如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

キャッシュレス還元は課題も多いが、時代の流れ。大胆な優遇策の検討を

国のキャッシュレス還元がこんなにも酷いワケ (プレジデント・オンライン)

西田 宗千佳 ジャーナリスト

 

 10月1日に消費税率が引き上げられて1カ月。合わせてキャッシュレス決済を行った人向けに「ポイント還元制度」が導入されたのだが、このキャッシュレス還元の効果に疑問を投げ掛ける記事「国のキャッシュレス還元がこんなにも酷いワケ」が11月1日付けのプレジデント・オンラインに掲載された。

 

 キャッシュレス還元策については、当ブログでも10月1日に「中小企業『ヨドバシカメラ」のキャシュレス還元策に他社はどう対抗するか』で取り上げているが、今回紹介する記事は、導入から一カ月が経って、キャッシュレス還元制度の導入による現場の混乱ぶりを紹介する内容になっている。

 

 記事では、最後に「なんでも同時にやるのではなく、負担軽減や利用促進のためのアプリ開発といった準備を『ちゃんとしてから』やるべきだった」と指摘している。

 

 個人的には、この意見に賛同するが、増税とキャッシュレス還元は表裏一体の政策であり、「ちゃんと準備する」よりも「同時に実施する」ことの優先度が高かったのは明白で、キャッシュレス制度が運営側の方針で、種類、使い勝手、還元方法などが異なるのは、時間的制約などの面から仕方がないと考えている。

 

 ご存じのように、キャッシュレス還元を受けるには、従来からあるクレジットカード、SUICAなど交通系の電子マネー、最近急速に普及したQRコード決済の3つがある。

  政府は、キャッシュレス化を進めるべき対象に現金決済が主流の中小企業をターゲットにしており、ポイント還元率も中小店舗を高めに設定している。

  またクレジットカード、電子マネーは専用の読み取り装置が必要で、この導入、維持コストがバカにならない。加えて還元策が来年6月までの期間限定とあって、その後のコスト負担や顧客離れなどを考えると、実質的に中小企業にはQRコードの一択だろう。

 

 ただこのQRコードだが、各種メディアや周囲の反応を聞くと評価は二分されているように感じる。確かに手持ちのスマホが利用できるのは便利だが、実際に使うにはアプリを立ち上げて、QRコードを「読み取る」か「読み取らせるか」の手間が必要があり、カードで「ピッ」の電子マネーより使い勝手は劣る。

 

 記事にあるように店員さんにはQR決済に不慣れな人もいて、レジ処理に時間がかかるのを目撃したこともあるし、また私自身は10インチのタブレットは持ち歩いているがスマホは所有していない(ちなみに通話とメールはガラケー)。

 カバンからタブレットを取り出して支払うのは手間がかかるし、そもそも小売りのドン・キホーテのアプリではタブレット自体が利用できない。

 

 以上から私自身は、少額決済はSUICA、それ以外はクレジットカードを利用している。実際にこの方が決済にかかる時間はQRコードより短い(サインが不要な場合)。

 

 とはいえ、スマホの普及率がさらに向上し、導入当初の混乱が一巡すれば、QRコード決済を利用率は高まるだろう。現時点ではPayPayを中心に乱立して、混乱要因のひとつになっているQR決済だが、今後優勝劣敗が進み、上位数社に集約される公算が大きい

 過去には携帯電話も当初は、多くの事業者が参入したが結局大手3社に落ち着いた。

 

 新たな政策の導入にあたっては、最低限のルールを明確に定めたうえで、あとは企業努力が反映されるようにサポート・運営するのが政府・自治体の役割だと思う。

 下手に介入できるような制度にするから、利権を巡っての贈収賄や忖度、新規参入への躊躇などの遠因になるのだ。企業が特徴を生かした商品を展開し、その選択は消費者が決めればいいだけの話である

 

 ただ、QR決済も万能ではないと思う。まず電池が切れたら利用できないという物理的な要因と、QRコードを不正に読み取られるというセキュリティ上の被害がすでに起きていることが挙げられる。

 

 政府の意向もあって今後の決済がキャッシュレスに移行していくのは間違いはず。非合法なアングラマネーや脱税対策にも、マイナンバー制度の普及による相乗効果で有効だろう。

 

 キャッシュレス社会の実現には、国民の理解と協力が欠かせないが、期間限定のポイント還元では効果は小さい。

 私見だが、キャッシュレス決済の実績を集計して、その総額が所得に占めた割合によって、所得税を還付するといった「大胆」な政策があってもいいのではないか。決済が電子化されているのだから、集計も困難ではないはずだ。

 必要な予算は、キャッシュレス化による資金移動の効率化によってもたらされた削減コストを原資にすれば、十分可能だと思うのだが。