如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

実現可能性の高いEVの未来図、無人タクシーは無料になる?

 

EVと自動運転――クルマをどう変えるか

2018年5月25日

 具体的なデータをもとに、EV及び自動運転の未来図を分かりやすく描いた本である。

 第1章では、自動車業界を取り巻く「モノ」から「コト」への環境の変化、第2章では独VWと中国の推進
するEV化の現状とFCV(水素電池車)の普及が困難な理由について、第3章では、自動運転の現状と問題点
について解説している。

 知っている内容もあったが、視点として面白かったのが「ブラウン管から液晶テレビへの移行は、エンジン
からEVへの移行に似ている」という指摘。

 液晶にもEVにも欠点は多いが、いったん主流の流れになれば技術革新が起きて一気に普及が加速するとい
う見立てだ。

 確かにEVのキモになる電池も「全個体電池」が低コストで供給されれば、航続距離の問題は大きく改善、
及に弾みは付くだろう。もっとも、電力会社の供給量を上回る勢いでEVの充電に必要な電力が必要になっ
た場合、不足分の電力をどう調達するのかという問題は残るが。

 最も興味深かったのは、第4章「自動車業界の未来」だった。様々なサービスが紹介されているが、タク
シー業界の未来では、コストの3/4を占める人件費が自動運転で無人化すれば料金は1/4に、1km当たり50円
になるという試算に加え、無人タクシーがネット広告でレストランと提携して、一定以上の金額をオーダー
すれば、タクシー代を無料にするという仕組みの可能性が紹介されている。

 確かに「サイトに誘導」するだけの通常のネット広告に比べて、実際に「客を連れてくる」効果は店にと
って絶大だろうし、客にとっても利便性、価格の両面でメリットは大きい。
 
 EV、自動運転については、様々な分野の専門家などが著作を出しているが、本書の著者は、自動車技術の
専門誌「日経Automotive Technology」の創刊を担当、同誌編集長を経て独立したという経歴の持ち主だ。

 自動車業界を「取り巻く環境」「専門的な技術」などを幅広くかつ、具体的な比較を交えて分かりやすく
解説する本としては、良書だと思う。