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栄枯盛衰の激しい居酒屋業界の歴史に迫る。黎明期は「朝食を夜10時に」

居酒屋チェーン戦国史

 

2018年10月10日

 外食業界のなかでも特に競争が厳しいのが「居酒屋」だ。参入障壁が低く、素人でも300-400万円もあれば
開業できるが、3年で5軒に2~3件は閉店するという(P20)。

 第一章では、この居酒屋チェーンの、元祖である「鮒忠」がウナギの露店から始まり、ブロイラーの鶏肉を
使った焼き鳥で大きく発展(78年に100店舗)したことに触れ、その後の居酒屋ブームの草分けとして紹介し
ている。著者曰く「焼き鳥の父」だそうだ。

 続く第二章では、業界の先駆者「養老乃瀧」、初の上場企業となった「天狗」のテンアライドを紹介してい
るが、特に目を引くのは養老乃瀧の直営一号店(56年開業)のすさまじい仕事ぶりで、「従業員は朝飯を夜の
10時に食べる」こともたびたびあったという。この努力に加え、作業の標準化によるフランチャイズ化の効果
もあって、65年には100店舗、73年には前人未到の1000店舗を実現する。

 また著者は木下社長の回顧録から「酒は売るもの呑まぬもの。売って儲けるためにある」という言葉を紹介
している。社長にとって酒はあくまで「儲けの道具」だったのだ。
 
 第三章では、御三家と呼ばれる「大庄」(庄や、やるき茶屋など)、酎ハイを商品化した「村さ来」、北海
道発祥の「つぼ八」の3社を創業から現在までの経緯を解説、続く第四章では、御三家がバブル崩壊で行き詰
まるなか、「ワタミ」(和民など)、「モンテローザ」(白木屋、魚民など)、「コロワイド」(三間堂、北
海道など)の新御三家の台頭とその特徴を詳しく説明している。

 この第三章と第四章で約120ページと文章全体の約半分を占めている。私自身学生時代によく利用した村さ
来(当時私は最初に店名を聞いた時『紫』だと思っていた)の話のなかで、よく飲んだ酎ハイ240円の原価が
数十円という指摘を知って、貴重なアルバイト代が随分店の利益に貢献していたのだと思い知らされた。やは
りお酒は「儲かる」商品なのだ。

 最後の章で、居酒屋は「総合型」から「専門店型」に移行しつつあるとし、「塚田農場」「串カツ田中」な
ど4社を紹介している。

 著者は、居酒屋は今後も独立開業した人たちが新しいブランドを立ち上げて、既存ブランドに仁義なき戦い
を挑む展開が続くと見ている。

 業態は異なるが、小売業でいわゆる伝統ある「百貨店」が衰退する一方で、ターゲットを絞り込んだ「専門
店」が堅調に推移しているのと状況は似ているのかもしれない。

 いずれにせよ、庶民の酒場である「居酒屋」が、おいしい料理やお酒をリーズナブルな価格で提供してくれ
る店舗を拡充してくれるのは、給料が伸びない巷のサラリーマンにとっては有難いことだ。もっともその背後
に「従業員の過重労働」や「極端な低賃金」があっては困るのだが。