如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

不動産仲介業界の「反顧客志向」の改善が絶望的な理由

報公開されれば事態は改善するのだが・・・

 

 私が購読しているメールマガジンのひとつに廣田信子さんの「まんしょんオタクのマンションこぼれ話」というのがあるのだが、10月20日配信号を読んで「やはり不動産仲介業界の顧客を考えない独善的な営業姿勢が変わることはほぼ不可能」という印象を改めて持った。

 

            f:id:kisaragisatsuki:20201022114249p:plain

 このメールマガジンは、マンションの管理などを中心に多岐に渡る不動産業界を話題を毎日提供してくれるのだが、その内容の充実度と指摘の鋭さに毎回感服している。

 よくぞ毎回新たな視点から書けるものだと感心する一方で「そこまで管理問題で苦労話を取材、執筆するならマンションではなく戸建てに住めばよいのではないか」と戸建て派の私は思うのだが、それは別の話なので・・・

 

 さて、今回のメルマガのテーマは「『囲み込み』『両手仲介』って何のことかわかりますか?」だ。

 多少なりとも不動産取引について理解があれば知っている話なのだが、メルマガによれば「ある調査では・・・8~9割の人が「全く知らない」と回答していると言います」だそうだ。これは不動産の売り手となる個人が「圧倒的に不利な状況を甘受している」と言って差し支えないだろう。

 

 一応、この2つのキーワードを説明しておくと、「囲い込み」は不動産会社に持ち込まれた売り物件を、レインズ(不動産流通標準情報システム)に登録せずに自社で抱え込むことで、この結果物件が不動産売買市場に出回らないことになる。

 当然ながら売り手にとっては買い手が見つかる可能性が減る訳で、売り手の受けるデメリットは大きい。

 しかも一般の個人はレインズの存在自体知らないので、売買委託契約を結んだ不動産会社のWebサイトか営業担当からの連絡でしか、自分の物件の市場での反応など状況がわからない。これを「不利」と呼ばずして何というべきか。

 

 もう一方の「両手仲介」だが、これは物件の売買で不動産会社が売り手と買い手の両方から独占的に委託手数料を受け取ること。先に書いた「囲い込み」の結果、自社で売り買いともに担当するので、利益相反に該当する間違いない行為だ。

 

 ちなみに私自身、実家の処分で大手不動産会社に売却を委託したが、委託契約の際に「自分が宅建士の資格所有者であること」を伝え、「レインズへの登録が完了したらその画面コピーを渡すこと」を確約させたので、「囲い込み」はなかったが、買い手をその不動産会社が見つけてきたので結果として「両手仲介」にはなってしまった。

 

 メルマガで廣田さんは、「囲い込み」をなくすには、「両手仲介の禁止」「手数料の自由化」「レインズ情報の一般公開」の3点セットが欠かせない、と指摘している。

 このうち、「両手仲介の禁止」は望ましいが、不動産仲介業界の利益構造の根幹に関わる内容だけに抵抗は大きいだろう。手数料が2倍取れるから営業担当のインセンティブが働くという側面も無視できない。

 

 一方「手数料の自由化」だが、宅地建物取引業法では「売買又は交換の媒介に関する報酬の額」として物件の価格に応じて一定利率を定めているが、これは「あくまで上限」である。従ってすでに一部では仲介手数料無料をウリにする会社も登場しているぐらいで、事実上自由化は進んでいると見ていいだろう。もっとも「ではどうやって収益を確保するのか」という疑問と問題は残るが。

 

 最後の「レインズ情報の一般公開」だが、個人的にはこれが最大かつ最強の効果が見込めると思う。

 というのも不動産業界には、顧客にとって不利な悪い情報は「聞かれない限り教えない」、もしくは「知っていても知らないフリをする」という慣習が根強く残っているためだ。

 これがレインズ情報が公開されれば、少なくとも物件を売りに出した人は公開サイトで自分の物件を確認できることになるので、業者が「囲い込む」ことは不可能になる。レインズへの登録を強く要請しても一向に不掲載が減らないのが実態で、これでは登録を義務化しても脱法行為に走る会社は出てくるのは避けられない。

 実際人づてに聞いた話では、レインズへの登録画面を偽装・偽造して顧客に渡す事例もあるそうで、「登録の義務化」よりも「登録情報の公開」の方が効果は確実に大きい。

 

 ただこれらの対策が実施されるには、業界の抵抗などでまだ相当の時間がかかるだろう。これから不動産物件の売却を考えている人は、不動産会社と委託契約する際に「専属選任媒介」「専任媒介」「一般媒介」の3つある契約形態のうち、売り手の自由度が最も大きい「一般媒介」を選択し、「レインズへの登録画面のコピー」を受け取ることを確約させるべきだろう。

 

 この2つを拒否するような不動産会社は、見限った方が良いと断言してもいい。自社の営業スタイルにやましいところがなければ、この条件を堂々と引き受けても何ら問題はないはずで、これを断るという事は「顧客への真摯な態度は望み薄」な会社としか判断できないからだ。