ファンも設備もすべてが変わっていた
私の数少ない趣味のひとつに「競輪観戦」があるのだが、わざわざ「観戦」と言うだけに、専らギャンブルとしてではなく自転車レースとして楽しんでいる。
自宅が東京の郊外なので、観戦に行くのであれば「立川」か「京王閣」または「西武園」となるのだが、普段はネットのオンラインで見るため、ここ20年数年は実際に競輪場に足を運ぶことはなかった。
きょうはたまたま予定がなかったうえ、何となく最近の競輪場の雰囲気も確かめたかったので、20数年ぶりに「京王閣競輪場」に行ってみたのだが、記憶に残っていた昔の京王閣とは大きく変貌した姿に改めて時代の流れを感じた。今回はその感想を書き連ねてみた。
まず驚いたのは「女性客」の多さ。最寄りの駅は京王電鉄の京王多摩川駅なのだが、競輪場に直結した改札口はコロナ禍で閉鎖されており、反対側の改札口から線路沿いに戻る道を5分ほど歩くことに。その歩行者に女性が結構混じっていたので、最初は「何かコンサートかタレントの催し物もあるのか」と思っていたのだが、先を進む女性グループがそのまま競輪場に入っていったのを見て、腰を抜かすほど驚いた。
しかも入場料(50円)を払って場内に入ると、別の若い女性群やカップルなどがあちこちにいて2度びっくり。20数年前の記憶では、女性は皆無と言っていいほど見かけなかったのだが、テーブルに座ってレース展開の話を弾ませる女性を見て、「うーん、時代は変わったものだ」とつくづく思った。
今では信じられないかもしれないが、当時は「空いている」という理由で利用者の少ない女性トイレで、男性が何食わぬ顔をして用を足して出てきても誰も気にしないほど、社会通念とかマナーから隔絶された「異世界」が競輪場だったのだ。
次に驚かされたのは昔は「穴場」とも言われた車券売り場。当時はちょうど窓口で受け付けの女性に「2、3裏表」などのように口頭で直接伝える方式が、鉛筆で記入したマークシートを差し出す方式に変わりつつある時代だったが、今は「窓口」そのものが存在しないのである。
簡単に言えば、車券を買うのも、払い戻しも自動販売機で済ませるのである。まあ今はネットでも買える時代なので当たり前の話ではあるのだが、当時ズラッと窓口に女性陣が並んで車券の注文を受け付け、締め切りと同時に問答無用でビシャとカーテンを閉める風景が懐かしく感じられた。
そしてさらに驚いたのが、予想紙のオンライン版無料配布。全国どこの競輪場でもこうなのかは分からないが、京王閣で予想専門誌「赤競」の全レース予想(カラー版)がスマホやタブレットで無料でダウンロードできるのである(印刷は不可らしい)。
入場ゲートを通った際に「予想紙を販売する屋台が見当たらない」と違和感を感じてはいたのだが、その理由がようやくわかった。ただで見れるのであればだれもお金を払ってまで買わないのは当然だ。
もっともこの予想紙、同紙の専門サイト「赤競.NET」で購入すると1レース70円、全レースだと550円もするので、どういう仕組みで無料配布できるのか不明だが。
競輪場そのものの変化も大きかった。20数年前の話なので、多少は記憶間違いはあるかもしれないが、まず改善されたと感じたのは「ゴール前」での立ち見ができるようになったこと。以前は屋外の吹きさらしとはいえ、座席指定の有料席(確か数百円)だったのだが、有料席は屋内の立派な施設内に収まった一方で、ゴール前からは奥に引っ込んだので、空いたスペースが無料の立ち見席に入れ替わったのだ。これはゴールに飛び来む選手の迫力を目の前で観戦することを、最も楽しみにしている私としては非常にありがたいことである。
あとは、第4コーナーにあったコンクリートむき出しの4階か5階建ての巨大な無料観覧席が跡形もなく消えていた。もともと比較的のんびりした雰囲気のある京王閣には違和感の大きな建造物だったので、取り壊されたのは良かったとも思っている。
ということで、20数年ぶりに訪れた京王閣にはひたすら驚かされた訳だが、これが数カ月ごとに通っていたら、その変化には気が付かなかったかもしれない。
今回の久々の競輪場でのレース観戦で改めて感じたのは「やはり生のレースを見るのとネットで視聴するのとは臨場感が別次元」ということだ。当たり前の話ではあるのだが、レース開始時に聞こえてくる選手の気合の入った掛け声、発走機のガシャンという音、周回時の車輪の回転するシャーッというタイヤの摩擦音・・・どれもオンライン観戦では味わえないリアルの感覚だ。
最後にこの投稿を読まれた方へのお知らせとして一報。5月4日から9日までタイトル戦の日本選手権競輪(GI)が京王閣競輪場で開催されるとのこと。入場者数を5,000人に制限して開催するとのことだが、ネットと来場による応募はすでに締め切っているため、観覧希望の方はネット観戦で楽しんではいかがだろうか。