10月1日の消費税率の10%への引き上げが確定、実施まで残り2カ月あまりとなった。
以前(5月4日)に当ブログで「ネット通販はヨドバシとAmazonで事足りる。税別価格表示の他社は論外」という記事で、ネット通販業界における「内税先行組」と「外税維持組」の現状を紹介した。
時期的にもいい機会なので、今回は今日(7月27日)に朝刊の折り込み広告に入っていたスーパーマーケットのチラシを検証したい。折しも今日は「土用の丑の日」なので、うなぎの販売広告の価格表示から比較する。
まずは最大手のイトーヨーカドーから。
外税方式を採用。目立つ内税価格表示の約10分の1ぐらいの大きさ(高さが5分の1、幅は2分の1)で「税込」として価格が記載されている。控え目な表示ではあるが、「白抜き」で比較的見やすい。
つぎは西友。
こちらは「外税」の価格表示だけで、税込み価格の表示がない。あくまで(税別)と表記しているだけである。消費税分は顧客が自分で計算しろという意味だろうか。不親切と言えなくもない。
次は住友商事系列のサミット。
こちらも「外税方式」だが、「本体価格」の表記とは別にそれより大きいフォントで「参考税込価格」と表示している。その価格表示の大きさも本体価格(税抜価格)と比べて、6分の1(高さは3分の1、幅は2分の1)とイトーヨーカドーよりも大きい。
最後が、地元では比較的評判のいいヤオコー。
こちらも税抜き価格。税込み価格も表示はされているが、大きさは税抜き価格の18分の1程度(高さ6分の1、幅3分の1)で今回税込み価格を表示しているスーパーでは最も小さい。
特徴的なのは、税込価格を小数点以下2位まで表示していること。消費者としては「そんな細かい数値を出すよりも税込み価格自体をもっと大きくしろ」と言いたくなる。
さて、以上スーパー4社の消費税表示方式を見てきたが、「イトーヨーカドー」と「サミット」は他社に比べてまだ良心的、「西友」は税込み価格の表示すらない時点でアウトである。「ヤオコー」は必要最小限の情報を仕方なく表示している感がアリアリだった。
今回の調査を踏まえて、全体の感想をいえば「外税方式」を採用している時点で、すでに小売り業界としては「周回遅れ」とも言える。
おそらく本社や店舗責任者は、ライバルを意識して「内税」に切り替えられないのだろう。折り込みチラシをパラパラと見る主婦にとっては、「見た目の安さ」にまずは気を惹かれるからだ。
自分のところだけ「税込」にして、他店と同じ商品を扱っているのに「見た目が高く見えてしまうことで、顧客に逃げられるのを避けたい」という売り手の気持ちは理解できる。
しかし、見た目の安さをエサにして、お客の関心を惹くというのは、消費者が税率引き上げなどで税への理解度を高めて、チラシの意図と本音を見破った場合、マイナスに作用する可能性もある。
私個人の感覚で言えば、今回の「西友」のように税込み価格を表示しないというのは論外である(この点ではドン・キホーテ、ユニクロなども同じ)。
現在まで物凄い勢いで業容を拡大し、スーパーなどの実店舗の顧客を奪ってきたネット通販業者を見ればその差は歴然だ。
主力商品は違うとはいえAmazon、ヨドバシカメラは完全な「内税」方式、楽天も「内税」に切り替えつつある。ネット通販で「外税」を前面に出しているのは身近な家電量販店ではビックカメラぐらいだ。
その家電大手2社だが、直近の売上高ではビックカメラが8440億円(2018年8月期)で、ヨドバシカメラは6,931億円(2019年 3月期)と1500億円近い差があるが、1店舗当たりの売り上げで見ればビックカメラの205億円に対して、ヨドバシカメラは301億円と約1.5倍の売り上げを出している。
ヨドバシは非公開企業なので売り上げの詳細は不明だが、ビックカメラの実店舗との品ぞろえに大差はないはずで、ネット通販「ヨドバシ・ドット・コム」が相当な比率を占めていることは間違いなさそうだ。このヨドバシ・ドット・コムの2大売り文句が「全国無料配送」と「全商品内税表示」なのである。
そもそも消費税の価格表示については、消費税法第六十三条で「事業者は(中略)当該資産又は役務に係る消費税額及び地方消費税額の合計額に相当する額を含めた価格を表示しなければならない」と定められており、税込み表示が大原則なのである。
とはいえ税率の変更による店の負担も大きいので、2021年3月までは特例として「税別表示」も認めるというだけの話なのだ。
10月から消費税率は一部生活必需品を除いて「切りのいい数字」10%になる。これを機会に是非ともスーパー業界にも「外税」方式を採用してほしいところだ。
ただ、その軽減税率(8%)の対象となる生鮮食料品などがスーパーの得意分野であることを考えると、残念ながら今後も「外税」が続くと考えた方がよさそうだ。