如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

人気企業ランキング、専門子会社の人気は望ましいこと

就活後半に選んだ「就職人気企業ランキング」(東洋経済オンライン)

宇都宮 徹 : 東洋経済 記者

 

 2020年の大卒、院卒予定者の「就活後半に学生に聞いた人気企業ランキング」が8月9日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 

 ランキングの特徴は2つあって、ひとつは回答者が1万人以上という大規模なアンケートで、上位300社までカバーしていること。もうひとつが「後半」というキーワードで、学生が業界研究や面接などを経て、「前半」より現実的に企業を見ている、という点にある。

 

 記事のサブタイトルには「総合商社人気強く金融離れ鮮明」とあるが、この表現では他社の人気ランキング傾向分析や、当ランキングの「前半編」とあまり変化はなく、面白みに欠けると思うので、ここは私独自の視点でランキングを分析してみた。あくまで私的な感想なので参考に留めてほしい。

 

 第一印象は航空、鉄道など「運輸」が上位にランクされていること。
 具体的には全日空(1位)、JR東日本(3位)、日本航空(6位)とベスト10に3社もランクインしている。しかも全日空は「前半」に続いて1位を維持、JR東日本は19位から3位にアップしている。ちなみに格安航空会社(LCC)スカイマークは24位に、JR東海も28位に登場する。

 これはインバウンド需要など海外からの観光客が猛烈な勢いで増加していることを背景に、学生が航空需要の拡大で業績が伸びることを期待しているのだと思うが、個人的には、運輸という「社会インフラ」を担っているという事業の将来の安定性へのニーズもあると思う。
 日本航空のように経営破綻で大規模リストラが行われることはあっても、空運という「移動手段」がなくなることはない。事業として消滅することはありえないのだ。これは鉄道にも言える。

 もうひとつ気になった特徴は、親会社よりも専門性のある子会社(関連会社)の人気が結構高いこと。
 例えば、21位のソニーミュージックグループは、親会社のソニー(43位)よりずっと順位は高い。
 NTTグループでも、主幹企業のNTT東日本の92位に対して、NTTデータは34位、NTTドコモは69位と上位にある。
 その他では、ジェイアール東日本企画(28位)、ANAエアポートサービス(41位)、三菱食品(44位)なども目立つ。

 いずれも特定の事業分野に特化した専門性の高い子会社だが、大企業の子会社(関連会社)というのがなかなか賢い選択だと思う。

 独立系の専門分野に特化した企業だと、顧客層や資金面などの経営基盤に不安が残るケースもあるが、大企業の関連会社であれば「相対的」に、社会的な信用度は高い。
 
 過去の人気企業ランキングでは、学生の大企業志向もあって、親会社の「知名度」に比例して人気化する傾向が強かったが、今の学生は自分のやりたい仕事を明確に定めて、その業務を専門的に手掛ける会社を目指すという「現実志向」が増えているように見える。
 これは学生にとっても、採用する企業にとっても望ましいことだと思う。
 
 終身雇用、年功序列などが崩れつつあるなかで、専門分野で仕事を体験し、「会社」でなく「業界」で通用するスキルを磨くことは、将来のキャリアアップなどいい意味での人材の流動化にもつながる。

 学生が、自分なりの価値基準をしっかり持って、業界分析、会社訪問を重ねて、志望企業を選んでいるという事実を、2021年以降の就職予定学生も参考にしてほしい。