「マスクアレルギー」という症状
日本では現在、外出時にマスクをしていない人はほとんど見かけないと言ってもいいくらいの「必需品」になっている。
家電メーカーのシャープやパナソニックまでマスクの製造を手掛け始めるなど、マスクの絶対的な供給不足は明らかなのに、どうやってほぼ全員がマスク(しかも使い捨ての紙製がほとんど)を調達しているのか非常に疑問である。
このように外出時には不可欠という意識が常識化しているマスクだが、私は今年に入ってほぼ一度もマスクをしたことがない。こう言うと「どうしてそのような反社会的な行動を取るのか」という批判が聞こえてくるのは重々承知している。以下に「なぜ私がマスクを使わないのか」理由を述べたい。
最大の理由は、「マスクアレルギー」である。マスクをすると短時間で口の周りの皮膚がかぶれて炎症を起こすので、指で触ったりして逆にウイルス感染の可能性が高まるのだ。
これは一種のアレルギー反応のようなもので、私の場合顔面にできた傷やケガなどでも包帯や絆創膏などは使えない。塗り薬を使うだけだ。
つまりコロナウイルス感染防止のためにマスクをすると炎症を起こすので、塗り薬を使うことになるが、その薬の上にマスクをすると結局炎症が止まらないという状態になるのだ。
日頃お世話になっている内科医の先生も事情は承知しているので、 マスクは使わず、どうしても人との間隔が狭くなる際には「その時だけハンカチで鼻と口を押えればいい」と言われている。
ちなみに私は睡眠時無呼吸症候群という病気にかかっているのだが、この治療には睡眠時に機械で圧力をかけた空気を鼻から気道(空気の通り道)に送り込み、気道を広げて睡眠中の無呼吸を防止するCPAP(シーパップ)が有効とされている。この空気を送り込むのに鼻と口を覆うマスクが使われる。
過去にこのCPAPを使い始めてすぐに、口元のかゆみと炎症が止まらず、睡眠できない状態が続き日常生活に支障をきたしたため、こちらも医師の判断の上で中止した経緯がある。
また私がマスクを使わない理由は時期によって2つに分けることもできる。一つ目は1月から新型コロナウイルスが中国・武漢で感染が始まり、日本でも話題になり始めてから2月下旬まで。もう一つは3月に入ってから現在に至るまでである。
前半の時点では、マスクは自分が感染を予防するという意味と、咳やくしゃみなど自覚症状のある人が他者に感染させないという2つの点からマスクの装着率が急速に高まった。
この段階で私がマスクを使用しなかったのは、会社に超早朝出勤し、午後の早い時刻に帰宅するので、混雑する電車とは無縁で、感染リスクが少なかったこと。そして発熱や咳などの症状がまったくなかったためだ。私の記憶では電車内でマスクをしている人は半分ぐらいだったと記憶している。
これが後半になると「無症状でも感染者としてウイルスを拡散させるリスクがある」という話になり、世間では症状の有無を問わずにマスクが必須となった。
これに対して私が取った対応は、「自宅に籠る」である。幸いなことに勤務先では3月に入って希望者は在宅勤務が基本的に認められるようになり、通勤は不要になった。外出する必然性がなくなったのである。
とはいえ3月以降、食料品などの買い出しでどうしても外出する必要があったのも事実。これに対して私のとった行動は24時間営業のスーパーマーケットに朝の4時頃に行くことだ。
3月以降、結構な回数でこのスーパーを利用しているが、この時間帯に店内に客が3人以上いるのを見たことがない。確かに生鮮品などの品ぞろえは日中に比べれば劣るが、逆に賞味期限の近い格安の見切り処分品がそこそこ見つかるというメリットもある。レジでも買い物かごを置けば何も言わずとも店員さんが計算、決済してくれるので、会話で他人への感染を気にする必要もない。
ということで、現在の私は基本的に「自宅に籠り」、外出時は「朝の4時ころ」に限定することで、「3密」どころか人との接触もほとんどない生活を実践している。あとは気分転換に自宅近くを散歩するぐらいだ。
さて、今回の記事の趣旨は言うまでもないが「マスクをしない生活のススメ」ではない。あくまで世の中には「マスクアレルギー」という症状を持つ人もいるということを知ってもらうことだ。
言い換えれば、街中でマスクをしていない人を見ても問答無用で「加害者扱い」は避けてほしいというのが正直な感想だ。確かにこの時期にマスクをしていない人には「自分には関係ないし、他人の事はどうでもいい」という無責任な人の方が圧倒的に多いのは確かだろう。
これだけ「3密」が騒がれ、営業自粛が求められても一部のパチンコ屋は営業を続け、朝から開店待ちで並ぶ人もいるのが現実だ。
ただ日中街中ですれ違うマスクをしていない人の中には、私と同じ「マスクアレルギー」の人がいる可能性もある。悪気がないのは理解できるが、無条件に蔑んだ目で見たり、いきなり暴言を吐くのは勘弁してほしいと思う。