如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

あぶないのは「中の上家庭」、紹介事例が盛りだくさん

あぶない家計簿 

横山 光昭

2018年11月14日

 貯められない家計へのアドバイスを得意とするファイナンシャルプランナー横山光昭氏の最新作である。

 日経新聞電子版で連載のコラム「もうかる家計の作り方」が元ネタなので、同コラムを読んでいれば内容が
被る可能性はあるが、本書で紹介される問題アリの家計の数は20以上あり、これだけの事例を読むと自分にも
思い当たる節がある人が多いのではないだろうか。

 著者が最初に伝えたいのは表紙の帯にもあるが、家計に問題があって貯蓄ができず、将来に不安を抱える家
計は年収800万円以上の「中の上家庭」が多い、ということだ。逆に年収400万円程度でも、しっかり貯金出来
ている人は少なくないそうだ。

 このやや意外とも思える結果になった最大の原因は「メタボ家計」にあると著者は指摘する。

 平均以上の収入があって貯蓄ができないのは、ブランド品などへの「浪費癖があるからだ」と普通は考えて
しまうのだが、実態はそうではないらしい。

 「格安スーパーより高いけど少しだけいい食材」などを無意識に選択しているうちに、この「ちょっといい」
志向が洗剤などの日用品にまで及んで、結果として総額は無視できないレベルの出費となっているという。

 ドカンと目につく買い物であれば、出費の原因も明確で対応は容易だが、ちょっとづつのコストアップが影
響しているとなると、まさに中高年の「メタボ体質」と同じで、意識していない間にじわじわと状況が悪化し
ていたということで、対応が遅れがちになる傾向はあるだろう。

 著者はこの家計のメタボ対策として、「支出の見える化」を提案している。実際に支出を一カ月集計してみ
ると本人が想定していた以上の出費に驚く家庭が多いそうだ。

 この背景には著者が指摘するように、クレジットカード、電子マネー、現金など支払い手段が多様化したこ
とも影響しているだろう。

 クレジットカードは利用明細書が毎月郵送されてくるので支出は確認できると思いがちだが、最近は電子明
細書が普及しており、必ずしも利用者が毎月Webサイトで確認している訳でもないはずだ。加えて「リボ払
い」を設定していれば支払い残高の確認はさらに困難だろう。

 実際に相当レベルまで家計が悪化している人はもちろん、「我が家もメタボ家計の可能性があるのでは」と
感じる人は、一読して損はないと思う。

 ちなみに、カードローンやキャッシング、リボ払いを現在使っている人は、まずそれを止めるのが先であ
る。これらは「節約」の対象ではなく単なる「浪費」だからだ。ま
 まあ、大きなお世話かもしれないが念のため。