如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

シェアトップ企業への対抗策は、真正面からの勝負を回避

湖池屋が「プレミアムポテチ」路線に走るわけ(東洋経済オンライン)

 常盤 有未 : 東洋経済 記者

 

 圧倒的なシェアを持つ商品を抱える企業に対応するには、まともに「真正面」からやりあっても通用しない。

 

 マーケティングの世界ではよく言われることだが、これを実践して業績を急回復させたストーリー「湖池屋が『プレミアムポテチ」路線に走るわけ』」が8月14日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 

 概要をまとめると、キリン出身のマーケッターで「生茶」などのヒット商品を手掛けた佐藤社長が、「業績低迷の理由を価格戦争に参入した結果と結論付け、素材と製法に徹底的にこだわった新商品を開発したことで、プレミアム商品として認知された」ということだ。

 

 確かに、ポテトチップと言えばスーパーなどの安売りの目玉商品として、ティッシュペーパー(5箱入り)と並んで陳列されていた記憶があるが、現在は少なくとも「湖池屋」の製品が安売りの対象になっていることはあまり見ない(例外は内容量126gといった大袋)。

 

 湖池屋の商品が変わったと感じたのは、やはり2017年発売の「KOIKEYA PRIDE POTATO」だ。じゃがいもの油揚げという点では同じなのだが、商品名をアルファベットにし、パッケージデザインもおしゃれなお菓子風に変わった。

 発売当時、すぐに購入して味見したが、味と風味にこだわりを感じた記憶がある。サイズも一人で食べきるにはちょうどいいサイズだった。

 

 湖池屋が、ポテトチップ市場で72%という圧倒的なシェアを持つカルビーに対応するには、価格での真正面からの勝負を回避し、記事にあるように「プレミアム化」という高価格路線に切り替えたことが成功要因であることは間違いない。

 

 高シェアを持つ商品に対応する価格戦略としては、「徹底的な低価格での勝負」か「高付加価値化で利益率向上」の2つしかない。

 

 湖池屋は後者で成功したいい例だろう。他ではコンビニの「セブンプレミアム」、カフェの「スターバックス」もそうだろう。

 一方、価格勝負という路線もまだ健在だ。100円ショップは完全に日常生活に組み込まれたし、ドン・キホーテのプライベートブランド「情熱価格」も話題を集めている(個人的には品質はいまいちだと感じているが)。

 

 いずれにせよ、売り上げもシェアもじり貧のシェア商品を再生させるには、先の2つの路線を徹底的に追及するしかないだろう。

 ただし、どちらが正解というものではないはずだ。日本の人口、世帯数が減少するなかで、一人暮らしの人たちが少量でも高品質の食品を選択するという見立てもあるだろうし、非正規雇用の拡大で給料・賃金の上昇も見込めないとの判断から、安売り商品を選ぶという考え方もある。

 

 ただ個人的な感想を言えば、いったん価格競争に走ると双方が徹底的に疲弊するまで続く「価格戦略」よりは、オリジナルの優位性を発揮でき、ブランド・価格も維持可能な「品質競争」の方が、中長期的な経営的という観点では優れていると思っている。