SUUMO新築マンション2019.12.24号
駅ナカで配布される新築マンションの無料情報誌「SUUMO」の年内最終号が12月24日に発行された。
今年春頃には掲載物件の減少によるページ数の減少で、週刊が隔週刊になり、東京市部・神奈川北西版はホチキス留めに変わるなど、逆風に見舞われた一年だったが、来年以降も発行は続きそうだ。
今回の特集は2つあって、ひとつは表紙に大きく書かれた「年収と家、7719人調査」、もうひとつが「2020住まいの10大トレンド」だ。
調査の方が表紙の文字は大きいのだがページ数は7で、特集記事としての掲載も2番目。記事としては、第2特集の「10大トレンド」の方が、内容も面白いし、ページも10ページと充実している。
その「10大トレンド」だが、「新駅」や「テレワーク」など関心をそそる内容が多いのだが、個人的に最も参考になったのは、番外編の「2020年は『買い』なのか」だ。
見開き2ページを使って、価格動向、供給、金利・税制の面から解説している。
元がフリーペーパーでデベロッパーからの広告収入で成り立っている雑誌に、多大な公平性、中立性を要求するのは無理であることは差し置いて、今回の記事で参考になったのは、番外編の「3人のプロに聞く!2020年以降のマンション価格予想」という記事。
住宅評論家など3氏が首都圏を中心に、大阪府、愛知県を含む全国12か所の価格予想をして、表にまとめているのだが、この予想が大きく割れていて、面白いのだ。
評価は、◎(上がりそう)、〇(現状維持)、△(下がる可能性も)の3段階なのだが、3人の評価にはすいぶん差がある。
3人のなかで最も価格予想に強気なのが、ニッセイ基礎研究所の主任研究員である吉田氏で、△の地域はゼロ、東京の都心と城南の2か所は◎で、残りはすべて〇となっている。つまり2020年以降もマンション価格は全国的に下がらないと予想している訳だ。
大手民間のシンクタンクの研究者が、ここまで強気の予想をする理由については書かれていないが、マンションの価格下落は中古では、すでに今年に入ってその傾向が見られることから考えても、都心とはいえ価格がこの先「上がる」というのはやや楽観的な予想に思える。
一方、不動産業界向けの会員ポータルサイトを運営するマーキュリーの片平氏は、◎はゼロ、〇も4地点で、残りの8地点は△となっている。ニッセイ基礎研の吉田氏とは正反対の弱気の予想だ。
その〇の地点も2か所は、吉田氏と同じ「都心」「城南」で同じ、残りの二か所は「城東」「大阪」となっている。
神奈川、千葉、埼玉の東京隣接県はすべて△で、首都圏郊外にはかなり厳しい予想だ。
この2人の中間的な評価をしているのが、住宅評論家の坂根氏。◎が5地点、〇が4地点、△が3地点とバランスを取っている。
◎は「都心」、「大阪」、「名古屋」など大都市圏に集中している一方で、「城南」の◎と「城西」の〇以外の「城北」などの東京3地点を△としており、東京以外の他のエリアよりも厳しい予想をしているのが目を引く。
個人的な意見だが、3氏の価格予想については、「記号」だけでは物足りない気がする。読者としてはその「理由」も知りたいのではないだろうか。
寸評として、編集部の簡潔なコメントが掲載されているが、見出しの「価格上昇するエリアも」というのはかなり苦しい。
というのも予想の一覧表を見れば、全予想36のうち、◎(上がりそう)は7つ、一方、△(下がる可能性も)は11か所と下落予想の方が多いのである。
まあ、雑誌の立場上、このような表現になるのは仕方がないのだろうが。
興味を引いたのは、吉田氏を除く2名が共通して△を付けたのが全12か所中、東京の「城北」と「市部」の2か所だけだったという点。
個人的には、このエリアでのマンション供給過多の影響だとは思うが、大阪(坂根氏は◎、片平氏は〇)よりも見通しが暗いのは気になった。
タダで配布されている雑誌の編集内容にケチを付けるのは大人気ないのかもしれないが、その記事の内容も受け止め方次第でマンションの購入予定者に十分「役に立つ」と思う。
SUUMO編集部には来年も、可能な限り購入者の目線に立った記事を掲載して欲しいものである。