ホンダ「フリード」顔つきが少し変化した意味(東洋経済オンライン)
御堀 直嗣 : モータージャーナリスト
10月18日にホンダのミニバン「フリード」がモデルチェンジした。このモデルチェンジの概要を解説する記事「ホンダ『フリード』顔つきが少し変化した意味」が10月26日付けの東洋経済オンラインに掲載された。
当該ブログでもフリードに関しては9月1日に「フリードの購入は来年以降のフルモデルチェンジ待ちが正解」で書いたが、東洋経済オンラインの記事に「マイナーチェンジの内容は、主に外観の造形と安全機能の充実である」とあるように、機能面での大きな変更はない。
この時期に記事化されたのは、東京モーターショーが24日から一般公開されたことの影響が大きいだろう。(ホンダは新フリードについて9月30日のメールマガジンで発表済だった)
ただ、車専門誌ではないことを差し引いても、記事の中身は物足りない。前半はこれまでのモデルチェンジの経緯と現在の売れ行きの状況の解説が中心で、後半でこそ新型車の外観の変化や、安全機能の全車装備などに触れているが、どうにも「いまひとつ」の内容なのだ。
例えば、今回のモデルチェンジの目玉のひとつであるSUV感を高めた「CROSSTAR(クロスター)」については、わずか5行であり画像は2枚。しかもその特徴であるフロントグリルを映した画像が1枚しかない。
また安全装置についての内容も疑問を感じる部分があった。記事では「ホンダの運転支援機能であるホンダセンシングを、すべての車種に標準装備し、新たに後方誤発進抑制機能が追加されている」とあり、これは間違いではない。
ただ続けて「ホンダは、先に発売したN-WGNから、ホンダセンシングの機能をより進化させている。また、すべての車種への標準装備も始めた」とあるのはいただけない。
この文面では、新型フリードが「より進歩した」ホンダセンシングを装備したようにも受け止めることができるが、実際はそうではないのだ。
N-WGNの安全装置は「全車速対応型のオートクルーズコントロール(ACC」」という渋滞時に停止状態までカバーする機能と、その停止状態をブレーキペダルを踏まずに維持する「電動パーキングブレーキ」が装備されている。今回のフリードにはこの2つの機能はない。いわば「一世代前」のホンダセンシングなのである。
また購入予定者には気になる「価格」に関する記述がまったくないのも不親切だろう。
同じモデルチェンジの内容を伝える記事では専門誌「ベストカーWeb」の方が、ずっと詳しいし分かりやすい気がした。
まだ発売直後ということもあって、実車特にCROSSTAR(クロスター)の展示車、試乗車を置いている販売店は少ないが、来月以降順次配備されていくものと思われる。
ちなみに最新の車やバイクが見れて、カタログも受け取れるホンダのショールーム「ウエルカムプラザ青山」は現在改装工事中で、来年1月まで閉館しているので注意されたい。
個人的には、現在保有しているミニバンからフリードへの乗り換えを検討しているのだが、今回は見送ることに決めている。
その理由としては2つ。先に上げたホンダセンシングが最新型でない点がひとつ。もうひとつは、スライドドアの有無という違いを除けば、ほぼ同じモデルのフィットのフルモデルチェンジ車が東京モーターショーでお披露目され、新たなハイブリッド機能「e:HEV(イーエイチイーブイ)」を搭載しており、次回のフリードのフルモデルチェンジでの採用は間違いないからだ。
とは言え、フィットのハイブリッドといえば「リコールの代名詞」とも呼ばれるほどで、2013年9月のモデルチェンジから1年間で5回もリコールを実施している。
これについては東洋経済オンラインでも2014年10月に「フィットの不具合連発を招いたホンダの内情」で詳しく解説している。
ホンダは現在3つあるハイブリッドの機能を、新型フィットに搭載した2モーター方式のシステムに統合する意向を示しており、現行のフリードの1モーター方式が中止になるのは既定事項。
であれば、今回のフィットのハイブリッドの機能と評価が定まるのを待って、次期モデルチェンジ(2022年との見方が有力)のフリードを購入するのがより確実な選択だと思う。
フィットについて言えば、元々は10月の発表、11月の発売を予定していたが、電動パーキングブレーキの不具合が見つかって、発売は来年2月に延期された。
発売後のリコールではなかったという意味では「不幸中の幸い」かもしれないが、出鼻をくじかれたのは確実。つくづくフィットは「不運」はクルマだと思う。
フリードに話を戻すと、新モデル・クロススターに魅力を感じて、2代目(2007-2013)に乗っているひとは、車検に合わせて乗り換えるのもアリだとは思う。逆に現行の3代目に乗っている人には、あまり魅力を感じる変化はないし、乗り換えのメリットも少ないだろう。
個人的には、ライバルとされるトヨタのシエンタが今後どのような展開をしてくるのか、に注目している。特に安全装置の機能ではホンダに大きな差を付けられており、現在は強固な販売力という「力技」で売って好調を維持しているが、いずれ限界は来るだろう。
この1.5Lエンジンをベースにしたこのクラスのミニバン市場は、フリードとシエンタの真っ向勝負となっていて、他にはスズキの「ソリオ」(1.2L)が見当たる程度。
日産がこのクラスに参入してくれば、市場が活性化して面白いと思っているのだが、現在の混迷を続ける社内事情を考えると、期待できそうにない。