残業の9割はいらない ヤフーが実践する幸せな働き方
2018年7月25日
週休3日制度を打ち出して注目を集めたヤフーの常務執行役員が、同制度の意味と目的並びに、現在の「働
き方改革」及び「成果主義」の問題点と解決策を解説する本である。
タイトルは「残業の9割はいらない」となっているが、具体的に残業がどの程度減らせるといった内容はな
タイトルは「残業の9割はいらない」となっているが、具体的に残業がどの程度減らせるといった内容はな
く、「おわりに」にあるように、「正しい成果主義が実現した未来の状況」をイメージしてこのタイトルにし
たそうだ。
本書によればヤフーの働き方改革には、「企業として勝つため」と「社員が幸せになるため」という2つの
本書によればヤフーの働き方改革には、「企業として勝つため」と「社員が幸せになるため」という2つの
明確な目的があるという。
企業として勝つためには優秀な人材の確保は必須であり「働きやすい会社」というイメージが重要であるこ
と、また、そこで働く社員が幸せになれない企業は長期的な成長は難しい、との考えが根底にある。
以上の考え方に異論はない。ただその条件として「頑張った」ではなく「成果を上げた」を評価する仕組み
以上の考え方に異論はない。ただその条件として「頑張った」ではなく「成果を上げた」を評価する仕組み
が正しく機能する必要があるだろう。本書にもあるが目標管理制度を導入している企業でも、5段階評価の真
ん中と評価される比率が異様に多いという本来の目的から外れた運用も見られるようだ。
ただ個人的に感じたのは、従業員が成果に応じた報酬をもらうのは当然としても、その人員構成は当然なが
ただ個人的に感じたのは、従業員が成果に応じた報酬をもらうのは当然としても、その人員構成は当然なが
ら「ピラミッド型」に、賃金構造は「逆ピラミッド型」になる訳で、ピラミッド上位の人は多額の報酬を受ける一
方で、中位以下の人は現状より減額されるだろう。こうなると現在の給料よりも「増える人」よりも「減る人」
の方が多いのではないかという懸念がある。当然評価が低ければ社内では不要な人材として扱われるのは避け
られない。
また、一部の外資系企業では毎年下位層の一定比率はリストラの対象になるようで、会社としては実に効率
また、一部の外資系企業では毎年下位層の一定比率はリストラの対象になるようで、会社としては実に効率
的な人的資産を確保している訳だが、社員の抱えるストレスは半端ではないだろうし、この仕組みが広まれば、
社会全体としては「貧者の再生産」を繰り返す結果になりはしないか。
「成果主義とはそういうもの」と言ってしまえばそれまでだが、大企業から中小企業までこの流れが強まれば、
「成果主義とはそういうもの」と言ってしまえばそれまでだが、大企業から中小企業までこの流れが強まれば、
個々の企業としては成功しても、社会全体としては可処分所得の減少に繋がり、消費の低迷を招く可能性はな
いだろうか。
著者は給与が下がる事態も想定したうえで、能力や知恵を「学ぶ」ことによって長いキャリアを生き抜き、
著者は給与が下がる事態も想定したうえで、能力や知恵を「学ぶ」ことによって長いキャリアを生き抜き、
その後役職定年などで給料が減れば「下山」を考えて、それまでのビジネススキルを生かした働き方を模索し
ていけばいいとしている。
まあこれまでのように、「新卒で入社し→その会社でひたすら昇進を目指し→そのまま退職して→安定した
まあこれまでのように、「新卒で入社し→その会社でひたすら昇進を目指し→そのまま退職して→安定した
老後」という生き方が少数派になるのは確実だろうし、個人一人一人が自分の将来のキャリアプランを設計・
見直すのは、「自分の人生は自分で決める」という観点からも当たり前の話ではある。
最後の「終章」で著者は、老後の孤独対策として「コミュニティ」「信用」が重要だと説いている。コミュ
最後の「終章」で著者は、老後の孤独対策として「コミュニティ」「信用」が重要だと説いている。コミュ
ニティはともかく、ここで言う「信用」とは監視社会のようなものではなく、「人々がお互いにいいところを
評価することで、すべての人の信用度がポイント制のように目に見える社会」だという。
これは深読みが過ぎるかも知れないが、著者はここで自社ヤフーが手掛ける有力コンテンツ「Yahoo知恵袋」
のランキング制度のことを意図しているのではなかろうか。同コンテンツはQ&Aグレードとして「●人中■位」
ランキングが一目でわかる仕組みになっている。これこそまさに「ポイント制」のいい具体例だろう。(ちな
みに私もたまにYahoo知恵袋に参加しているがランクはとても人に言えるレベルではない)。
まあフェイスブックの「いいね」数などに比べれば、遥かにまともなポイント制ではあろうが、その意味で
まあフェイスブックの「いいね」数などに比べれば、遥かにまともなポイント制ではあろうが、その意味で
はAmazonのレビュアーランキングも今後評価が見直されるのかもしれない。