイルを確立していない人が長期的に投資を続け、成果を上げられることは「絶対にない」と言っていいと思う。