如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

どう読んでも「中立を期して書いた」公平な分析とは到底思えない

 

リベラルを潰せ ~世界を覆う保守ネットワークの正体

金子 夏樹

2019年3月1日

 筆者はあとがきで、「可能な限り、中立を期して書くようにしたつもりだ」と、左派、右派のどちら側にも
偏らず、公平な分析をもとに本書を執筆したとしているが、読後の感想から言えば、どう見ても「左側」に寄
り添った内容である。

 例えば、「保守反動ネットワークは、敵失を見逃さない」(p244)としているが、安倍政権の敵失の追及
にこだわってばかりで、何ら国家の将来に関わる建設的な議論ができないのは日本の野党の責任ではないか。

 すべての野党の支持率を合わせても、自民党一党に大きく及ばないのは、自民党に代わる責任政党としてす
べての野党を国民が認めていないことの証左だ。まあ、自民党への支持もどちらかと言えば「消極的で、消去
法で仕方がなく」という側面があるのは否定しないが。

 まあタイトルが「リベラルを潰せ」なので、この手の話の進め方は本書を読む時点で分かり切った話ではあ
るのだが。

 個人的に問題だと思うのは、著者が本気で「公平な立場から書いた」と思っている可能性が極めて高いこと
だ。
 これは「左側」にいる人に共通するように思うのだが、どうも彼らの主義・主張は他人が見て「まだかなり
左に寄っている」と思えるぐらいが、彼らには「かなり妥協した真ん中」ぐらいになるのだろう。

 そういう前提で本書を読むと、「左側」の人の考える「中立的な立場」というものが理解できるという点で、
本書は役に立つと言えるのかもしれない。